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6/6

――ありがとう

これで最後です。(本当に6話で終わった……宣言通りに行って、ちょっとびっくり!)

そして大晦日です。少し?早いですが、あけましておめでとうございます。

新年、そしてそれ以降……皆様方にとって良き日々を過ごせますように、わずかながらに願っておきます。


さて……

たった1日を区切っただけの、2人の物語はいかがだったでしょうか?

そして、この終わりはいかがでしたでしょうか?

この物語では男は救われずに、ただ姉の愛を――真実を知っても変わらない、不変の愛を――感じて終わります。

それだけの愛を知ってなお変わらない男は、尊いのか悪いのか――。

……ただ言えるのは、この姉の存在がなければ男の心は疾うに擦り切れ、潰れていることでしょう。


読了後も、読者様方が、この短い物語からさまざまなことを得られたのなら本懐です。

 次に起きたのは、空が暗くなった後だった。

「……よ。ごは……きたよ。ごはん出来たよ」


「ん……姉さん、おはよう」


「おはよ。寝起きだけど、ごはん食べる?」

 ん、と短く返事をすると目蓋を擦りながら食卓についた。

 味噌汁とごはん、あとは海鮮系の焼いたもの。海の幸が香ばしく焼けた匂いが、男性の食欲をそそった。仮初めのような食欲を。


「……いただきます」

「いただきます」

 いつもの様に汁物からいただく。何故か、姉が注意深くそれを眺めていた。


 あるいは、本人はさりげなく見ているつもりなのかもしれないが、いつもとは明らかに様子が違う。


「どうかしたの?」

 味噌汁を半分、飲み下してから訊ねてみると「なんでもないよ」と返ってきた。


「…………」

 嘘だ。もう二十年以上も家族でいるのだから、何かがあることは分かってしまう。

「本当に、何でもないの」


 そういうと、彼女は味噌汁に手を付けた。

 弟から見て彼女らしくなく、本当に少しずつ飲んでいった。

 それで、何となく分かってしまった。あぁ、そうか。


 女性の持つ椀が震える。震えているのだ、彼女は。

 気付いてしまったのだ、男性の秘密に――味覚を失くしたことに。


 今年に入ってから何となく、ばれてきている気はしていた。でも、確かめられたことはなかった。


 それが今日、確かめられた――それだけだ。


「……っ」

 その夜、男性の枕は涙に濡れた。

 舐めてみたが、悲しみの味しかしなかった。


 翌朝、いつも通りの朝が訪れた。事実が明るみに出ただけで、姉は今日も料理を作っていた。届かない想いでの味を、その料理に込めて。


 想いでは遠く、遠くに離れてしまった。けれど、その味は今でも覚えている。


 今日もまた、二人の「いただきます」で今日が始まる。

 けれどその前に、やはり言いたいことがあった。


 いつものように言っていることだけれど、それでも、この気持ちが収まることはない。


 きっと、これを聞いた姉はまた、困った顔をするのだろうけれど――と思いながら、男性は柔らかく口を開いた。


「ありがとう、姉さん」


ここまで読んでくださってありがとうございました。

もしよろしければ、評価・感想等もよろしくお願いします。

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