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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部 第二章 建設戦争
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ダンジョンに鉄道を敷くのは間違っているだろうか? 後始末編

ダンジョン編終了。

次回、新キャラ登場。

 大迷宮から命からがら帰投し王都へ帰ってきた昭弥は、早速帝国本土との連絡線の建設計画の具体化を始めた。

 現在、チェニスからアルプス山脈に向かって線路の建設を行っている。さらに大迷宮内へ本格的な調査団を送り込んでいる。

 線路の敷設ルートを決めないといけないし、脆い部分は補強する必要もある。

 大きなドームの中は高架を作らないとダメだろう。

 資材の手配や工員の手配も必要だし、冒険者達への周辺モンスターの退治や罠の解除、正確な地図を作る調査員の護衛、やる事は山ほどある。

 今日も王国銀行総裁のシャイロックと話し合っていた。


「冒険者達の金銀を徴税するそうだね」


「ええ、彼らの持っている金銀は危険だと判断しました」


 昭弥は別に彼らの持っている金銀に毒が含まれているとか呪いが掛かっているとか思っている訳では無い。彼らの持っている金貨の量が問題なのだ。

 単純計算で、王国や帝国で流れている貨幣の半分前後。それくらい膨大だと判断した。


「確かにそれは脅威だ」


 もし、それらが何の規制もなく、王国や帝国に流れてきたらどうなるか。

 簡単に言えば金銀の大洪水。全てが金銀に奪われる。

 物が全て買われたりして品切れになったり、金銀の量が多すぎてインフレになる可能性が高い。

 経済的な混乱は避けられない。だからこそ、昭弥は流れ込まないように徴税という方法で手を打った。


「その点に関しては感謝しているよ」


 昭弥が思いついたのはRPG内後半で得る額がとんでもない額でそれがもしゲーム世界内に無防備に流れたら、どんな影響が出るかという議論を訊いていたからだ。

 一通り、ゲームはやっていたし、鉄道に取って沿線の経済状況で売り上げが全く変わってしまうのだ。

 極端な想定だったが、興味があって読んだし覚えていた。


「だが、同時に王国は金貨を欲している」


「どうしてですか?」


「足りないからだ。商品が多すぎるからね」


「手形決済では?」


「それでも限度というものがある」


 簡単に言うと、全ての生産物に対して貨幣が足りないと言うことだ。

 金は経済の血流、潤滑剤であり、物のやりとりには必要だ。

 具体的に言うと、例えばそれまで小麦の生産が一万トンでその購入に使われる金貨が一万枚とする。すると小麦の価格は平均一トン当たり金貨一枚だ。

 だが、小麦の生産が拡大して二万トンに増えたとしたらどうだろう。一方金貨の量が変わらなかったら購入に使われるのは、それまで通り一万枚だ。

 すると、一トン当たりの平均価格は金貨0.5枚。半額になってしまった。

 非常に単純に書いているが、生産量に対して貨幣が増えないと、物の値段が下がってしまうことを理解して欲しい。

 消費者にとっては、嬉しいかもしれないが、収入も半額になってしまう。

 それに貨幣が不足しているため、貨幣が回ってくる機会も失われ、売買のチャンスが少なくなる。

 現在、王国は鉄道の発展により、各地から商品が運ばれる状況になっており、物が氾濫している状態である。そのため、貨幣不足に陥りつつあった。

 価格を維持するには貨幣を増やすしか無い。

 だが、通貨として使われる金属としての金の量には限りが有る。

 通貨の回転率をよくしたり、手形を増やしたりしているが、現状は金貨が帝国経済ひいては王国経済の中心であり、金貨が増えないと経済が発展しない。


「貨幣が不足している。だからこそ金貨が必要だ」


「解りました。彼らの金貨が流通するように仕組みを考えます。けど、考えはあるんでしょう?」


「まあね。ウチに預金して貰い保有するのが一番良い。だから、彼らに色々と商品を売りつける。金を持っているんだ簡単に買ってくれるよ」


「そこで私は、彼らと交易を行える商人を許可制にして制限する。そして持ち出せる金貨の量を制限し、手形などで持ち出すようにして、流通量を制御する」


「その通りだ。君のも許可の手数料が入って良いだろう」


「まあそうですが」


 阿漕な話をしているが、下手に金貨が流れ出すよりマシだ。

 下手にインフレになって貧困層が窮乏しても困る。


「迷宮の入り口を封鎖するのが困難だが」


「鉄道を抑えておけば大丈夫ですよ。物品を大量に運べるのは鉄道だけですから。利用出来るのは許可を受けた商人のみに限定すれば、簡単にコントロール出来ます。他の入り口の監視は、表向きに止めておきましょう」


「大丈夫か?」


「個人で運べる量なんて高が知れていますし、あの迷宮の中に入ったらモンスターだらけで、行くだけで命がけですよ」


「そのようだね」


 身軽に移動出来るならともかく、大量の荷物を持って守りながら入るなど自殺行為だ。

 迷宮への入り口へ行くのも一苦労だから、運べる量は少ない。

 その前に鉄道を通して、商品を売って、金貨を回収した方が良い。

 完璧に封鎖しないのは、こうした制限による不満のガス抜きとして必要だからだ。


「買ってくれるかどうかが問題だが」


「買ってくれますよ。課税すると言いましたから、現金を取られないように商品を購入するでしょう」


「ちゃっかりしているね」


「あなた程ではありませんよ」


 王国経済の魔王とも呼ばれるシャイロックに比べれば昭弥などまだまだ、子供だ。


「ところで、トンネルの開通による経済効果の試算と影響評価は出来ましたか?」


「何とかね」


 そういってシャイロックは、書類を出した。


「君が出した貨物の輸送量から算出したものだ。最大限に増えてこうなる」


「結構、大きいですね」


「今の十倍以上になるからな」


 現在、セント・ベルナルドを通じて帝国本土と交易を行っているが一日辺りの取扱量は精々、五万トン。

 結構な量だが、旅客もあるからこれ以下の数字だ。

 一方、新しいトンネルでは最大積載量三〇〇〇トンの列車が走れるとして、これを一時間当たり四本から五本として一日辺り九六~一二〇本、一日百本として、一日の取扱量は最大三〇万トン。

 とてつもない量だ。


「本当に達成出来るのか?」


「将来的には、可能です。現状でも新型の機関車を投入し高速線で運用しているので問題ありません。速度を上げて運用するには更に新しい機関車を投入する必要がありますが、現状でもその数字は不可能な数字ではありません」


 実際、アメリカの大陸横断鉄道でも、それくらいの積載量をもつ列車を蒸気機関車チャレンジャー、ビック・ボーイなどの特大機関車が曳いていた。


「となると、香辛料などを大量に生産しても大丈夫そうだな。それに塩や小麦なども輸出出来そうだ」


「どれくらいですか?」


「最低でもこのような数字だよ」


 その数字を見て昭弥は驚いた。王国の生産量の一割に当たる金額だ。


「本当ですか?」


「ハッキリ言って正確かどうか解らない。何しろ初めてのことだからね。そんな膨大な物流経路が誕生するのは、史上初だ。どんなことになるのか想像もつかん」


 シャイロックは肩を竦めて説明した。

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