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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部 第二章 建設戦争
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ダンジョンに鉄道を敷くのは間違っているだろうか? 1

 夜が明けると昭弥達は、大迷宮の入り口に入り、調査を開始した。

 入り口は結構埃が多い。野犬などが出入りしているような足跡が多い。

 入り口付近の捜索を終えたティナ達の合図で昭弥達は中に入った。


「結構広いですね」


 技師の一人が呟いた。

 入り口は広く端から端までかなりの幅がある。天井もドームみたいに高く、壁や床は石造りで構造は頑強そうだ。


「ここだけで高速線の複線どころか複々線も敷けます」


「勾配も殆どなさそうだから、高速運転が出来そうだね」


 昭弥も感想を言う。

 急勾配だと上りも下りも厳しい。上りは、遅くなってしまうし、下りは早すぎるためブレーキが効かず速度超過、脱線の危険もある。


「ここまでの間も意外となだらかだったな。凸凹しているところを土盛りしたり架橋したり、掘り抜いたりすれば、簡単に行けるな」


 と、昭弥は技師達と熱く議論を交わした。というより無理矢理熱中した。

 彼ら以外の空間に目を逸らしたらとても正気ではいられないからだ。


「そっちにゴブリンが一体行ったわ」


「かたづけたわ。ちゃんと始末しなさい」


「無駄口叩いてないで構え直しなさい! 次が来たわよ!」


 剣や魔法が派手に入り乱れ魔物とかを討伐するファンタジーバトル全開の空間となっているからだ。

 鉄道建設にやって来たはずなのだが、どうしてこんな空間になるんだろうか。

 剣も魔法も奇跡もあるファンタジー世界だからだろうか。

 いや、大迷宮、ダンジョンに鉄道を敷こうという時点で十分ファンタジーか。

 昭弥は、そう思った。


「……社長、大丈夫なんでしょうか」


 耐えきれず、技師の一人が話しかけてきた。


「彼女たちは僕たちが調査が出来る様に頑張ってくれているんだ。こちらに出来ることはきちんとした調査を行う事だ。頑張って調査しよう」


「はい」


 元気よく技師が答えた。

 彼らも、目を逸らしたかったのだろう。


「測量しておこう。アリダートを展開して、測量開始。水平器で水平の確認も忘れずに。三角測量も行って、勾配を確認する」


「はい」


「おい、そこの棒曲がって居るぞ。垂直にするんだ」


 その脇でユリア達が戦っていた。


「今度はコボルドの群よ」


「一気に片づけるぞ」


「こら! 避けるな!」


 剣戟の音が響いて中々激しく戦っているようだ。だが、阻止は成功しているらしく、昭弥と技師達は測量と調査を続けた。


「やはり勾配は殆どありませんね」


「広さも十分です」


「方向もあってそうだね。問題はこの下の地質だね。大重量の列車を支えられるか。排水用のトンネルに使える洞窟があるかどうかだね」


「ここがダメでも他の洞窟があるようですし大丈夫でしょう」


 一箇所を掃討すると調査して次の場所に移動して調べることの繰り返しだった。


「今度はゴーレムです!」


「くっそ硬いぞこいつ」


「岩ぶん投げて潰してやる」


 強敵が現れたようだが、女王の攻撃で倒せそうだ。


「横の洞窟は避難路や点検口に使えそうですね」


「そうだね。結構奥にもこういう洞窟が多いそうだから、保線用の基地を洞窟の中に作ることが出来るだろうし」


 地図を作りながら、技師達は建設計画の概要を進めてゆく。


「きゃーっ! 今度はスライムよ!」


「ぶよぶよして斬りにくい」


「ちょ、そこ、入ってこないで」


 多少苦戦するようだが、参戦しても仕方ないので昭弥達は作業を続行した。


「あ、ランプの火が消えた」


「オイルを足そうにもこう暗いと」


 その時、戦場から激しい炎が上がった。


「マイヤーさん火を吹けたんですか」


「私は龍人族だ。これぐらい簡単だ」


 纏まってやって来たスライムを焼いたようだ。可燃性の物質で出来ているのか激しく燃えている。

 お陰でランプに油を足すことが出来た。

 主通路ばかりでは無く周辺で枝分かれしている場所も調べる。


「ここに部屋がありました!」


「宝箱があった。開けてみよう」


「ぎゃーっ」


「ミミックだった!」


「倒せ!」


「金貨や宝石だと思ったらコイン虫、ジュエルインセクトだ!」


「いやーっ! 燃やして!」


 内部にモンスターが居るようだが、掃討は簡単に済んでいるようだ。昭弥達は後から入って調べる。


「あちらこちらに部屋みたいな場所がありますね」


「資材置き場や避難所に使えそうだ」


 再び主通路に戻って調査を続ける。


「表面だけでは無く基盤となる本来の地層の硬さも見ておきたいですね」


 その時戦場から激しい爆発音が響いた。


「何で壁ごと壊すんですか!」


「罠は発動する前に破壊しておいた方が良いのよ」


「だからって壊して洞窟が崩落したらどうするんです」


 なんかケンカしているが、一寸離れたここから見る限り、崩落の危険性はないようだ。

 しかし、分厚い岩を破壊するなんて。昭弥はセバスチャンから聞いていたが、村長がアルムを監視役にしたのは正しかった。止められるかどうかは別にして未来を予知出来たのは素晴らしい。

 村に被害が出ていないだけ、良しとして欲しい。まあ、景色が代わる可能性があるけど。

 兎に角、このチャンスを生かさないと。


「丁度良い。あそこから地層を見る事が出来そうだ。早速見に行こう」


 昭弥は簡単に言って向かった。そして計測器を突き立てて力を入れて調べた。


「土圧はやっぱり高いね。脆くはなさそうだ」


 更に土のサンプルを回収しておく。


「広い空間に出ました!」


「モンスターだらけです!」


「総員迎撃せよ!」


 剣やら魔法やら羽やら触手やら尻尾やらが舞飛び、襲いかかってるモンスターを倒して行く。


「目測で高さが一〇メートルくらいあるね」


「中に機関庫どころか生産工場も建てられそうです」


「トンネルだけに使うのは、勿体ないな」


「水も流れていますね」


「洞窟各所から染み出た湧き水だろうけど、これだけあれば飲み水や生活用水、工業用水としても使えそうだ」


 昭弥はそれらを内蔵した洞窟を想像してみた。

 なんか戦隊ものの秘密基地じみてきた。作って良いのか不安になる。


「そろそろ休憩にしようか」


「はい!」


 モンスターが全滅したところを見計らって昭弥が言うと全員が答えた。


「さて、昼食だけど新製品を試して見たいと思う」


 そう言って昭弥が取り出したのは、小麦色の糸が絡みついた様な物体だった。


「何ですかこれ?」


「インスタントラーメン。試作品だけど」


 そう言うと大鍋に水を入れて火を掛けて沸騰させる。

 沸いてきたら小さな食器にインスタントラーメンを入れておき、その上からお湯をかける。そして各々二をして待つ。

 その間に、付け合わせとしてチャーシュー代わりにワインで煮た肉や今朝採取したクレソン、ハーブなどを用意しておく。


「いいよ、蓋あけて」


 出来たとき、鶏ガラスープの良い匂いがただよう。

 そこへ用意しておいた煮た肉とクレソン、ハーブを入れる。


「さあ食べて。フォークで良いよ」


 と言って昭弥は自作の箸で食べ始める。

 皆は始め恐る恐る食べていたが温かいスープと鶏ガラの香りに釣られてフォークを入れて食べ始めた。


「美味い!」


 その後は全員が必死になってて食べ始めた。


「こんなもの隠していたんだな。どうやって作ったの」


 ジャネットが尋ねてきた。


「カップ麵の作り方を覚えていただけですよ。予め麵とスープを作ってよく煮込みんだあと、型に入れて一日陰干しした後、油で揚げて完成です」


 ちなみにカップ麵もほぼ同じ方法で出来ている。

 鉄道写真を撮るときの待ち時間の間、食べようとオリジナルインスタントラーメンを作ろうとして、研究したことがあった。使えるものは出来たが、味は既製品に劣ったので作り続ける事は無かったが、役に立った。


「数日は保存が利くはずです。乾燥しているところならもっと大丈夫です」


 最大の弱点は湿気に弱いところだ。現代日本ならフィルムなどの包装類が発達して湿気をほぼ完全にシャットダウン出来るが、近代ヨーロッパ程度の技術力では、弱い乾燥剤を入れて湿気を取って湿気りにくくするぐらいしか出来ない。


「この冒険のために作ったの?」


「いや、乗客のために販売しようと思って。お湯と容器さえ有れば作れますから」


 本来ならカップと一緒に売りたいところだが、安価で安全に器を作る方法が見つからず、容器は自前で用意して貰う事にしている。紙に防水剤を塗って作るつもりだが、安全な防水剤が見つからないため、保留状態だ。


「最後にビスケットをどうぞ、浸けて食べると美味しいはずです」


 締めのご飯みたいなものだ。ご飯が良いのだが、ここでは手に入らなかった。

 配ろうとすると全員がもぎ取るように奪い初めてのインスタントラーメン試食会は大盛況の内におわった。


「何とか商品化出来そうだな」


 昭弥が喜んでいるときに、予想外の珍客がやって来た。

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[一言] ダンジョンに鉄道通そうとする奴なんて初めて見た
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