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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第二部 第一章 アクスム総督
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警戒線

「まずは部隊を再編成する」


 ブラウナーは、作戦が失敗したあと、全員を集めて改めて指示を出した。

 それぞれの連隊を一度解体して配属を改めさせた。簡単に言うと彼女たちの三個連隊に軽歩兵一個大隊、歩兵二個大隊、騎兵一個大隊をそれぞれ配置。残りの大隊軽歩兵二個大隊、歩兵四個大隊、騎兵二個大隊はブラウナーが手元に置いた。


「それぞれ、進撃ルートを指定する。このルートを辿ってくれ、地形が変わっていたらある程度、逸れても構わない。兎に角、目的地へ行ってくれ」


「突撃しないんですか?」


「しない。拠点を壊滅させる事を重点に置く。だが、見つけたら攻撃しろ」


「はい」


 ブラウナー指示の元に各部隊は前進を開始した。

 今度は、迅速な移動を行い目的地まで行く。騎兵は、下馬して馬を引いて行く。騎兵は文句を言っていたが突撃など密林では不可能なので納得させた。

 まず前方に軽歩兵大隊を展開させて周辺の安全を確保した後、主力の歩兵大隊と騎兵大隊が後をついて行く。

 軽歩兵が敵を見つけて報告し、歩兵が半包囲しつつ、騎兵が側面を更に軽歩兵が退路に展開して完全包囲して撃滅させていった。

 諸兵科連合による分進、各部隊が独立してある程度対処出来るようにしてある。

 これまでは戦闘力を上げるために、兵科毎に大部隊を編成させていたが、大部隊を展開しにくい密林では小部隊に幾つもの兵科を入れた方が状況の変化に対応しやすい。

 アクスムへ攻め込むときは役に立つが、このところルテティア王国の平原での戦闘が多かったせいか、このことを知る士官が少ない。

 だが、ブラウナーは密林での戦闘経験もあり、諸兵科を集めた戦力が非常に役に立つ事を知っていた。それを彼らに実行させたのだ。

 そして、部隊を敵の本拠地に接近させることに成功した。


「攻撃開始」


 猿人族は反撃するが、歩兵大隊で押し出し側面や後方を騎兵大隊と軽歩兵大隊で攻められては後退するしかなかった。

 敵は拠点を放棄して後退しようとしたが、そこへブラウナーの命令で高速移動したティアナ率いる軽歩兵大隊が立ちふさがり退路を断った。

 敵の予想される退路に密林踏破能力の優れたアクスム軽歩兵大隊を送り込んでいたのだ。

 敵は一箇所に押し込められ、退路は断たれた。


「総攻撃開始」


 ブラウナーは、手元にあった予備兵力も投入して猿人族の部隊を包囲、降伏させた。



 

 アクスム軍による、猿人族討伐作戦は順調に進んでいた。遅い進撃だったが、確実に前進し、勢力を広げていった。

 だが、その時、後方の村が襲撃されたとの報告が入った。

 王国に友好的な猪人族の村だ。

 猿人族への協力を拒否して襲撃され燃やされたとの報告だ。


「拙いな」


「村が一つ滅ぼされただけです作戦を進めるべきでは」


 アグリッパ大佐が進言するがブラウナーは却下した。


「放置したら王国の威光が落ちて、反乱側に付く村が増えるぞ」


 そうやって少しずつ支配力を弱めていくのが向こうの狙いだろう。

 併合してから日はまだ浅く、このままでは王国から寝返る村や部族が出てきてしまう。


「直ぐに襲撃した連中を追うぞ。友好的な村の近くに駐留して守り切るぞ」


 一部の部隊を引き返して、防衛に当たらせるが、敵は直ぐに無防備な村に照準を代えて襲撃する。そのため、また防衛の戦力を割くことになる。

 また討伐作戦も、密林の移動が多く不衛生なため体調を壊す兵士が多くなり、休息させるため、後方に下げる部隊も多くなり、拠点への進撃作戦は中止となった。


「畜生」


 ブラウナーは一旦引き返し作戦の立て直しを行った。

 だが、兵力は足りないし、村への襲撃も多くなっている。

 敵の移動を阻止する為に警戒線を作っていたが、その間をすり抜けられていた。


「これじゃあジリ貧だ」


 兵力は足りない、守る物が多い、敵は自由自在に移動する。


「これでどうしろと」


 ブラウナーは頭を抱えた。こちらに不利な点が多すぎる。


「司令官」


 その時ティーグル中佐が進言してきた。


「猿人族は、樹上での生活に慣れています。木々から木々を伝って進撃しているのでは?」


「そうか」


 警戒線は地上に作っている。木々の間を移動されていては警戒線で見つける事は出来ない。


「よし、密林を切り開こう」


「え?」


 ブラウナーの指示にティーグルは驚いた。


「猿人族が移動出来ない幅の空き地を作って、移動を不可能にする。そうやってこちら側と向こう側を分断する」


「撃滅出来ませんが」


「いまは守備さえ満足に出来ない。守備を整える必要がある。直ぐに計画を実行だ」




 ブラウナーはすぐさま計画立案を始めた。

 猿人族の跳躍力を考えて数十メートルの幅を切り開く。その真ん中に道と鉄道を作り、歩哨を行いやすくする。

 また見晴らしの良い高台や死角となる部分に監視塔を備えた砦を作り警戒する。

 問題となったのは数十メートルの空き地の幅でも猿人族は迅速に移動して密林に逃げ込まれるという事態が発生していた。


「何だよ。地上の動きも早いなんて」


 敏捷性では獣人の中でも一二を争う部族の一つだ。

 さすがに、平野では虎人族、狼人族に劣るが、障害物の多い密林だと手足を使い、樹上を飛んで行く猿人族が強い。開けた警戒線は数十メートルほどしかなく、虎人族達が力を発揮出来るような広さではない。

 分断するにも敵の移動を阻止出来ないのでは意味が無い。

 ブラウナーは頭を抱えたが、強力な援軍がアムハラから届いた。


「これは」


「ああ、鉄条網ですね」


 初めて見るブラウナーにスコット大佐が説明する。


「これで敵の侵入を阻めます。無理に入ろうとすると棘が引っかかり侵入を阻止します」


「凄く良いぞ」


 ブラウナーは早速設置することにした。


「警戒線の内側近くに張り巡らせて、移動出来ないようにしてやる。これで連中は動けなくなるぞ」


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