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馬を引く者  作者: 江鋼太値
馬を引く者                   第三幕 悲憤慷慨
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10、行動

 


 海の中から突然仲間の意識が途絶えたことに異変を覚えたゲーテは、危険が起こったのではないかと考えた。

 「はっあぶない」

 突然声を発したことで違和感を覚えたオニオオハシ達が口々に喚き出す。

 「なっ何がですか?」

 「何が何が?」

 「どうしたの?」

 口々に喚きだしたオニオオハシ達に嫌気がさし、喝をいれる。

 「うるさーい」

 「うるさいんだって」

 「うるさいんだ」

 「おまえだろ」

 結局黙らないので、怒りが頂点に達してしまう。

 「だーかーらー、黙れって言っとんじゃ」

 やっと理解したようで、緊張しながらも一同返事をする。

 「はい」

 「ではっ、状況説明を始める。皆の者こちらへ」

 ゲーテの掛け声に合わせて集まるオニオオハシ達。

 「私達の仲間の赤龍は、ただいま大変危険な事態に直面している」

 「危険なんだって」

 「そこ、黙って聞く」

 「ひー」

 またもや叱られてしまう。

 「そのためには状況の打開が必要である。それには、お前達の協力が必要不可欠だ」

 「皆の者手伝ってくれるか?」

 「・・・・・・」

 頭が悪いのか、まだ黙り続けるオニオオハシ達。

 それを観て状況を理解したゲーテは命令を発する。

 「もう黙らなくていいんじゃぞ。皆の者返事はー」

 「返事だって」

 「どうする?」

 「どうするもこうするもやるしかないんじゃ」

 いつまでも締まりが悪いことに、誰もがわかるように他の雲達を使って怒りのマークを形作り、それを見せつけるようにオニオオハシ達の真ん中へ持っていく。

 「ぎゃー」

 「ゲーテ様が怒ってるぞ」

 「皆の者敬礼」

 「はー」

 効果(こうか)覿面(てきめん)の様子に心底満足したゲーテは、笑顔のマークを作り、それを見せつけるように頭上高くに掲げる。

 「見えないぞー」

 「見えない。見えない」

 「ゲーテ様ー何を発したんですか?」

 しかし、結局それは誰にも伝わっていなかったようで、またもや鉄拳制裁を喰らわせるはめになったのだった。

 「お前らー」

 「ひー」


 それからしばらく経ち、オニオオハシ達が疲れたところで、ゲーテとオニオオハシ達の追いかけっこは終わった。

 「「「はあはあはあはあ」」」

 「やっと止まったか。では、お主達には、今からこれに入ってもらう」

 そう言うと、目の前で息も絶え絶えになっているオニオオハシ達一匹ずつを捕まえて、他の雲達を使い、丸く包み込んでいきます。

 「だせー」

 「出すんだー」

 「えっこれ何、おもしろーい」

 突然周りを雲達に囲まれたことによって喚き出すオニオオハシ達。

 「では、今からお主たちには、このまま海の中へ潜ってもらいます」

 「えーっと何々どういうこと?」

 「どうやって動けばいいんですか?」

 「ほらっこうやればいいんじゃね」

 「こうかっ・・・できた」

 面白半分、楽しさ半分というような状態で、行動が止まらなくなったので、ゲーテによるお叱りが飛んでくる。

 「お前らなー・・少しは反省しろー」

 「はいっ」

 「怒られてやんのー」

 「お前もだろ」

 まだ口々に喚いているが、意思は伝わったようで、動くのをやめる。

 「それでは、今から赤龍救済作戦を決行する。一同前へならへ」

 「前ってどっち?」

 「こっちじゃね」

 「いやっこっちだろ」

 「飛び込みよーい」

 「あっそうか海の中か」

 「今更かよ」

 「飛び込め~」

 「「「はいっ」」」

 ゲーテの掛け声に続いて次々と海の中へ飛び込んでいくオニオオハシ達。

 徐々に増え始める海上の雲に包まれたオニオオハシ達。

 それはまるで、いくらのようにしか見えず、ゲーテは瞬時に涎を流す様子を他の雲達を使って作っていく。

 「こっちこっちー」

 「みんな早くー」

 「あっ涎流してるー」

 「えっ喰うの?」

 「みんな逃げろー」

 「わー」

 いくらが逃げ始めている。いくらがなぜ動いている?・・・・って遊んでる場合じゃなかった。早く止めねば。

 「・・・・こらまてー」

 「逃げろー」

 またもや始まる追いかけっこ。それは見ていてとってもほほえましかったのだった。

 でも、それはすぐに終わりを迎えることになる。なぜなら、オニオオハシ達に対してゲーテがあまりにも大きすぎ、なおかつ他の雲も使うことができるからだ。

 「げっ囲まれた」

 「どうするどうする」

 「てかっなんで俺達逃げ出したんだ?」

 「そういえば」

 頭のいい奴が状況を理解したようで、それにつられて他の者達も自分達の状況を理解し始める。

 「それでは、皆の者」

 「「「・・・ごめんなさい」」」

 突然のことにあっけにとられるゲーテだが、瞬時に今の状況を理解し、他の雲達を使って拍手する様子を作り出すのだった。


 ▲


 「それでは続きを始める。皆の者、我に続けー」

 「「「はい」」」

 元気いい返事を皮切りにオニオオハシ達がゆっくりと我の後に続く。

 アクアブルーに染まった綺麗な海の中を球状の卵たちがえっちらほっちらと泳いでいく。卵の行進。それは我に続く子供達の行進のようで、とても微笑ましかった。

 しかし、そんなに悠長にもしていられない。こんなことしていて本当に間に合うんだろうか?間に合わなかったら・・・。そう思ったゲーテは後続に指示を飛ばす。

 「皆の者ーいそげー」

 「はー」

 「おー」

 「よっしゃー」

 後ろから元気のよい声が聞こえてくる。

 そんな元気な声を聴き、人の気も知らないでと感じたゲーテは、

 「とばせー」

 もっと早く仲間を助けるために海底へと向かってひた走るのだった。


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