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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部 第二章 建設戦争
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ダンジョンに鉄道を敷くのは間違っているだろうか? 8

「まだ見ていない場所も多いけど、とりあえずトンネル開通の目処は付いたので、今回の調査を終了したいと思います」


 アルプスを突き抜ける通路を発見し、内部の冒険者達と協力関係を結ぶことが出来た。

 更に入り口にいたドラゴンを退治して障害を取り除き、この大迷宮が何故作られたかを知り、強力な魔力収集装置を抑えた。

 特に魔力収集装置を抑えたことは大きい。

 危険物を内包しているようなモノだから。青函トンネルの真下に原子炉が有るような物か。

 ジャネット女史が下手に扱って暴走してお客様に被害が出ないように出来たのは素晴らしい。

 あとは、測量チームを入れて正確な地図を作り、各種専門家が構造解析して崩落しないか確かめるだけだ。

 内部にはまだモンスターや罠などが多いが、冒険者達に護衛や討伐を頼めば大丈夫だろう。

 いざとなれば軍隊を派遣して討伐することも考えている。

 部隊展開も大迷宮への建設路線を使えば展開出来る。

 とりあえず、今後の計画を立て準備を進めるため、一旦王都に戻ることにした。


「本当に厄介な奴だよ。お前は」


 迷宮の出口までレホス達が案内してくれる事になり、レホスが昭弥の隣に立った。


「そうかい? 弱いと思っているけど」


「あんな強力な爆弾作っておいて何を言っている。しかし、今まで何も言わなかったのにいきなり税金を取るなんて酷いぜ」


「鉄道を敷くんだよ。それにきちんとモンスター退治に雇うからさ。ドロップ品が出たら好きに売って良いよ。外の世界に運べるようになるから、今までよりも実入りが良くなるよ」


「そう願いたいな」


 レホスが、ぼやいていると前方からミスリルゴーレムが現れた。

 全金属製のゴーレムで非常に硬く強い強敵だ。


「下がっていて!」


 確認するなりユリアはグループから飛び出し、大剣を叩き付ける。

 だが、影からもう一体のゴーレムが出てきて、戦線が広がる。


「下がって!」


 昭弥達など調査員に近くの横穴に入るようにいった。

 足手まといになることを知っている昭弥は、レホスと一緒に近くの横穴に入った。

 ゴーレムが入り込めそうに無い狭い通路で避難には、好都合だったが、昭弥が入った瞬間、天井が崩落して来た道が塞がってしまった。


「昭弥!」




「やれやれ、ついてない」


 レホスが崩落した場所を見て呟いた。


「この辺りは比較的脆いからな。あんな戦闘があって崩れたか……」


「どうした?」


「誰かがワザと崩落させたようだな」


 土の崩壊具合と岩の破片を見てレホスが断言した。


「罠ってことか」


「その通り」


 通路の奥から数人の男達がやって来た。人間だけで無く、獣人や魔物もいた。

 それぞれ武器を持っており、こちらを囲んでいる。


「……なんでこんなに手の込んだ事を」


「そこにいる社長に用があるんだ」


「誘拐するきかい?」


「話しが早くて助かる」


「てことは、最近襲撃されたという原因はお前らか」


「見られて通報されたら、困るからな」


「けど、待ち伏せしようとしたら、調査団の前衛が強すぎて撃退されたり、罠を壊されてつけいる隙が無くて、出てくるところを待ち伏せる作戦に変更したな」


「……勘の鋭い奴は嫌いだ」


 そりゃ、入るときにあれだけ激しく梅雨払いを行われたら待ち伏せなんて出来ないだろう。罠ごと破壊されたら意味が無い。

 それでもゴーレムをけしかけて、襲撃し、横穴に入るよう誘導して分断した手腕を昭弥は評価していた。何も渡す気は無いが。


「生かして連れてこいと言われている。大人しく来れば手荒なことはしない」


「レホスは?」


「連れてこいと言われたのは社長だけだな」


 暗に殺すと言っている。


「さて、来て貰いましょうか」


「いやだね」


 そう言って、昭弥はバッグから筒を取り出し火を付けた。


「……って、そんな危険なモノを出すな!」


「死ぬ気か!」


 レホスと男が叫ぶ。

 どうやら、昭弥のダイナマイトの話しは伝わっているようだ。


「おい、消せ!」


「やだ」


 その言葉を聞いて男達は戦慄した。ブラフと思ったが、昭弥の狂気じみた目を見て悟った。こいつは本気だ。

 そして昭弥は筒を男達に向かって投げた。


「うわっ」


 男達は、逃れるように分散した。

 その隙を逃さずレホスが前に出て行く、怯えた敵を一人一人気絶させる。

 それを見て反撃しようとするが、昭弥がリボルバーの連続射撃で牽制し、動きを止めた。 そして全員がレホスの剣を受けて倒れた。


「ま、待て! 降伏する!」


 最後に残ったリーダー格の男が命乞いをした。

 その男に、導火線が短くなった筒をもった昭弥が近づいた。


「た、頼むから命だけは!」


 その動く口に昭弥は筒を入れて黙らせた。直後に、導火線の火が筒に到達。


「!」


 男はそのまま気絶した。


「偽物だったのか?」


 火が消えた筒を見てレホスが訊く。


「ドラゴン退治に全部使ったよ。出し惜しみ出来るような状況じゃ無かったからね。似たような筒を持ち歩いていただけだよ」


「って、俺も騙したのかよ」


「敵を欺くには、味方から、と言うからね」


「何度も出して脅しかけてきたよな」


「気にするな」


「するわ」


「そんなことより、どうやって合流しようか」


 昭弥の言葉にレホスは抗議をやめた。腹立たしいが、昭弥の言うとおり、どうやって合流するか考えないと拙い。


「向こう側から掘り進めてくれるかな」


 そう言って、昭弥が崩れた部分に耳を傾けたとき、聞き覚えのある声が聞こえて飛び退いた。


「逃げろ!」


 ドラゴンに遭遇したときより慌てた声で昭弥が叫び、通路の奥に向かって走る。


「へ、どうしてって!」


 唖然とするとレホスの首根っこを掴み昭弥は通路奥の曲がり角を曲がる。

 次の瞬間、崩落場所が吹き飛んだ。

 何トンもある土砂と岩の塊が昭弥達のいる方へ、高速で吹き飛んできた。

 横穴に入らなければ、直撃して確実に死んでいた。


「昭弥! 無事!」


 聞き覚えのある声が、土煙の向こうから聞こえてきた。


「……何とか生きています。ごほっ」


 土煙を吸って昭弥は少し咽せた。


「大丈夫!」


 咳き込む声を聞いてユリアが駆け寄ってきた。


「大丈夫です」


「よかった。けがはない? そこに転がっているのは?」


「ああ、襲撃されました。何とか撃退しました。怪我はありません」


「よかった。昭弥を危ない目に遭わせるなんて」


 憤慨するユリアを見て、昭弥とレホスは一番危険な目に遭わせたのは誰かを言うのを辞めた。


「とりあえず、無事ですからここを出ましょう」


「そうね。目的も達成したんだし、王都に帰りましょう」


 ユリアは喜々として前を歩いた。

 その後ろを付いて行こうとした昭弥にレホスが小声で耳打ちした。


「前言撤回。あんた本当に勇者だ。女王の横にいるだけで十分勇者だ」


「過大評価ありがとう」


「純粋な評価だ。それどころかこれでも過小評価に近いぞ」


 呆れたようにレホスはぼやいた。

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