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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部 第二章 建設戦争
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大迷宮調査団

 チェニス西方のアルプス山脈の麓にある大迷宮。

 古代魔法文明により作られた全長数百キロにも上るという、巨大迷宮である。

 かねてから噂や伝承などで伝えられていたが、王国によって確認されたのは百年ほど前である。

 アクスムとの交戦中に軍の偵察で発見された大迷宮は、無数の通路からなっており、罠や魔法生物、迷い込んできた野盗、妖魔、獣人、魔物などがおり、それらを相手にする冒険者などが入っており最深部まで行けた者は居ないとされている。

 王国も何度か内部の掌握をしようと軍を出していたが、内部構造の複雑さと深すぎることもあり、入り口近くを一時的に抑えるだけで精一杯で監視を除いて放置状態だった。

 ただ、調査の過程で最深部にアルプスを抜ける通路があるらしいという、未確認情報があり、使えないかどうか昭弥に興味を抱かせた。

 可能な限り、平坦な線路にする必要がある鉄道では高い山の峠まで行かず、低い勾配で線路を真っ直ぐ作れるトンネルは、非常に優れているが工事は厄介だ。

 トンネル工事で厄介なのは、トンネル自体を掘る掘削工事だ。地下は掘らなければ何があるか解らない。

 固い岩盤か柔らかく崩れやすい地層か解らない。何より恐ろしいのは出水である。

 いきなり水脈にぶつかって水が噴き出し坑道全体を水浸しにして、作業員を皆殺しにする事も珍しくない。長大なトンネル、高い山を貫くトンネルだとより困難は増す。

 だが、その一部が既に掘られていたら、途中あるいは全て利用出来るとしたら、工事費用、期間は短縮され犠牲者の数を少なく出来る。

 大迷宮は山をくりぬいて作られた洞窟。しかも反対側に貫いている可能性が有る。

 これを利用しない手は無い。

 そのため調査を進めていたが、有望そうであることが次々と報告され、昭弥は本命視していた。

 何より、インディゴ海とレパント海の最短距離であり、収益性に関しては抜群だからだ。

 ただ、建設費用がどれくらい掛かるかによって全く違う。

 採算性があるか無いかその調査のために昭弥自身が直接乗り込んだ。


「本当に来ちゃったんですね」


 チェニスから西へ行ったアルプス山脈の麓の駅でセバスチャンが呆れるように言った。


「重要だからね」


 気負いたっぷりに昭弥は言った。


「メンバーも精鋭を集めた」


 幾度もの実地調査を行い、正確な報告、地図作成の成果を上げてきた鉄道会社きっての精鋭だ。


 王国鉄道建設の頃からずっと現地に赴き、地図作成、地質調査、工事工程の初期計画を立てて昭弥達を支えてくれた。

 中にはトンネル工事に携わった者もいる。

 彼らの知識が役に立つだろう。


「彼らが居れば問題無い」


「調査に関しては、ただ護衛の人選が……」


 セバスチャンは冷や汗を掻きながら、尋ねた。


「ああ、解っているよ」


 昭弥も顔を引きつらせながら護衛を見た。


「では行きましょう社長」


 十人の獣人秘書達を代表して虎人のティナが答えた。


「皆準備は出来ていますよ」


 リーダー格のフィーネも妖艶に笑って答える。


「いいんですか?」


 セバスチャンが尋ねる。


「置いていこうとしたら全員付いてきたんだよ。調査に行ってくると言うなり、皆荷物を詰め始めたし」


 断ろうとしたら、凄い勢いで睨まれたし。


「まあ、皆強いから大丈夫だと思うけど」


「会社に残さなくて良いんですか?」


「サラさんが代わりにやってくれるから大丈夫だよ」


「睨み付けていましたけどね」


 またウチに書類を押しつけるのか! と怒っていたが、昭弥が交代しますか? と尋ねると渋々書類の処理にあたった。


「さすがにこんな重要な仕事をする気が無いみたいですね」


「危険きわまりない、仕事だから止めたように思えますが」


「そんなに危険なのかい?」


「まあ大迷宮、ダンジョンですから」


 徘徊する妖魔や魔物、ゴーレム。何時発動するか解らない罠。敵か味方か解らない冒険者グループ

 そんな危険きわまりない場所に行く人間は普通居ない。


「でも行くんでしょう」


「うん。鉄道を敷く訳だしね」


「では行きましょう」


 といつの間にか横に来ていたユリアが言った。


「いや、皆の準備が、と言うより女王陛下が来ていていいんですか?」


「王国にとって今後の命運を決める大事な事業なのでしょう」


「まあそうですけど」


 この連絡線が開通すれば、本土との連絡が容易となり、かなり貿易量が増えるはずだ。今後の王国の運命を未来を決定すると言っても過言ではない。


「ならば女王自ら出ていかなくては」


「うーむ」


 強く止めるのも気が引けて昭弥は何も言えなかった。


「それとも私では頼りになりませんか?」


「いえ、本当に心強いです」


 何が起こるか解らないダンジョンでこれほど頼れる人はいない。魔王を一撃で倒せたるのだから。


「なら一緒に行きます」


「ええ、となると皆さんも一緒ですか」


「勿論です」


 後ろにいた、数人が答えた。


「陛下のお付きなのだから当然ついて行きます」


 昭弥の姉か妹に当たるエリザベスが答えた。


「陛下の親衛隊長なのだからな。ついて行くのは当然だ」


 睨み付けるようにマイヤー隊長が答えた。


「陛下の宮廷魔術師なのだから当然でしょう」


 当然と言った様子で宮廷魔術師のジャネットが答えた。


「……まあ頼りになりますが」


 戦力的には申し分ないのだが、信頼という点でいささか、いや著しく劣るように昭弥は思えた。


「まあ、何とかなるか」


「あの……私も行って良いのでしょうか?」


 鉄道病院から派遣されたフローラ・ナティリィが尋ねた。

 医療担当として昭弥が呼び寄せたのだ。


「勿論です。というかこのメンバーだと確実にあなたは重要です」


 妖魔の攻撃や罠に引っかかる、洞窟が崩壊するなどの不慮の事故の他に、味方の攻撃に巻き込まれて怪我をする事が確実にあり得るので、彼女の参加は計画の成否どころか命に関わる重大事だ。

 何としても参加して貰わなくては。


「……一寸、何時まで手を握っているんですか」


 ユリアが白い目で昭弥を見てきた。


「いや、これは」


 昭弥が言い訳を言おうとすると他の女性陣も昭弥を見てきた。


「新しい女ですか」


「彼女の病院にいくらでも援助しているようですし」


「浮気性ですよね」


「違う!」


 昭弥は大声で叫んだが、誰も聞いてくれなかった。

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