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スグルの異世界書紀  作者: 光 煌輝
第一章 異世界での目覚め
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~目次~

 おかしな文や伝わりにくい部分があると思うので、指摘してくれたら嬉しいかもです。

 対応しきれるか分かりませんが……。

 人生なんてつまらない。


 世の中には、「普通が一番!」なんて綺麗ごと混じりの負け惜しみを吐き、自分を誤魔化しながら生きている人間がたくさんいる。


 だが、俺は普通が一番だなんて思わない。


 あえて言おう。

 普通なんてくそ食らえだ。


 何も起きない毎日。

 俺は、こんな平凡でつまらない世界が嫌いなんだ。

 こんな世界において、平凡でつまらない色に染まって、のうのうと生きている自分も嫌いだ。


 それでも――。

 平和が壊れてしまえばいい。

 恐怖の大魔王が現れて、世界を暗黒で覆い尽くしてしまえばいい。

 そんなことを思っているわけじゃなかった。


 誰一人余すことなく、個々の個性が活かせるような、そんな世界になればいいのに、ということを空に思い浮かべて描いてみるだけだった。


 とはいえ、個々の個性を皆が活かしはじめたら、それこそ無個性である。

 そもそも、俺には個性という程の特出した技術・特技が無いということは、自身でも痛いほどに分かっていた。

 だからこそ、こんな日常でこんな平凡な人生を送っているのだが……。


 ともかく、自らがヒーローである世界を想うだけならば誰にでもできる。


 ……いや、世界の平和が壊れることを望んでいないのに、ヒーローになろうだなんて話もおかしいか。

 悪がいなければ、ヒーローの存在も成り立たない。


 それに、自分には想うだけで何かを変えることの出来る力が無いということは重々承知していた。

 知りたくなかったが、若干十七歳、高校二年生にでもなってしまえば、そんなことも社会の汚さも嫌でも目の当たりにしてしまう。


 だから、漫画やドラマ、映画、ラノベなんかの主人公に自分を見立てて空想してみては、現実の自分とのギャップを感じて憂鬱になったりする日々を幾度となく過ごしてきた。


 だが、一概に俺の個性が無いとも言い難かった。

 というのも、俺の両親は父が裁判官。母が小学校の校長という、何ともお堅い職業なのだ。

 裁判官と小学校校長などという組み合わせは、一体どこでどのようにすれば出会うことなどあるのか、そして惹かれあうようになったのか。

 二人の間に誕生した俺だが、甚だ疑問に思いながら生きてきた。


 ただ、そんな個性は俺自身の個性でもなんでもなく、むしろ、そんな特別な職に就いている両親を持って、自分がさらに没個性と化すような気がしてならなかった。


 さらには、裁判官と教師の間に生まれた子供なのだから、きっと頭の良い子に違いない。道徳を重んじて、物事を論理的に考える事の出来る素晴らしい思考の持ち主に違いない。

 末は博士か大臣か。

 幼少の頃からそんな高望みを聞いてきて、押し付けられ、単なるプレッシャーでしかなかった。


 そして今、そんな理想を期待されてきた俺は、たいしたことのない高校へと入学し、どうということのない生活の毎日を過ごしている。

 そんな毎日に、嫌気がさしている。


 もしかすると、俺が普通というものを嫌うようになったのは両親の存在が一番に影響しているかもしれない。

 エリートの両親に、見限られたような目で見られる毎日。

 それでも、心のどこかでは期待に応えたい。

 母さんの、父さんの喜ぶ姿が見たい。

 そんな気持ちを抱えているからこそ、平凡で普通な自分が嫌いになってしまったのだろう。


 それがいつしか、そんな俺が存在する世界自体が嫌いになってしまったと……。


「俺はこのままどうなるんだろう……」


 近くでも遠くでも、いつかの未来を予想して想像してみては、つまることのない先行きしか見えずに、やはり憂鬱になってみる。


 これまた、普通の男子高校生の住処としか言わざるを得ない変哲のない部屋で、俺は机に向かってぼうっとしていた。


 部屋に置いてあるのは、それが趣味なんだな、と分かる程度のゲーム数本。最近流行りの漫画やラノベが少々。

 オタクと呼ぶには、少し趣味が浅すぎるか。


 だが、それが俺らしさを表しているといっても過言ではなかった。


 そうだ。俺は何に対しても器用貧乏なのだ。

 器用貧乏という言葉が場合によっては――少しの可能性でも――褒め言葉であるとすれば、別の喩えをしよう。

 何でもそつなく、ある程度は可もなく不可もなくこなせるような体質、というべきなのだろうか。そのような素養の持ち主ということだ。


 そこは、賢い両親の遺伝に感謝といったところだったが、結局はその程度だった。

 悪く言うとなれば、何でも中途半端ということだからな。

 何をしようにも、一番を、てっぺんを取ることなど出来なかったんだ。


 ――それは努力をしなかったから。


 人は出来なかった者にそんな言葉を浴びせる。だが、その言葉は全て、事を成し得た者がそうでなかった者に吐いてきた言葉である。


 しかし、俺はそれを説得力のある言葉だとは思わなかった。成功者の言葉だからと考え、参考にしようなどとは決して思わなかった。むしろ、これから成功するはずだった者の未来を潰そうとする、忌むべき言葉だと思った。 それが、故意であるかどうかなんてことは関係ない。


 とにかく、俺はずっと思っていた。

 成功者の努力も、非成功者のそれと何ら変わらない、と。


 人は、成功した者は隠れて努力しているから、その努力している様が見えなくて当然だという。

 では、成功できなかった者は努力をしていなかったのか?

 成功者の言う様に、努力が足りなかったのだろうか?


 それは違うと思う。


 成功できなかった者こそ、努力を隠してきた。

 成功できた者は、もちろんそれが全てではないが、偶然かあるいはわざと自分の努力を周りに見せることによって、成功に至っている場合がある。

 この成功者は実はこんな努力をしていました。なんてものは、その人物を知らなかった人には新しく映るかもしれない。素晴らしく見えるかもしれない。

 だが、その成功者を成功者たらしめた人物はどうだろうか。


 たとえば、スポーツだ。

 野球にしろサッカーにしろ、スポーツはその人物が活躍する以前に、監督やコーチやらが選手の能力を見極めて試合に出す。決定権が選手にある場合は殆どない。

 その場合、努力を見られたもしくは見せつけた人物は、努力をしているからと試合に出させてもらうチャンスが増えるだろう。もちろん、その後の結果を残すか否かはその個人によるものだが、チャンスがもらえたかそうでなかったかで人生を左右された者はごまんといるはずだ。


 同じように努力してきたというのに、努力は隠れてするものだと言われてそうしてきたのに、その努力を上手く見えるところでした者がチャンスを貰えるというのはこの上ない不平等だと思う。まずは、全員を試合に出したところで各個人の能力を判断すべきだ。

 所詮、どんなに速い球を放ることが出来ても、一切試合に出なければ誰にも注目されないのだから。


 そんな風に考えていた。


 ……だが、俺はそれを口に出さない。

 結局は、自分がチャンスを貰ったところでそれをモノに出来るかと問われれば、二十%ぐらいの確率でしか「出来ます!」とは言えなかったからだ。

 むしろ、そんなに確率は高くないかも知れない……。


 つまるところ、才能の持ち主というものは、運を引き寄せる才能も持ち合わせてこその天才だということに行きついてしまった。

 そう考えでもしなければ、いくら頑張っても天才に成れない自分を誤魔化すことが出来なかったから。


 今日の学校生活でも何も起きはしなかった。

 テストの点数はクラス順位で真ん中あたりを彷徨い、女の子どころか男子とさえもあまり会話などしないで帰宅した。


 最近流行りのコミュ障というわけではない。

 つまらないのだ。

 誰と会話をしても、何をしても。


 俺はいつでも取り残されているように感じてしまうのだ。

 あるいは俺自身から離れて行っているのかも知れない。

 とにかく、自分だけが箱の中に入っているようなのだ。


「……」


 何か変化を求めて始めた毎日の日記には、紙を無駄にしているとしか思えない、日付だけを綴った空白のページが増えていくばかり。

 俺は、そろそろこの日記も止めようかと考えていた。

 毎晩毎晩開いてはみるものの、書くことなんてこれっぽっちもないのだ。

 誰もが体験しているようなことを書いたって、何も面白くないだろう?


 書けば変化が起きるのではない。

 変化に富んだ毎日を送っている者が、本来は書くものなのだ。

 日記というものはな。


 けど、最後なら最後ぐらい、この日記に何か書いて今日は眠りにつこう。

 そう考えた。

 だから書いてみた。


『十月十日、水曜日。この次のページには、何か素晴らしい出来事がかけますように』と。


 別に本気で願ってもいない事をつらつらと。


 日記を閉じると、俺はせめて楽しい夢でも見られることを祈って、

 部屋の明かりを消してベッドに潜るのだった。



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