9、俺のお願いと先詠みの力
俺とアルギノはその日も無邪気に遊んでいた。そして、俺はアルギノに対して最後のお願いをするのだった。それは、俺の気持ちの代弁でもあった。なぜなら、今日が俺とアルギノの会う最期の日になるかもしれないのだから。
「うわあ~~~、すごーい」
俺はその侯景を深く刻み付けるように流れる涙を止めようともせず、一心不乱に手を叩き続けていた。
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俺はその日、アルギノに最後のお願いをしに来た。
それはとても簡単なことだった。なぜなら、えっ!?そんなことでいいの??と誰もが驚くような願いだったのだから。
「今のアルギノの気持ちを教えて」
そして、彼女はそれに応えるように無邪気に今の気持ちを踊りで見せてくれた。
それはあまりにも可憐で、優雅で、今の俺でも一緒になって踊り出してしまいそうだった。
でも、その時の俺は、その想いを、ぐっと拳を握りしめることでこらえる。
しかし、体は言う事を利いてはくれなかったようだ。
「どうしたの?なんで泣いてるの?」
なぜなら、目からは、とめどなく涙が流れていたからだ。
「えっ!?俺、泣いてる??」
俺はそれだけ言うとその場から逃げるように理由も言わず、姿を消してしまった。
「りゅうりゅう~~~~」
それが、のちにあいつを復讐へと導くきっかけになっていたとしてもだ。
「もういいの?ちゃんと友達にはお別れ言ったの?」
「うん」
俺は嫌なことを吹っ飛ばすために元気よく声をあげる。
「じゃあ、行くわよ戦場へ」
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そこにはわしに先読みの力を授けてくれたはずの張本人の姿があった。
「なぜお主がここに?」
「おっと、わいの力を使うのはなしだぜ」
詠まれている?ということは本人ということか?でも、何かが違うような?でも、その何かがわからない。だから、わしは、今一度目の前にいる奴の姿をもう一度再確認することにした。
ふとっちょでへそがでるほど短くて白いシャツを着ていて、綿あめのようなもこもこっとした雲に乗っかっている。ここまではわしも知っている。なぜならわしが封印したのだから。
「封印!?そうだ封印だ」
「思い出したか、やっと」
そういうと、目の前の人物は立ち上がり、雲から降りようと足を伸ばす。でもなぜかそこからが動かない。
「なら、これも知っているな。お前のせいでわいがここから降りられないということも」
「ああ、知っている。なぜならわしがそうしたからだ。お主の力をわけてもらうために」
途中で耐えられなくなったのか、目から涙を流し出す。
「わけてもらう。分けてもらうだー」
奴が声を張り上げたので、わしも奴に負けぬように声を張り上げる。
「ああ、最初はそうするつもりであったのだ。でも、そうしてくれなかったのはお主であろう」
「しょうがないではないか、わいの力は他人にあけわたすことなどできないのだから」
「できない。だから、わしはお前とは他人ではいないことにするためにわしの一部を使ってお主を縛り付けたのだ」
「はあはあはあ」
息が切れたのか、肩で息をしだす。
「縛り付ける?縛り付けるということは、今目の前にいるお主は偽物??」
額から流れ出る汗を腕で拭い、応える。
「そうだ。偽物だ。それがわかったらどうするゲーテ」
「これを本体に知らせる。そのためにここで霧散する」
目の前から溶けるようにいなくなる雲たち。わいは自身をも消えゆく中ただ見守ることしかできなかったのだ。