第十七頁
シリアス展開入ります。
あの後、俺はしばらくメグルの機嫌を取ることで精いっぱいだった。
まだ旅は始まったばかりだというのに、こんな事では先行きが心配だったからな。
その甲斐もあってか、洞窟を抜ける頃には、メグルの機嫌はすっかりとよくなっていた。
というか、洞窟を抜けたのだ。
やっと、という言葉をこれほどに強く感じたことはない。
ふと、洞窟の脇を見ると人が座っていることに気が付いた。
なんと、この世界に来て初めて見た金髪の人だ。が、残念なことに美少女でもなんでもない。
小太りのただのおっさんだった。
金髪のおっさんも俺達が出てきたことに気が付いた様子で、愛想よく話しかけてきた。
「やあ、君たちはプレイン村から来たんだね」
「はい、そうです」
「この洞窟はプレイン村にしか行けないからね。いわば、陸の孤島の様な物だよ。あそこは」
「田舎って馬鹿にしてるんですかぁ……?」
おい、ふざけるなよおっさん。
せっかく機嫌を取り戻したメグルがまた不機嫌になりそうじゃないか。
金髪のおっさんも察したのか、慌ててフォローし始めた。
「いや、違うんだ。すまない。よく見たらその藍色の髪。御嬢さんはプレイン村の人の様だね。あそこは良い村だよ。政治や領土争いに巻き込まれない、ほのぼのとしていて素晴らしい場所だ。少し不便なのがネックだけどね」
「一言余計です……」
「おじさんはこれからプレイン村に?」
「そうだよ。私は人種柄、旅商人だからね」
そういえば、背にはたくさんの荷物が入っていそうなリュックを背負っている。
メグルの言っていた、マッチやらを売りに来る人というのはこういった人の事なのだろう。
それにしても、
「人種柄に旅商人って?」
「え、君、知らないのか? 髪の色で分かる人種ごとに、大体の特性や仕事、やっていることは分かるじゃないか。もちろん、人種の垣根を越えて、赤髪が私のような旅商人をやっていることもあるがね」
「そうなんですか?」
どうやら、この世界では髪の色で人種が分かれているようだ。
プレイン村にしかまだ滞在したことが無かったから、皆がメグルのように藍色の髪なのかと思った。
「そう言えば君、黒い髪だなんて見たことないけど……。どっかの原住民か何か?」
「失礼な! これでも俺はこんな世界よりももっと高度な――」
不意に、口に手を当てられたと思ったら、メグルに引っ張られた。
耳元で、メグルが囁いてくる。
「駄目ですよ、スグルさん! スグルさんはこの世界の人じゃないんですから、あんまり目立つと噂されちゃって大変なことになりますよ。この人は世界を旅する旅商人さんなんですから」
「……そ、そうか」
確かに、物珍しい俺が目立った行動をしても、あまり良い事は起きそうにないな。
見世物にされても困る。
ここはどうにか誤魔化し、これからもあまり異世界人だということは伏せておこう。
「まあ、生まれつきこんな髪なんですよー。突然変異かなんかですかねー」
「そうなのかい?」
「そんなもんです」
「まあ、いいけどね。それより、君たちこそ何処へ行こうというんだい?」
「私たちは、これから旅を始めるようなものなんです。だから、何処へ行けばいいとかは全く分からなくて……」
「それは難儀だね。旅をしていくうちに色々と覚えていくといいよ」
「はい!」
「そうだ。私からも一つ情報を与えてやろう。本当なら、情報だって金を取るんだけどね。今回は新人さんに免じてサービスだ」
「ありがとうございます!」
メグルは深々と頭を下げた。
おっさんは、さっきからメグルのことばかり見てにやにやしている。
俺だけだったらこうも上手くはいかなかったんだろうな。
「じゃあ教えてやろう。何処へ行くのかは御嬢さんたちの自由にするといいが、この先の街道を真っ直ぐ行ったところにある街へは近寄らない方がいい。何もいい事は無いぞ」
おっさんは顔の前で手を振りながら言う。
「どうしてです?」
「最近になって街の財政が破綻したんだろうな。大方、税の取り過ぎだろうよ。街では物乞いがくれくれってしつこいんだ。私がこうして忠告しても、どうするかは御嬢さんらの自由だが、物を盗られたくなかったら近寄らないことが賢明だな」
「そう、ですか」
「旅には危険がつきものだ。気を付けていくんだよ」
「ありがとうございました」
先の街道を真っ直ぐ。
金髪のおっさんと別れると、俺達はすぐにその街道に乗った。
ああは言われたものの、自分たちの目で見て見ない事には何とも言えない。
これからの長い旅、休むための宿だって出来る限り安全なところで取っていきたい。そう考えると、やはり街を目指すのは当然のことだった。
何より……。
「スグルさん?」
「どうかした?」
「ざいせーってなんです? ものごいって? ぜいとは?」
文字通り箱入りだったメグルは、外界の情報にはまったくの無知だった。 おっさんに行かない方がいいと言われた意味が分かっていなかったのだ。
メグルに分かりやすいようにそれらの用語を説明しながら、俺達はその街へと向かった。
どれだけ歩いたのかは分からない。
それなりに歩いたと思う。
それでも、俺もすっかりとこの世界のゆったりとした時間の流れに慣れてきたのか、それほど長い間歩いていた気はしなかった。
日の高さはちょうど頭上辺りにある。
恐らく、昼時といったところだろう。
腹が減ってきたから、そろそろ街さんに姿を見せてもらいたい。
そんな頃に、街へと到着したのだった。
街の入り口は、足元が石畳に変わっている所からだろうか。境は曖昧だ。
一見すると、西洋風な街並みを思わせる建物や道の造り。
街灯やらもそんな雰囲気を醸し出している。
もっとも、この世界に西洋だの東洋だのの概念があるのかは分からない。少なくとも、俺のいた世界で表現するとまさにそんな感じだった。
「綺麗な街ですねー」
どんなに上手い言葉で表すよりも、メグルのその一言が純粋な感想を述べているだろう。
ただ、綺麗なのは街だけなのだ。
感動的な感想を述べたメグルも、俺と同様に異変に気が付いたようだ。
あまり、視線をそちらに向けたくはない。
いや、向けてはいけないと意識的にそう思わせるのだろうか。
少なくとも俺の生きてきた価値観では、あまりじろじろ見てはならないと思わせる。
しかし、やはりメグルと俺とではその価値観も感性も違うらしい。
メグルは、俺が目を逸らしたものたちへとすぐに駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
どこを見てもお洒落で綺麗な街。
そんな街の地面には、体の至る所に酷い怪我を覆った人々が、座ったり寝転がったりしていた。
怪我の種類は様々。
そして、大半は怪我なんて生易しい言葉では済まされない状態の人たちばかりだった。
腕の無い人。
足の無い人。
失った足や腕の本数は、人それぞれだ。
目を覆う様にして包帯を巻いている人もいる。
どう見ても、眠るためのアイマスク代わりではない。
その人々が座ったり寝転んだりしている前には、茶碗程の大きさから壺ぐらいの大きさまで、さまざまな容器として使えるものがそれぞれに置かれていた。
俺は、一目見て分かった。
これが、おっさんの言っていた物乞いとやらだろう。
「おじいさん、酷い怪我です……」
メグルは、街へ入って一番に近くにいた老人の傍にしゃがんで話しかけていた。
その老人も、右腕の肘から先を失くしている。
巻かれている包帯は血で染まっている部分があるからして、腕を失くしたばかりなのだろう。
いつまでも心配しているメグル。
だがそれは――。
「……メグル、行こう」
もちろん、俺は負傷している人たちを見捨てるような人でなしにはなりたくはない。
そう考えながらも行動は矛盾しているが、しっかりと俺なりの道徳観念に基づいた結果での行動だ。
だが、メグルは信じられないといった顔を俺に向けてくる。
「スグルさん、この人たちを放って行こうってことですか!?」
違う。違うんだ。
いや、そうなのだが、違うんだ。
「…………」
すると、おじいさんが弱々しくも口を割った。
「いいんじゃよ、御嬢さん……。儂らはこの街の人間じゃから国に税を払わんといけん。じゃが……こうして働けなくなった者たちは稼ぐことが出来んのじゃ。税を治められないのなら、手当ても受けることは出来ん。しかし、それはこの街の決まりじゃから仕方のない事なんじゃよ。御嬢さん、悪い事は言わないから早く行きなさい。ここは、温厚な物乞いばかりじゃありませんぞ」
「でも……!」
助けられないのなら、手を出すべきじゃないんだ。
俺だって、道端で倒れている人の全てを助けることが出来るのならそうしてやりたい。
けど、金銭、体、時間、その全てが、多くの人を救うにはあまりにも足りなさすぎる。
そして何より、どれだけ自分を犠牲にして人を助ける覚悟があるのかと問われれば、俺には一割も犠牲にする善意は備わっていない。
仮に、自分の一割を何の利益も見返りもなしに捧げることの出来る人がいれば、それは聖人と呼ばれるべきだろう。
もちろん、そんな聖人と呼ばれるべき人はいる。
しかし、俺はそうじゃない。
大半の人はそうじゃない。
一人が一人を確実に助けたのなら、救われない人はこの世から消えているのだろうから。
同情するなら何とやら。
下手に中途半端に助けるぐらいなら、始めから期待などさせてはいけない。
助けると思わせ放っておかれるなど、裏切られたような悔しさが込み上げてくるのだから。
「おじいさん、何かしてほしい事はありませんか?」
「せめて、傷薬があればいいんじゃがのう……」
「傷薬……。ご、ごめんなさい。持ってないです」
ほらな。
ましてや無知なメグルに人を助けるという行為がどれだけ大変な事か。
それをメグルは分かるべきなんだ。
……無知ゆえに、直接現実を突き付けて一気に残酷さを知らしめるの様な事はしたくないから、俺はこうして黙っているのだけど……。
そんな俺に、メグルは怒った口調で話しかけてくる。
「スグルさん! どうしてさっきから手も貸してくれないんですか!? 全然、優しくないですっ!」
そんなこと言われたって、俺だって傷薬なんて持っていないし、腕を切断された人の治療なんて高度な技術は持ち合わせていないんだ。
しかも、この世界の技術水準を見る辺り、手術らしい手術が出来る場所すらあるのかも怪しい。
俺が街並みを見渡していると、老人の座っている脇の路地から一人の少女が現れた。
五歳ぐらいだろうか。
背は低く、体も小さい。
もしかすると、栄養水準が低いために小さいだけであって、もう二つか三つは歳が上なのだろうか。
髪はしばらく切ってもらっていないのか、それとも伸ばしているのか、腰の辺りまで伸び放題だった。
そういえば、この街の人間は皆、茶髪であることに気が付いた。
老人も女の子も、同様に茶色である。
俺にとっては見慣れた色だから、少し親しげな気持ちにはなった。
だが、その茶髪が余計に小汚さを増しているように思えてしまう。
この女の子なんて特に、伸びた髪はぼさぼさなのだから。
服も汚い格好をして、手には花摘みにでも行っていたにしては、雑草ばかりが握られている。
「おじいちゃん。野蒜みっけた」
握った草を差し出し、笑っている。
もしかして、その草を食べるのだろうか。
確かに野蒜自体は食べられるのだろうが、やはり味どうこうよりは衛生面が気になって仕方がない。
「良かったのう、リエ。ちゃんと洗って、後で茹でて食べよう」
「けほっ……。うん! リエ、根っこのとこ好き! お家に置いて来るー」
リエという少女は、走って行ってしまった。
どうやら、家はあるようだ。
「……あんなに小さな子まで」
さすがに女の子はこれといった怪我を負ってはいなかったようだが、メグルは悲惨な食事情を目の当たりにして、またもや情が湧いてきてしまった様だ。
しかし、それだけでは救うことなど出来ない。
情けで人の腹は膨れない。
「私、この人たちを助けたいです……」
どうして、俺の目を見るんだよ。
無理なものは無理なんだ。
どうしても引きそうにないメグルを前にして、俺はつい言ってしまった。
「メグルは世界が平和になってもらいたいんだろ? そのためにこの人たちを救いたいのは分かる。でも、俺達にそんな力は無いんだ。魔物を倒すことは出来ても、街の方針を変えたりすることは出来ない。出来ても、簡単な話じゃないんだ」
「でも……! 少しなら私たちに何かできる事があるはずです!」
「人を相手にするのか? この街の権力者を斬るか? それが出来るなら、確かにこの人たちは救われるかもしれない。けど、それじゃ皆が幸せな平和な世界とは違うだろ。メグルは誰かが犠牲になることによって、誰かが生き残ろうとするような平和は望んじゃいないはずだ。俺だって、そんなのは嫌だ」
「…………」
言ってから、俺は言い過ぎたと感じた。
だが、気持ちだけでどうこうなる問題じゃないんだ。
冷たいかもしれない。
それでも、俺は自分が間違ったことを言ったとは思っていない。
正しいとも思ってはいないのだが……。
そんな矛盾した考えが、俺自身の頭が、俺の頭を悩ませる。
「……なんなんですか! なんなんですかぁ! スグルさんがそんなに冷たい人だとは思わなかったです! 尊敬するだなんて言って損しました! 見損ないました!」
「…………」
怒るだろうとは思っていたよ。
あるいは泣き始めるかだな。
メグルは、老人の傍にしゃがんだまま押し黙ってしまった。
動きく気はないのだろう。
困ったな……。
「おやおや? 君たちは見ない顔だが」
そんな声が聞こえてきた。
俺もメグルも、その声の主に目を向ける。
「余所者かい?」
その男は、金髪の髪をしていた。
身なりの良さそうな服に身を包み、姿勢や口調からも育ちの良さそうな雰囲気を見受けられる。
この街に転がっている人たちとは、対照的な人間だ。
貴族だろうか。
明らかに、庶民なんかではないということはすぐにわかる。
「君たち、この街にはあまり長居しない方がいい。見ての通り、こんなにも汚いんだからねえ。病気になるかもしれないよ」
「な……。なんてこと言うんですか!」
「メグル」
俺は、立ち上がったメグルの肩を掴んで止めた。
唖然とした表情で振り返ってメグルに、俺は首を振った。
「スグルさんはこの人の味方するんですか!? こんなに苦しんでる人がいるのに放っておいて、しかも汚いだなんて……!」
「そんな事は言ってない」
「じゃあ、なんだって言うんですか! 私には、さっきからスグルさんの考えてることが分かりません……」
「血の気の多い御嬢さんだねえ。この街の死んだような人間とは大違いだ」
「……あんた、この街のお偉いさんか?」
「そうだね。偉い立場かと言われれば、まったく持ってその通りだ。僕は公爵だからね。この街の貴族の中でも最も権力を持っているのさ」
「じゃあ、あんたが街をこんなふうにしたのか?」
「いいや、それはどうかな。確かに、僕は街の政策や国に還元する税の徴収を任されてはいるけど、それが嫌なら別の街に行けばいいんだ。国は同じでも、街が違えば政策も暮らしも徴収される税の高さも、仕事の種類だって変ってくるんだからね」
「そうか……」
「この街の人間は、好きでここにいるってことさ。嫌なら、君たちだって早くどこかへ行けばいい。ま、せいぜい、余計な手出しだけはしないようにね。藍色髪の御嬢さん」
公爵とやらは、人を馬鹿にするような笑みを浮かべながら何処かへと行ってしまった。
メグルは、それを悔しそうに睨んだまま立ち尽くしていた。
爪が手のひらに食い込みそうなほどに握った拳。
その手に、老人がそっと触れた。
「御嬢さん……。綺麗な手が傷つきますぞ」
「おじいさん……」
「御嬢さんの気持ちはよおく受け取った。じゃがな、そこの黒髪の少年が言っていたように、街の方針をそう簡単に変えるわけにはいかんのじゃよ。街では、怪我を治療できない為に感染症も蔓延する可能性がある。見た所旅をしているようじゃが、準備が整ったのならすぐに出て行きなさい」
「そんな……。そんな事言わないでください……」
「メグル、俺だってこのおじいさんやさっきの女の子を救ってやりたい。けど、それは無理なんだ。今日はここの宿にでも泊まろう。少しでもお金を置いていけばこの人たちの暮らしの為になるし」
「じゃあ! みんなにお金を配れば……!」
「それは出来ない」
「どうしてですか!」
「俺達だって、メグルのお母さんと親父さんから貰った少しのお金しかないんだ。みんなに配れるほどないだろ」
「でも、一人に硬化一枚とかだったら……」
「そんなに枚数は無い。第一、この街じゃあきっと、硬化一枚なんかじゃ何も買えないぞ」
「……お金って何なんです。私、分かりません……」
最後の最後まで何か救う手立てを考えていたそうだが、ついに八方ふさがりだと知ったのか、メグルは何も言わずに俺についてきた。
老人は疲れた笑顔をメグルに向けていたが、メグルは別れるのが辛そうだった。
そんなメグルを連れて行く際、老人が「迷わず連れていけ」という顔で俺に向かって頷いたのが、俺の心にも傷をつけた。
この街の実権を握っているらしい公爵という階級の貴族の男。
金髪ということは、洞窟付近で出会った旅商人の人と同じ人種なのだろう。
旅商人のおっさんはこの街に近づかない方がいいと言っていたが、この街の有様を作り上げているのが自分と同じ種族だと知ったら、一体、どう思うのだろうか。
宿を見つけるまで、メグルは酷く落ち込んだまま歩いていた。
下を向いたまま歩いているため、何度も街灯に頭をぶつけては立ち止まり、その脇に座っている人を見て泣きそうだった。
外界へ出て初めての街の光景がこんな悲惨な世界だったんだ。
悲しくなるのも無理はない。
けど、メグルは凄いな、と俺は思った。
何故なら、現実逃避をしないのだから。
普通がどうかはわからないが、俺だったらやっと掴めた夢があったとしても、それがゴミだとわかったらすぐに捨ててしまっているだろう。
仮に捨てなくとも、何処かへ放置しておくかもしれない。
だが、メグルはそれを良いものに作り変えようとしている。
そこで見た悲惨な光景から目を逸らさずに、助けを求めている人たちに救いの手を差し伸べようとしている。
救える力があるかどうかは別としてだ。
俺は、そんなメグルを支えるようにと親父さんに言われて、こうして旅に出た。
今回の出来事は、これでよかったのだろうか。
力が無いばかりに救えないという事実を突きつけて、メグルを失望させてしまったのだ。
俺は、間違ってなかっただろうか。
仮に間違っていたのだとしても、次に活かし、それで報われればいいのだろうか。
分からない……。
俺は間違ったことを言ったとは思っていないが、あれが最善の行動だったのかと考えると疑問を覚えてしまう。
世界の不条理さにも疑問を覚えてしまう。
やっては駄目だと知っているのに、間違っていると分かっているのに、それを認めてしまう世の中の矛盾に。
もしかしたら俺は、メグルのようにもっと真っ直ぐに生きるべきなのかもしれないな。
これからの自分を変えるためにも――。




