ダンジョンに鉄道を敷くのは間違っているだろうか? 5
冒険者の有力パーティーをインスタント食品の力で撃破して、ドラゴン退治の約束と鉄道敷設を認めさせた昭弥達は早速、ドラゴン退治に向かった。
新たな食文化のために彼らは団結して向かって行く。
「しかし、結構人が多いな」
ざっと見ただけで、十数組、一〇〇人近い人数だ。
「この辺りはパーティーが多いからね」
「皆どうしてここに来るんだろう」
「お宝を目指してやって来る連中が多いな。ただ、戦争で負けたり、逃れてきた連中もいるよ」
「脱走兵か」
マイヤーさんの目つきが変わった。敵前逃亡は重罪だ。捕まえて処分する必要が出てくる。
「いや、今はやめましょうよ。彼らの案内が無いと行けないんですから」
「しかし」
「今後の王国の発展はこのトンネルの開通に掛かっているんですから何とかこらえて下さい」
「鉄道だけが王国ではないぞ」
「解っています。けど、鉄道も無いと意味がありません。まあ、何の罰則も無いのは困るでしょうから、ここの掃討を命じては?」
「……まあ良いだろう」
「ありがとうございます」
険悪になりかけた空気が晴れて昭弥は安堵した。
「ありがとな。王国が来るって聞いてそれで戦々恐々としていたんだ。特に脱走兵出身の連中なんかな」
「そりゃ良かった。レホスもその口?」
「いや、俺は冒険がしたくてあちこちフラリフラリと歩いていたらここを見つけて住み着いた口。まあ、戦場に出たこともあるけど、小規模な戦いが多かったし。あ、脱走はしていないぞ」
「解っているよ。それでも王国に戦々恐々か?」
「まあな。脱走兵とはいえパーティーに必要な人は居るし、この町の中にも鍛冶屋とか重要なポジションの連中には脱走兵が多いからな。彼らが居なくなるとあの町を維持出来なくなる。その心配があったからな」
「なるほど」
過去はどうあれ、重要な人物というのは何処にでもいるものだ。
「それより、お前のパーティーも凄いよな」
「そうかい?」
「女王が一緒に付いてくるなんて普通あり得ない。一見、貧弱でヒョロヒョロなのに何人もの女を連れて歩いている。弱そうなのに」
「何故か慕ってくれるからだよ。弱いっていうのは本当だけど」
「そんな事ありません!」
その時後ろにいたユリアが叫んだ。
「昭弥は最強です。鉄道に関しては無敵です」
「そうですか?」
「そうです。鉄道が絡んだら魔王さえ逃げ出します」
この言葉には昭弥を知る全員が頷いた。ここ最近の帝国鉄道に対する対応のやり方について知っているだけに、力強く頷いていた。
「ここまで心酔させるとは凄いな。まあ、連発出来る銃を作っただけでも十分凄いよ。いっそ代わって欲しいな。俺もマイラバーは多いけどそっちのメンツも良いな立場交換しないか?」
「レ~ホ~ス~」
恨みがましい声でピニョンがレホスの背後に付いた。
「あなたまた色目使っているの!」
「いや、ちが、うわ」
他のレホスのパーティーメンバーも加わり、レホスが袋だたきに遭う。
「ラバーじゃなくて修羅場ーっ、だったみたいだな」
思わず昭弥は口に出して、つまらないダジャレを言ってしまった、と後悔した。
ちなみにレホスは、全員から寝技を食らって、ボロ雑巾となり暫く動かず、フローラの治癒魔法を受けてようやく治った。
その瞬間フローラを口説いて再び、袋だたきに遭い、しばし縄で結ばれて引きずられてから、ようやくパーティーメンバーのクレリックが治癒魔法を掛けて治した
「よし、掃討戦を行うぞ」
怪我を治癒魔法で直してからレホスは他のパーティーに指示を出した。
警戒と戦闘と休息のローテーションを決め、効率よく奥に進んで行く。
「結構進むな」
「これだけのパーティーが集まればな。人数多い方が役割分担が出来て効率的だしな」
「なるほどね」
鉄道もモンスター退治も同じか。同じ目的に向かって役割分担をして、それぞれが自分の役目を果たせば成功する。
「私たちも手伝いましょうか」
ユリアが申し出てきた。
「いや、ドラゴンには最高の戦力を叩きこみたい」
「ドラゴンを警戒するのは良いけど、各個撃破されないか」
「大丈夫だドラゴンは、ここまで来られない」
「? どういう事だ?」
「見れば解る」
そう言って、迷宮内を歩いて行く。
毎日、この大迷宮で活動している彼らにとっては庭みたいなもので、すいすいと進んで行く。
危険な罠のある道や、モンスターの住処を避けて行くため疲労も少なく歩くスピードも速い。
途中測量をしながらだが、それでも簡単に進んで行く。
やがて、通路が細くなる場所に着いた。
「ここは狭いな」
通路の前に巨大な岩が立ちふさがっており、両脇から抜けていかなければならない。
「こいつのお陰で、ドラゴンが入って来れないんだ」
岩の前に来たとき、荷物を降ろして戦闘準備を整える。
まずは、偵察を行いドラゴンを確認する。
レホスを先頭に、昭弥達が後に続く。
「そっと覗いてみろ。相手は直ぐ目の前に居る」
ゆっくりと覗くと、巨大なドラゴン、頭だけで昭弥の身長の倍以上ある巨大なドラゴンがいた。
「エンシェントドラゴンですね。あまり相手にしたくない相手です」
一緒に来ていたユリアが言った。
「そんなに強いんですか?」
「古代龍と言ってドラゴンの中では最強です。空を飛ばれると私でも相手に出来ません」
「大丈夫、ここは洞窟であいつが上に飛べる空間は僅かです」
レホスが作戦を伝える。
「二正面作戦を行います。貴方方と俺たちで挟撃。一方に攻撃が向かったときは守りを固め、もう一方が攻撃する。それでどうでしょう」
「解りました。では、こちらはここから攻撃を仕掛けると言うことで」
「お願いします。俺たちは反対側から攻撃を仕掛けます」
そう言って、レホスは引き返していった。
「大丈夫ですか?」
「彼らの腕は一流です」
「それは知っていますが、本当に大丈夫ですか?」
「私が心配ですか?」
いたずらするような口調でユリアは昭弥に尋ねた。
「そうですよ」
「そうですか」
嬉しそうな声で返事をするユリアに昭弥は不安を覚えた。ここは、持ってきた試作品の出番だろうか。
使うか、使わずに済ませるべきか考えているとき、反対側でレホスが攻撃を開始した。




