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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部 第二章 建設戦争
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高速線

ごめんなさい。会社でトラブルがあって投稿が遅くなりました。

明日は八時頃の投稿を予定しています。

「新線路の建設を行う」


 取締役会で昭弥は宣言した。


「最近帝国鉄道の路線建設が著しいですからね」


「ようやく反撃やな」


 全員が口々に言う。最近帝国鉄道は成果はどうあれ、新線路の建設を行って話題をかっさらっていた。

 全体的なキロ数や旅客数、貨物取扱量は王国鉄道が上だったが、押されているように見えてしまい心穏やかでは無かった。

 いよいよ反撃とばかりに皆、気勢を上げた。

 だが、昭弥だけは冷静だった。


「いや、帝国鉄道に対抗するんじゃ無くてルテティアの為に行うんだ」


 昭弥は新路線の建設について説明を始めた。


「新路線の建設は王都、オスティア、チェニス、この三都市を三角形の形に結ぶように敷設する」


「え?」


 計画を聞いて全員が疑問符を浮かべた。


「既に王国鉄道の路線がありますし、帝国鉄道とも競合していますが」


「分かっているよ。けど、これらの路線は利用者数も多くパンク寸前になっている」


「そうですね」


 政治経済の中心である王都、その王都へ海産物やインディゴ海の貿易品を送り出すオスティア、アクスムへの玄関口となり産物の積み出し基地となっているチェニス。

 これらを結ぶ路線はいずれも列車の本数が増えており、パンク寸前、利用者は多いのに列車の増発が不可能な状況となっている。


「この需要に応えるべく新路線を作る」


「単純に路線が倍に増えればそれだけ輸送力が増えますね」


「しかしなあ、ただ線路を引くっちゅうのは芸が無いなあ」


「サラさんの言うとおりです」


 昭弥は、素直に認めた。


「そこで新路線は内陸部に敷いてほぼ直線に作る」


 これまでは、建設費削減のため、川の土手に線路を引いたり小山を迂回するなどして、急カーブの多い箇所が何カ所かあり、スピードアップの障害となっていた。

 また、河川沿岸の町に駅を作っているので停車駅も多く所要時間が長くなる傾向にあった。


「今度の新路線はカーブを滑らかにして停車駅を可能な限り少なくする。これでスピードが速くなる」


「どれくらいですか?」


「通常営業速度で一二〇キロぐらい」


「一二〇!」


 現在の最高でも九〇キロぐらいでしかない。一挙に三〇キロ上がる。


「最高速度は一六〇キロは出せるだろう」


「……死にませんか?」


 馬の三、四倍の速度を聞いてセバスチャンが尋ねた。そんなスピードで人間が移動したら死ぬのでは無いかと本気で心配していた。


「安全に作れば大丈夫だよ。理論的には作れる」


 蒸気機関車の車輪の回転数は理論上毎分二〇〇から三〇〇が最適とされ四〇〇が最高と言われている。

 その限界を引き出せる速度で走らせるつもりだ。


「けど、そんなに早く走れない列車はどうしますか?」


「高速運転出来る列車のみを走らせる。高速運転専用の線路にするんだ。俺はこれを高速線と呼ぶことにする。通常の列車は今まで通りの路線を。高速線を走る列車は専用に用意して、高速線のみ一〇〇キロ以上で走らせる。他の路線では通常運転だけどね」


 言わばフランスのTGV専用高速線のルテティア版だ。

 本心から言えば新幹線方式で走らせたかったが、安全装置などを考えると無意味だし、終着駅近くの用地確保に問題が生じる。

 何より通常の路線も高速線も同じ標準軌なので相互乗り入れしないのは勿体ない。

 町中は普通の線路を通り郊外で高速専用の路線に入り運転させる方が良い、と昭弥は判断した。

 勿論、新幹線方式に未練が無い訳では無く、時間短縮の意味で予め高速線を作っておき用地買収、保安装置の開発が済み次第、新幹線方式に移行すれば問題無い。


「専用路線の建設を行う。準備は出来ているかい?」


「はい、用地買収は済んでいます。工事要員の手配も済んでおり、いつでも始められます」


「よし、早速始めようか」


「そうやね。けど、どうして直ぐに始めなかったんや? いつもなら出来ると知ったら直ぐに始めるやろに」


「工事要員の賃金が高騰していたからだよ。帝国鉄道がずっと建設していたからね。そっちに多く取られていた」


 鉄道建設において、現在の所、他の企業や組合に発注することが多い。

 ルテティアや帝国は、運河の建設、洪水被害を防ぐための土手の建設などが盛んでありそれらを請け負う土木技術集団が存在していた。重い機関車と線路を支える強固な土台は、土手に通じるため、彼らに任せることが殆どだった。

 一応、独自の工事部門はあるが、先進技術の開発や普及が主で、独自に工事は行っていない。


「流石に線路の建設スピードを控えざるを得なくなってきているからね。ここが好機だと思ったんだよ」


 それに帝国鉄道は地面にレールを置いただけ、一寸した凹凸を盛り土で埋めたり、丘に切り込みを入れて平らにしたりするだけで、簡単だ。

 故に簡単に線路を延ばせた。

 だが、この高速線は違う。


「将来的には軸重三〇トン以上を目標にしている。強固な土手が必要だ」


 軸重とは車輪軸に掛かる重量で、耐えられる最大の数値だ。

 これを越えると、地面にレールが沈み込んだり、レールが壊れたりする。

 この数値を上げるにはレールの強化も必要だが、重量を分散する枕木の密集、バラストの砕石化、敷き詰める厚さ増、何より地盤の強化が必要だ。

 日本の場合、通常で一八トンほどだ。急峻な地形が多く、堆積平野を走る事が多いため地盤が軟弱なため低い数値となっている。強固な地盤であればそのまま線路を敷いても、二〇トン以上の軸重に耐えられる場所も世界にはある。


「何より、線形が凄く良いぞ」


 線形は、線路の形状の事だ。


「最少曲率は四〇〇〇メートル、最大勾配は一五‰に収める」


 いずれも東海道新幹線を除いた新幹線の建設基準だ。


「それ、大変なんですか?」


「迂回した方が安く収められる場合でも、その数値を達成するために困難な工事を行う必要がある」


「建設費高くなりませんか?」


「そうなるんだよね」


 新幹線建設が高く付くのは線形をよくするためにトンネルや高架を多く建設する必要があるからだ。更に都市部では用地買収、騒音対策という費用が掛かる。


「まあルテティアは平原の国だからまだ安く済むよ。高い山も谷もないし」


「それで具体的な建設計画は?」


「三本同時で路線はこうなっている」


 そう言って地図を見せた。


「あからさまに帝国鉄道に対抗していますね。特に王都とオスティアを結ぶ線なんて酷いですね」


 セバスチャンは意地の悪い声色で感想を言った。

 簡単に言うと帝国鉄道の更に内陸側に建設している

 王都、オスティア間は北に向かって見ると内陸から高速線、帝国鉄道、既存の王国鉄道線、ルビコン川。

 このような順になっている。

 帝国鉄道から内陸の客を奪うような形になっているのだ。


「向こうが先に始めたんだ。こちらも同じ方法で行わせて貰う」


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