ダンジョンに鉄道を敷くのは間違っているだろうか? 2
昼食の片付けを終えて、午後の調査を開始しようとしたとき、調査団は襲撃を受けた。
「伏せて!」
ジャネットの言葉に昭弥は一瞬きょとんとしたが、直ぐにセバスチャンに引かれて手近な横穴に入った。
他のメンバーも横穴に入る。全員が入った瞬間、それまでいた中央の広場に爆発が起こった。
「なんだ!」
「ファイアーボールです」
セバスチャンは昭弥を庇いながら答えた。そして横穴の通路の奥を警戒しながら右手で腰のナイフを取り出した。
「どうしたんだ」
「伏せてて」
そう言うなり、左手でブーツに仕込んでいたダガーナイフを投げた。
通路の奥でうめき声が聞こえたと思うと、セバスチャンは闇の中に飛び出してゆく。
「がはっ」
「誰だ!」
突然の反撃に対応出来ず、セバスチャンに組み伏せられた男は何も言わなかった。だが、のど元にナイフの刃が触れると、話し始めた。
「ま、待って、見たところ人間ね。助けに来たのよ」
「なに?」
予想外の言葉を聞いてセバスチャンは動揺した瞬間、奥にいた仲間が剣を横に薙ぐように振ってきた。
セバスチャンは素早く後ろにジャンプして避けると、昭弥を連れて広い空間に戻った。
「誰かと合流して下さい」
そう言って通路に向かってダガーナイフを投擲する。足下にナイフが突き刺さって襲撃者は一瞬怯み、出てくるのが遅れた。
その間に昭弥は周りを見る何人か広場に戻ってきているが、全員戦闘中。測量のメンバーも銃を持って抵抗している。いくつかの横穴の方では剣戟が伝わってくる。
「ど、どうしたら」
慌てた昭弥だったが、逃げ道の確認をしよう。万が一はぐれたりしたら入った入り口に向かうように決めていた。
入って来た通路を見て、昭弥は絶句した。
「はああああっ」
大剣を振り上げユリアは剣を叩きつけた。
だが、相手は身を翻すと右手に持った剣を大剣に当て、その反動で自らの位置をずらして躱した。更に左手に持った剣を振り下ろしユリアに叩き付けようとする。
「くっ」
咄嗟にユリアは大剣を引き戻し盾にして剣を弾いた後、肩に担いで突き出そうとした。
だが、その瞬間ユリアの死角からレイピアを持った剣士が滑り込み突き刺そうとする。
今度は身体をずらして鎧の硬い部分でレイピアを弾いたが、その間に先ほどの二刀流の剣士もレイピアの剣士も離れてしまった。
今度はユリア自身が攻めようとしたが、その瞬間レイピアの剣士が攻撃をしてきて牽制、カウンターを決めようとしてもフェイントを喰らって空振り、そこへ二刀流の剣士が攻撃を加えてくる。
離れて魔法攻撃を行おうにもレイピアの剣士が接近戦を挑み邪魔する。
「すごっ」
昭弥は思わず声に出した。
あのユリアを相手に互角以上に戦っている。
二人が掛かりだが、連携してユリアが攻撃出来ないように、交代交代に攻め絶妙のタイミングで剣を振るっている。
それは一種の芸術と言って良かった。
昭弥はしばしその光景に見とれた。
「いや、違う」
味方はユリアで、二人の剣士は襲いかかっているのだ。魔王を一撃で消滅させたユリアを相手に互角以上に戦っている彼らは凄いが敵だ。
普通なら卑怯でも二人であのユリアに善戦してる事を賞賛すべきだろうが、敵でありユリアを助けなければ。
昭弥は、腰にぶら下げたリボルバーを引き抜いて構えた。
パンッ
一発をユリアから離れた剣士に向かって発砲した。
ユリアへの攻撃の機会を伺っていた剣士だったがこちらも見ており、昭弥が発砲する瞬間に、身を引いて弾を避けた。
そしてもう一方、ユリアに攻撃を仕掛けていたレイピアの剣士が方向を変えて昭弥に向かってくる。
「昭弥!」
魔法で攻撃しようにもレイピアの剣士はユリアと昭弥を結んだ直線上を走っており、魔法を放てば昭弥も巻き込まれる。
だが、それも昭弥の思うつぼだった。
向かってくるレイピアの剣士の足下に向かって昭弥は一発放った。
「!」
足下に銃弾が当たるのを見てレイピアの剣士は急停止する。
単発しか撃てない銃しか存在しなかった世界に、拳銃とは言え連発可能なリボルバーは予想外だったのだろう。連発されるのを見て、得体の知れない銃を相手にするのは危険と判断しレイピアの剣士は距離を取ろうとした。
だが、そこに昭弥は銃口を向けた。
「剣を捨てるんだ」
昭弥が言うとレイピアの剣士は大人しくレイピアを放り捨てた。
ユリアを攻撃していた二刀流の剣士も昭弥の銃を見て動きを止めたところをユリアに大剣を突きつけられ、剣を捨てて降伏した。
他のメンバーもそれぞれ襲撃者を抑えるか、捕まえて戻ってきた。アルムさんもエルフ娘らしき笹のような耳を持つ女性を連れてきており、腕のあるところを見せてくれる。
「他に武器を持っていないか調べさせて貰うよ」
そう言って銃口を突きつけながら接近し他に武器を持ってないか確認しようとした。
「うん?」
昭弥が懐を改めようとしたら予想外の感触が伝わった。
硬くない、寧ろ柔らかい、温かくて何度も揉みたくなるような感触。
たいそうな胸だ。間違いなく女性の胸だった。
「じょ、女性」
思わず昭弥が叫ぶと剣士いや女剣士は顔を真っ赤にして昭弥の頬に右ストレートを決めた。




