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最弱達との出会い

「さてと、こんなものか」


黒い髪を腰辺りまで伸ばした女性が瓦礫まみれの道を歩いていた。『何か』を終わらせた後だろうか、手や服に『赤い何か』が多数こべりついている。


「…あー、染みている…。結構気に入ってたのにな…」


服を見ながらため息をつく。そうとう落ち込んでいるのか、前から『高速で飛んでくる物』に気付くのに、一瞬のラグがあった。


が――。


「…まだ生き残りがいたのか…褒めるべきか嘆くべきか」


右手を翳した方向に紫色の魔方陣が幾つも出来上がっていた。この魔方陣で先程の攻撃を防いだのだろう。女性は気にもせず欠伸をしている。


「…クソ!化け物が!」


聞こえてきたのは攻撃が飛んできた方。複数の人間が武器を持ち、女性へと構える。

またあれか。女性が見た事もなかった武器。鉛玉を高速で打ち出してくるあの武器。最初は戸惑いもしたが、いい加減慣れてきたし、もうめんどくさくなってきた。


「…邪魔だ」


右手を横へと振るう。それだけだった。たったそれだけで、女性を囲っていた人達全員、何が起きたのかわからずに、


この世を去った。


火柱。


一言で言えばそうだった。右手を振るえば無数の火柱が立ち上がり、声も上げず、逃げることもなく、無惨に消えていった。


「……はぁ」


何をやっているのだろう?女性の頭の中にこの言葉が過った。

争いを無くすため、大切なものを守るため、手に入れたこの絶対的な力。この力があれば戦わなくてすむと思った。守れると思った。けど、違った。争いは無くならず、大切なものも守りきれなかった。


何のためにこの力を手に入れた?


何がしたかったんだ?


私は――。


その時、自分自身の身体に違和感を感じた。ハッと自分の身体を見ると、女性から少女にと変わっていた。

チッと舌打ちを打つ。戦いやすいように大人と同じ身体で戦っていた少女。

もう時間か…。

女性の正体はまだ幼い少女であった。まぁ、少女だろうが大人だろうが、力は変わらないのだが、この状態になると戦いにくい。大人の方に慣れてしまったというのもあるが、少女の方だと魔力の負担が大きい、大きすぎるのだ。だから、この格好で戦うなどまずあり得ないのだが、少し時間を掛けすぎてしまったらしい。それに大人から少女へと戻ると、少しとは言え己の最大の武器である『魔法』が使えない。これが少女にとっては痛かった。まだ生き残りがいたらと思うとゾッとする。


ガラッ。


突然聞こえた音。近くだ。少女が周りにへと気を配ると、そこには、


「……あっ、ああ…ちく、しょう……」


まだ、生きていた。


少女が最も恐れていたことが起きた。


「…はぁ、はぁ…へ、へへ。こんなクソ餓鬼、だったとはな…」


ゾゾゾッ!


背筋の汗が一気に冷え上がる。まだ魔法が使えない。目の前の敵を、倒せない。


「…死ねよ、化け物!!」


「クッ!!」


少女が目を逸らした瞬間、


「やめろぉぉぉぉぉお!!!」


大きな木の棒をもった少年が生きていた男性の頭目掛けてそれを降り下ろす。


「ガァッ……!」


大きく口を開け、その場に倒れる。少年は少女の手を取るとこの場から一目散に逃げ出した。






◇◇◇◇◇






「…あの、大丈夫?」


少年は息を切らしながら少女に尋ねる。だが、助けられた少女は口を開こうとせず、じっと少年を見続ける。


「……えっと……っ!?ガハァ!ボハァ……」


突如少年の口から大量の血が吐き出された。流石にこれはビックリしたのか、少女は心配そうに少年を見る。


「…お、おい!大丈夫か?」


「…あ、ああ。…」


少年の目が虚ろになりかけている。先程の行動で自分の力を全て出しきったのだろうか。そう思うと、少女は自責の念に囚われる。

だが、


「(こいつが勝手にやったことだ。私には関係ない)」


そう頭では思うが、この少年が先程助けてくれなかったら今の少女はここにはいないだろう。

それに、先程の言葉がもう一度頭を過る。


何のためにこの力を手に入れた?


争いを起こすためでもなく、人を殺すためでもない。


争いを起こさないため、そして、大切なものを守るため。


「……助けてくれたんだ。お礼をしよう」


少女は少年の唇に触れると、自分の唇と重ね合わせる。

すると、少年から流れていた血がみるみる退いていく。それと同時に少女の身体が粒子状になりこの場から消えていく。


「……私は何のためにこの力を手に入れたのかわからなくなってきてな、正直ウンザリしていたんだ」


少女はクスリと微笑むと、自分の手を少年の胸の上に置く。


「……これは礼と言ってはなんだが…お前に託そう。この力、お前が同使おうがお前次第だ。…たが、1つ言っておく、強大過ぎる力は己を孤独にする。これはどんな力だろうが一緒だ。現に私は孤独になってしまった」


少女の手も粒子状に消えていく。


「…何年ぶりだろうな、人の優しくしてもらったのは…」


腕も、肩も、胸も、だんだん消えていき最後に残った頭も綺麗に無くなってしまった。


「…だから、ありがとう」


この言葉を最後に少女はこの世から姿を消した。






◇◇◇◇◇






ゆっくりと瞼を上げ意識を覚醒させる。


またあの夢か。


少年、神宮寺蓮夜は新幹線の窓から入る太陽の光に目を細めながらも意識をはっきりさせる。


「…何で姉さんはわざわざ俺を呼んだんだ?」


服から取り出したのは一通の手紙。姉から自分にへと宛てられたものだった。

向かう先は東京湾に出来上がった一つの島。


『人工島』メガフロート。そしてそのメガフロートの内部にありメガフロート最大の特徴であるのが、


『魔法学院ニルヴァーナ』。


異世界から攻めてくる亜人や幻獣を倒し世界を守る『魔剣士』を育成する為に作られた学院である。

このメガフロートはニルヴァーナを作るために


『異世界』。


突如この世界と異世界に通じる穴が出来た。その穴が出来たのは今から三十年前。その当時の兵器では異世界から攻めてくる亜人や幻獣には歯が立たなかった。たった三日でユーラシア大陸の三分の一を奪われ、もう勝ち目が無いと思われたときにある人物が一つの可能性を見いだした。


それが『魔法』と『魔装具』。この二つの力を手にした人類は反撃し、初めて異世界の敵に勝利を収めた。そして、異世界の穴が閉じていき、平穏がもたらされたと思ったのだが、こちらの被害も笑って済まされるものでもなかった。三日とは言えその間は無力だったに等しかったので、無くなった命は数千万を軽く越えていた。

このような被害を二度と出さない為にも世界各国が手を組み、異世界との穴に近い場所に防衛拠点も兼ねた一つの島を作った、それがメガフロートである。次はいつ異世界からの侵略があるのかわからないので、『魔法』と『魔装具』の使い方をしっかりと学べる学園を作り、侵略に備えていた。そして思惑通りに異世界の穴が開いた。それが十一年前。


開いたのは一つではなく、ユーラシアを始めとした北米、南米、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリアと言った各国の首都周辺に多数開いた。想定はしていたし、三十年前の戦闘に比べたら比較的被害が少ない方だと思われていたのだが、たった一つのイレギュラーで戦況が一気にひっくり返る。


『魔神』の襲来。


『魔神』はたった一体だっだものも、その一体に三十年前の数倍近くの被害が出た。だが、『魔神』は突如消失。『魔神』が消失したと共に亜人や幻獣といった異世界の敵も消えていった。


そして『魔神』が現れたのは日本の東京。東京湾にメガフロートを建て、魔剣士育成に一番の力を注いでいる。もし『魔神』が来るとすれば東京と予想されているので、各国よりも規模がでかい。まぁ、アメリカやヨーロッパと言った大国には少し劣るかもしれないが、それでも東京の規模がでかいのは確かだ。


そして現在、新幹線を降り、メガフロートへ繋がるモノレールに乗り換えメガフロートを目指す。


「……はぁ」


別に呼ばれる理由がわからない訳では無いのだが、


「……めどくせぇ」


メガフロートに近づくにつれ嫌な気持ちがどんどん下から込み上げてくるのがわかる。


「…あれか」


『人工島』メガフロート。規模は数万人が一生暮らせる程の大きさ。あそこには魔法学院ニルヴァーナだけでなく、様々な研究所や娯楽施設、外の世界となんら変わり無いような生活が出来るよう工夫されている。まぁ殆どが魔剣士を目指す学生ばかりなので、彼等が困らないように等の国からの援助だろう。


やがてモノレールが止まり、メガフロートに着く。


「変わらないな、ここも」


駅からは沢山の学生や職員が降りてくる。俺だけ違う学生服なのでそうとう目立っている。早くここから立ち去りたいのだが、


「…あっ!神宮寺君ですね?」


モノレールが来た方向と逆の方向から一人の女性が駆け寄ってきた。

多分この人だろう。


「私は間宮霞といいます。神宮寺先輩――じゃなくて神宮寺『先生』の弟さんの蓮夜君ですよね?」


「はい。そうですが、貴方が案内を?というか、姉が先生って…」


「あれ?知らないんですか?…蓮夜君のお姉さん。神宮寺真昼はこの魔法学院ニルヴァーナの教師をなさっているんですよ」


「………はあぁぁぁ!!!?」






◇◇◇◇◇






「ちょうど着いた頃か…」


黒のスーツを身に纏い出された紅茶を片手に資料に目を通す凛とした女性。


名を神宮寺真昼。この魔法学院ニルヴァーナの教師にして神宮寺蓮夜の姉に当たる。真昼が資料を読んでいる場所は、理事長室。その理事長室の椅子に座っているのは一人の少女。


「…で、貴方の弟…ということだから相当な実力者、として受け取っていいんですか?真昼」


「…いや、まぁ何と言うか…。…まぁそう受け取ってくれて構いません」


真昼と話している少女こそがこのメガフロートの最高責任者でありニルヴァーナの理事長を務めているのである。


「と言うか…そろそろこちらに着くと思うんですが…」


「そうですか。楽しみですね。貴方の弟がどれだけのものなのか」


二人の会話が途切れたと同時に一人の女性と一人の少年が入ってくる。


「連れてきましたよ。神宮寺先生」


「………」


明らかに少年――蓮夜は不機嫌極まりない顔をしている。その目が姉を写すと、今にも取っ掛かりそうな表情をするが、人前なのか気持ちを抑え、睨む程度で済ませた。


「(……まぁ仕方ないか)」


真昼は連絡をしなかった自分にも責任があると思い黙って蓮夜を見ていた。

この光景を見ていた二人はただただ黙っていることしか出来ず、蓮夜が喋り出すまでは気まずい空気がこの場を支配していた。






◇◇◇◇◇






「…で、今まで音信不通だった姉さんがいきなり俺に何の用なんだ?」


口を開いたのは蓮夜が理事長室に入って十分後。その間重苦しい空気に触れていた蓮夜と真昼以外の二人はやっと解放されたと思い、長いため息をついていた。


「…え、えっと神宮寺先生と蓮夜君は姉弟ですよね?…その、どうしたんですか?」


「あぁ。別に仲が悪いという訳では無いのだが…。こちらから殆ど連絡を取らなくてな…それで――」


「先輩!それは流石に酷いんじゃないですか!?」


霞が驚きながら叫ぶが、


「別にいいんですよ、間宮先生。テレビでもよく見てたし、生きている事さえ確認出来ていたから」


何なんだこの姉弟は?霞と理事長二人が最初に思った言葉だった。蓮夜も落ち着いたのか、ため息を吐くと、それで?と切り出す。


「呼んだ理由は?」


「単刀直入に言う。ニルヴァーナに入れ」


真昼の言葉に霞が驚く。理事長も顔には出さないが、眉を動かす程度には驚いてる。


「せ、先輩?どういうことですか?それは…編入という形で?」


「…まぁ、確かに生徒として迎え入れるが…少し特殊だな」


「…特殊とは?」


ここで初めて声を発した少女に驚く蓮夜。何でこんなところに、というかそこ理事長の机だよな?と思ったのだが、予想外の答えが返ってき呆然としてしまう。


「あっ、自己紹介がまだでしたね。私は魔法学院ニルヴァーナの理事長を務めています、篠宮琴羽です。どうぞ宜しく、神宮寺蓮夜君」


「…どうも」


こんな少女が理事長って…大丈夫なのかここは?


「話を戻すぞ、蓮夜。お前にはここニルヴァーナに通ってもらいたい」


「理由を聞いてないんだけど」


「それはお前が一番わかってる筈だ」


真昼の言葉に蓮夜が唇を噛む。

理由?んなもの…最初からわかってるよ。


「…姉さんはさ………、いや、何でもない」


「どうした?言ってみろ」


「いや、別にいいよ。それよりも、ちょっと特殊てどういう意味なんだ?」


普通に生徒として通うのはわかる。というかそれだよな?普通に通ってもらうって言ってたし…じゃあ一体…。


「ここニルヴァーナでは異世界からやって来る亜人や幻獣を倒す為に個人ではなく五人一組の部隊をAからDランクへと分け何組も作っている。まぁSランクやSSランクといった特殊な部隊もあるが…それは置いておこう。蓮夜、お前にはある部隊の隊長――もとい指揮官になって欲しい」


「ブハァ!……ゴホッゴホッゴホッ!」


出された紅茶を飲みながら話を聞いていると、とんでもないことを言ってきやがったうちの姉は。

噎せたじゃねぇか。


「…ゴホッ、何言ってんだよ姉さん。いきなり来た新人が隊長の座を奪ってしかも指揮官だ!?それは流石にまずいだろう」


「まぁ、最後まで話を聞け。その部隊とはちょっとばかり事情があってな…強い事は強いんだが…」


そこで何か思い出したのか、理事長がポンと手を叩いた。


「…ああ。彼女達の事ですね」


それに続き間宮先生も声を上げながら手を叩くがすぐにシュンとなってしまった。


「その部隊はニルヴァーナの中でも最弱と言われる部隊でな、お前にはそこの隊長兼指揮官になってもらいたい」


この人はマジで何を言っているのだろうか?そう思えるほど蓮夜の頭はパンク寸前だった。そのパンク寸前の頭をどうにか動かし、必死で質問を続ける。


「…そりゃいきなり最強の部隊に入れ、って言われるよりかはいいけど…最弱?姉さんは強いは強いって言ってたじゃないか、どういう意味なんだ?」


その質問に理事長が答える。


「こればかりは見てもらった方がいいでしょう。幸いにも今ランキング戦をしている訳ですし…」


「そうですね。実際に見せるのが一番でしょう。…蓮夜、ついてこい」


そう言うと姉、真昼は立ち上がりドアノブへと手を当てる。蓮夜には拒否権はないらしく仕方なく姉についていく事にした。






◇◇◇◇◇






「…流石にデカいな、俺一人なら絶対迷う」


「すぐに慣れる。…ここだ」


連れてこられたのはバカデカイ闘技場だった。闘技場といっても学校のグラウンドに近い。簡単に言うならアリーナと言った所か。

周りには沢山の学生が歓声を上げながら舞台の中心を見ていた。


「…あれは?」


「ランキング戦だ。言ったろ?AからDのランクの部隊が何組もあると、あれはランクを上げるための…模擬戦みたいなものだ。ランクが上がればその分報酬も高くなるし、使える施設も多くなる。だが、それだけ亜人や幻獣と戦うのは難しくなるし、もしかしたら死亡するケースだってあり得る」


「…それってランク上げる必要があるのか?死亡するケースだってあるんだろ?」


「確かに言ったが死に直結するような依頼はAからDには出していない。Sランク以上か成人した大人達がやっている。心配はするな」


蓮夜はそんなものなのか、と今行われている戦闘を見ながら考える。戦っているのはどちらも五人の少女であった。片方はあまり目立ちはしないが堅実でチームワークがしっかり取れた部隊である。もう一つはと言えば、


「なぁ、姉さん…まさかとは思わないが…あの、いかにも個人主義大好きですよチームの隊長兼指揮官をやれ…ということは…」


「そのまさかだ。お前にはあの部隊の隊長兼指揮官をやってもらう」


「…あり得ねぇ。どんな事情があるのか知らないけど、流石にあれは…」


「だが、お前ならわかるんじゃないか?あの部隊がただ弱いだけか」


真昼は微笑みながら舞台の中心へと目を向ける。確かに気付いて無い訳ではない。全員『強い』。

これが個人同士の戦いなら寧ろ圧勝するんじゃないか?と思えるくらいに。だが、それ故に『最弱』なのだろう。部隊、チーム戦で一番必要なのは言わずもかなチームワークである。あの部隊はチームワークのチすらわかっていない。一人一人が強いだけに仲間を引っ張ってしまう。あれではチーム戦になっていない。


「…一人が強すぎてもダメなのに…それが『五人全員』かよ。何であんな部隊にしたんだよ」


「お前がさっき言ったじゃないか、一人が強すぎてもダメだと。アイツらは昔は別々の部隊だったんだが、一人が強すぎる故にチームとして成り立たなかった。だからあのメンバーにした」


「……で、俺が呼ばれた…と」


「どうだ?親近感でも湧いたか?」


姉が言うようなセリフじゃないだろそれ。そう思いながらため息をつくが、専ら嘘でもない。というか、姉の言う通りである。


「…ちょー湧いた。昔の俺みたい」


「だからお前にした。他でもない…お前に、だ。それに、お前には『ソレ』があるだろ?『アレ』以外にも」


真昼は極力他人にわからないようにあえて言葉として出さなかったが、蓮夜は当然のようにわかっていた。


「……はぁ、わかったよ。やるよ」


「勿論だ。お前の選択肢は、はいかyesしかないのだからな」


「…どこの軍隊だそれは」


蓮夜はそれと、と加えると、


「…勿論、部隊を指揮するのは俺だからあの部隊が『最強』になっても文句は言わないよな?」


「当たり前だ。というか『それくらい』してもらわないと困るな」


蓮夜と真昼が雑談をしている頃には見ていた試合は終わっていた。勿論、これから蓮夜が指揮するDクラス部隊Dー327部隊の負けで。






◇◇◇◇◇






そして次の日の朝。


最弱の部隊であるDー327部隊がブリーフィングルームに集められていた。


「はぁ、また負けた。何で同じクラスなのに負けるのよ!」


赤い髪をツインテールにしているのが特徴で負けん気が強そうな少女がバンと机を叩いた。他にも四人の少女が欠伸をしながら読書をしながら、携帯端末を弄りながらそれぞれの趣味を満喫していた。


「それは明莉さんが猪突猛進だからでしょ?」


「はぁ!?セリアにそんなこと言われたく無いわよ。あんたのせいでチャンスが無駄になったの沢山あるんだからね!」


「なんですって?」


先程まで読書をしていた金髪の少女が本を閉じ、赤い髪の少女に食って掛かる。


「…あ、あの~喧嘩は、よくないですよ~」


「いつものことだろ?…雛子、ほっときなよ」


「でも、凛ちゃん~」


茶髪のセミロングの大人しめの少女と、黒い髪を後ろ手括っている活発そうな少女。それと、


「………寝れない」


「寝ないで起きてくださいよ~、唯ちゃん」


唯と呼ばれた銀髪の少女はフードを被り机を枕に目を閉じていた。

そして少女達は何故自分達がここに呼ばれたのがわからなかった。遂に解散か!?と思われたのだかどうやら違うみたいだ。


「……で、一体何時になったら来るのかしら隊長サンって人は…」


その言葉に全員が口を紡ぐ。昨日自分達の担任である神宮寺真昼に新しく入ってくる子がいると、聞かされたときは驚いたのだが、さらにその新人が隊長兼指揮官を務める事を知ったときは最初の驚きが霞むぐらいの音量で声を上げた。主に声を上げたのは明莉だけだったのだが、他の四人もリアクションを取らずにはいられなかった。


本来ならこの時刻には来ていても可笑しくは無いのだが、いつまでたってもやってこない。


「…どういうことなの?予定時刻の三十分はとっくに過ぎてるわよ!」


「…流石にこればかりは同感ですわ」


「ほ、本当に来るんでしょうか?その、隊長さんは…」


「あの神宮寺先生が嘘なんてつかないしな、何か事故なのか?」


「………どうでもいいけど、その隊長って強いの?」


「知らないわよ、そんなの。…もう我慢できないわ……、その隊長ってやつを――」


明莉が何かを言いかけたとき突然前方の扉が開いた。


「あー、ここってDー327部隊のブリーフィングルームで間違いないか?」


「……え、ええ、そうですけど…って!あんた誰よ!」


「あれ?聞いてない?俺がこのDー327部隊の隊長と指揮を務める事になった神宮寺蓮夜だけど…」


「…はぁ!?」


「…嘘でしょ!?」


「…えっ!?えっ!?」


「…へぇ…」


「………」


蓮夜以外の五人の時間が止まった。それを気にせず蓮夜は、


「…まぁ、宜しく」


簡単な挨拶で済ませるのだった。



















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