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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部 第二章 建設戦争
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ダンジョンに鉄道を敷くのは間違っているだろうか? 7

「さて、上手い目くらましになったわね」


 爆発のどさくさで調査団から離れたジャネットは、先ほどの爆発で塞がった入り口を見て追跡不能を確認すると地下に向かった。

 彼女自身の目的を果たすためだ。

 幾つもの曲がり角を曲がり、枝分かれする通路を通り目的地に向かう。

 下に向かう通路を歩いて行き、迷宮の最下層へ。

 そして、降りきった先に目的の部屋に入った。


「よし、誰も入った様子は無いわ」


 床などを見て、足跡が無いのを確認して部屋の中央に向かう。


「ああ、また溜まっているわ」


 巨大な球形のガラスが浮かび、その中にへ色の光を放つモノ流し込まれ、ガラス球の中で勢いよく流れていた。


「暫くほうっておいたから。かなりの量ね」


 ジャネットがガラス球に触れようとしたとき、低い声が流れた。


「動くな」


 声を出したのはアルムだった。

 彼は銃口をジャネットに向けたまま、話しかける。


「一寸でも動いてみろ、胸の新しい口で呼吸をすることになるぞ」


「……付けてきたのかい。女王の監視は良いのか?」


「確かに村長に依頼されたが、ダミーとして使わせて貰った。本当の任務はお前の監視だ」


「どういうこと?」


「お前が、また良からぬ事を行って被害を出す前にな」


「私がやっているのは、魔術の発展のためよ。今後の世界の発展の為に研究しているの」


「それでどれだけの被害を出していると思っているんだ!」


 アルムが激昂した瞬間、銃声が轟いた。

 だが、それはアルムの意志に反して銃が上に跳ね上がり、銃が暴発したためだ。


「な、なんだ」


 見ると、床からどす黒い液体のようなモノが伸びてきて銃口を上に跳ね上げていた。それだけに留まらず、液体はアルムに絡みつく。


「な、なんじゃ」


「魔術師と対峙したときは間伐入れずに殺した方が良いのよ。何をするか解らないからね」


 そう言って、ジャネットは話しを続けた。


「これは」


「魔道生物よ。自由に身体を変化させて拘束したり、絞め殺したり出来るの」


「ぐっ」


 振り払おうとしてアルムは動くがびくともしない。


「無駄よ、人間程度ではふりほどけないわ。下手に抵抗すると余計に締まって、命を落とすわよ」


 ジャネットが高笑いをしようとしたとき、突如魔道生物の身体が両断され、アルムが解放された。


「どうして」


「人間程度の力ではないので、切れるのですよ」


 そう言ったのは、ユリアだった。


「どうして、女王陛下が」


「アルムさんを尾行させて貰いました」


 そう言ったのはセバスチャンだった。


「嘘を言っているとは思いませんでしたが、真実全てを話しているとは思わなかったので、念の為に付けさせて貰いました。ジャネットさんに対して警戒していたようでしたし」


「変な監視が付いて怪しまれたか」


「いえ、最初から怪しいと思いましたよ。魔術研究しか興味の無いあなたが、どうして迷宮探検に参加したのか疑問だったんですよ」


「さすがと言ったところね。で、どうして私がここに来ているかわかる?」


「そこまでは……」


「教えて上げましょう。この辺りはね、地理的に見ても特殊な場所なの」


「三つの大陸がぶつかって出来た場所なんでしょう」


「何故それを」


「いや調査でそうじゃないかと」


 大陸がぶつかって山脈が出来ることは珍しくない。

 ヨーロッパとアフリカがぶつかって出来たアルプス山脈がそうだし、ヒマラヤ山脈もユーラシア大陸へ、インド亜大陸がぶつかって出来たものだ。

 日本だと伊豆半島や丹沢が有名だ。

 何故昭弥が知っているかというと鉄道を作るとき地形や地理に制約されるので、地学の知識が必須だからだ。そのため、地理や地学の知識を学校教育以上に調べており知識があったのだ。

 昭弥が三つの大陸がぶつかっていると思ったのはアルプス周辺の調査報告や地図を見て、可能性の一つとして思い浮かべていたからだ。

 そのような地点は非常に珍しく興味を持っていた。


「まあ、流石、鉄道会社の社長と言ったところね。でもどうしてここが私にとって重要か解る?」


「いいえ」


「簡単に言えば、ここは魔術の根本となる魔力、マナが自然と集まりやすい場所なの。大陸が動いている事は知っているわね」


「まさか……」


 調査団の全員が信じられない思いだった。だが、昭弥だけは大陸移動説を知っているので動揺は無かった。


「まあ、信じられないでしょうけど、その動かす力にもマナが宿っている。というより生み出されているの。そしてここはその動く大陸が三つも集まっている特異点。そこにマナを回収する装置を設置しておけば簡単に膨大な量のマナが集まるの」


「まさか、この迷宮すべてがその装置のために作り出したというの」


「まさか、幾ら偉大な私だってここまで作ることは出来ないわ。かつての魔法文明がマナ収集用に作り出した施設で、最下層に装置を設置して、アルプスの重量を分散するため上の迷宮を作ったの。その規模は大きく、ここが魔法文明の中心になったくらいよ」


「それを活用したの」


「いいえ、文明の装置は暴走して高濃度のマナが漏れ出し、迷宮の内部の人間を即死させてしまったわ。しかも、マナの供給源がなくなって文明は崩壊した。やがてこの迷宮のことを知る人間も居なくなったけど、私は古文書からこの施設を知り、見つけ出して自分で装置を作って据え付けた訳。小さいモノだけど、かなりのマナを溜め込むことが出来るのよ」


 とんでもない装置を作り出したものだな、と昭弥は呆れた。


「それでどうするというの?」


「とりあえずそういう危険なモノは管理させて貰います」


 何かおかしな事に使われてて事故を起こされたらたまらないからだ。


「あいにくとこれは私の物よ。誰にも奪わせない。強引に奪うというのなら」


 ジャネットの背後で、例の黒い触手が何本も突き出た。


「実力で阻止させて貰うわ」


「なら、何度でも切り刻むのみ」


 そう言って前に出たのはユリアだった。

 攻撃してくる触手を何本も切り落としてゆく。周りも魔法などで支援し次々と斬り落として行くが、無限に増殖してくるかの如く次々と触手が生えて迫ってくる。


「ははははは、この装置のお陰で無尽蔵と言えるのよ。敵うと思っているの」


「じゃあ、これはどうかな」


 そう言って昭弥は、火を付けた筒を手にした。

 ジャネットは、昭弥の動きを軽快して自らの近くに触手を集めた。

 そして昭弥は投げた。ジャネットの方向では無い、魔法装置の方だった。


「!」


 慌てて、触手を何本も伸ばし、魔法装置に飛んで行く前に包み込んで阻止した。


「あ、危ないことするんじゃ無いよ」


 やはり装置が大事なのか防御が凄い。爆発する前に筒を握りつぶしている。

 安全を確認してホッとしたのか、ジャネットは再び傲慢に言う。


「さて、この膨大なマナを持つ私に勝てるとでも、ぐえ」


 カエルが挽きつぶされた様な声を出してジャネットは倒れた。

 ユリアの峰打ちを受けて、床に倒れ込んだ。


「魔術師には先手必勝がセオリーなのでしょう。なので先に動かせて貰いました」


 瞬間移動でも使ったのか、あっという間に距離を詰めて攻撃したらしい。

 昭弥によって意識が筒の方に集中したため、ユリアへの対応が疎かになったのも原因だ。


「さて、ジャネット女史には色々と聞きたいことがあるので、拘束させて貰います。魔封じのマジックアイテムを着けて魔法を使えないようにします」


 ジャネット女史が拘束されてとりあえずは一件落着となった。

 何をしでかすか解らないから。


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