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8、天使のお顔にドッキドキ

新しい人物が登場!


ちょっと長めです。





 どうも、皆さんこんにちは。魔物に殺されて悪霊になって勇者に使役されセクハラの被害を受けているレイと申します。


 死んでからもう半年ほど経ちました。


 死んでいったかつての夫候補の方々は今頃転生していることでしょう。彼らにはまたイケメンに産まれてほしいものです。世の女性たち代表で祈っておきます。死んでいますが。



 生きているころは、あまり娯楽というものがありませんでした。娯楽といえば刺繍をするか恋の話をするかぐらいでしたし、小さな村にとって大事なことは、農作業と子孫を残すことですからね。

 日々同じことの繰り返しです。


 死んでからは本当に色々ありました。

 勇者に使役されたり(呪)、勇者にセクハラされたり(殺)、魔物と闘ったり(喜)、村人に騙されたり(呪・済)、聖剣を手に入れたり(興味なし)……。


 本当に、今までの人生なんだったんだろう、ってくらい色々ありました。





 さて、私が何でこんな走馬灯のようなことをしているか、疑問に思いますか?



 ……思ってください。




 答えはですね――――。







 「勇者に取りつく悪霊め。天に召されよ!」






 命(存在)の危機だからですよ~~~~~っ!!












 ことの発端は数時間前。

 道端で転がっている人を見つけました。


 いや、勇者共々そのままスルーしましたとも。


 だって着ている服はものすごく綺麗でしたし、呼吸もちゃんとしていましたし、嘘寝してるのバレバレでしたし。なんか面倒臭そうな雰囲気しましたし。


 なので跨いで通ったのですが、「お待ちくださーい!!」と声をかけられてしまいましたよ。

 意外に幼い声だったので思わず振り向いちゃいました。勇者も、立ち止まった私に合わせ、止まってくれる。



 道端に転がっていた人は、美青年と言っていいほど容姿の整った人でした。

 あれですよ、物語に出てくる天使のような顔とは、と尋ねて十人中九人くらいはこいつだというくらい整った優しい顔のマスクでした。今は怒っていますが、それもまた美しく思えるのが天使面クオリティ。

 要するに、金髪碧眼可愛い顔立ちの美青年ということですよ。


 美青年が立ち上がってこちらへ近づいてきた。立ち上がったので分かったが、美青年は白い重そうな服を着ていた。これは、神殿の聖職者の恰好だった。


 「あなたは勇者様ですよね」


 普通分かるだろう。勇者のエンブレムは隠していないし、勇者はそもそも神殿が選ぶのだ。聖職者たるもの、知らないはずはない。


 「勇者様。あなたは勇者でありながらなぜ倒れている人を見捨てたのですか」


 どうやらこの美青年は勇者を試したらしい。


 「勇者たるもの、常に民衆を助けるのが役目でしょう!」


 しかも大きな勘違いをしている。


 たまにいるのだ。こういう勘違いする奴が。



 勇者は、勇者たるものはなんなのかを説く美青年の話を端から聞いていない。


 ……こういう極悪勇者もどうかと思うが、勘違いしている美青年も美青年だ。


 「――なので……。聞いているのですか、勇者様!」



 ……あぁ、駄目だ。イライラする――。



 私の怒りを感じ取った勇者は、片手で美青年の頬を掴み、美青年台無しのタコ口にした。


 「()ぬにすんねすか(なにすんですか)!」


 「勇者は民衆を助けるものではない」


 美青年の眉が寄せられ、怪訝な様子がうかがえる。


 「勇者は魔王を倒すもの。民衆を助けたいのなら、お前がやれ」


 「ぬっ!!??」


 過去の勇者がどんな人だったかは知らない。しかし、勇者にすべてを押し付けるのはどうかと思う。

 そもそも勇者は魔王を倒す旅に出ているのだ。役目を果たせと言うのなら、何故神殿は魔族を退治にし行かない。何故城は事前に魔王復活を予言していながら私の村を捨てた。



 過去のことはまだいい。ならば現在、城は、王は、神殿は、何をしている?

 魔王をたった一人の若い男に任せ、さらには人も任せようとしている。



 たった一人にすべてを背負わせ、自分は高見の見物をしている。それが、今の王なのだ。そのせいで、村は消えたのだ。



 「レイ」


 あぁ、行けない。悪霊はネガティブに考える癖があるので、この叫びは気にしないでほしい。時々こういう馬鹿に出会うと、どうしても考えが偏ってしまう。悪霊ですから、どんな小さな怨みでもパワーになっちゃうんですよ。



 興奮している私を抱き寄せ、腕に座らせる。勇者は美青年を放した手で優しく撫でてくる。いつもはすぐ離れる所だが、なんとなく安心してそのままにしておいた。




 なでなでなで……むにむに




 「っておい!」


 大きくのけ反り、バク転の要領で腕から抜け出す。


 「なにどさくさに紛れて胸揉んでんじゃい!呪うぞ!」


 ワキワキと両手を動かす勇者に、本気で呪いをかけようかと思っていると、



 「悪霊の気配!勇者様下がって!」



 と美青年が勇者を突き飛ばして私の方を向いた。その手に神殿の象徴である星が描かれたのペンダントが……



 「勇者に取りつく悪霊め。天に召されよ!」



 あ、死んだわ。










つづきます。


今日中にもう一話できたらいいです。

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