6、悪霊の祟りをなめんなよ!
遺跡に行って魔物退治……?
翌朝、勇者は案内を一人つけて森の遺跡へ向かった。
なるほど。力のある遺跡のようで、森まで何か力の影響を受けているらしく、自然の風ではないものが時々吹く。
案内の若者はそれにビクビクと怯えていたが、しっかりと遺跡まで案内してくれた。
うん。なかなか気丈な若者じゃないか。将来有望だな。
遺跡が見えると逃げるように去って行ったが、まぁそれもしょうがないだろう。魔力を持たない人間が魔族に勝てるなんて、滅多にないのだから。
それにぶっちゃけ足手まといだ。
遺跡の外見は、どこにでもある(といったらなんだが)大昔の建物と同じだ。しかし感じる。建物全体が、何か特殊なものであることを。
まさに、魔物が住みかに選びそうな建物だ。
「よし!行くぞ勇者!魔物退治じゃ!」
ふははははー……と飛び出したものの…………
……魔物がいない!!
遺跡の中に入って数十分。かなり奥に進んだのに、ネズミ一匹出てこない。
「おーい、魔物やーい。でてこーい」
意気込んでいただけあって、拍子抜けだ。
「何で魔物がいないの~っ!」
「……最初からいなかったとか」
「え?だって村に魔物が襲ったんでしょ?」
「ここの遺跡からだと断定できない」
確かに、村から遺跡までは距離があるし、森から出てきただけで遺跡から、とは言えないだろう。
「でも、村の男たちが返ってこないって」
「それは……」
その答えはすぐに分かった。
だだっ広い広間につくと、柱の陰から武器を持った男たちが現れたのだ。
「……これって、村の男たち?」
「それに、盗賊の一部も交じっているね。おそらく、結託して旅人を襲っていたんだろうな」
「おぉ!今日のカモは勇者様だそうで。なかなかいいモノを持っていそうだな」
勇者と名乗ったのは村以外にはない。つまり、村の誰かがこの遺跡に知らせたのだろう。村の男たちがいることから、村全体の仕業だ。
「……ちょっくら行ってくる」
「いってらっしゃい」
勇者の許可が出た!
契約したものの主人の許可があれば、距離を気にすることなく自由に行動できるのだ。
私は怒りのボルテージを上げながら森の上空を飛び、村へと向かった。
~後日談~
その日を境に、村では夜原因不明のポルターガイストに襲われ、人々の睡眠を妨害していた。
布団に入って縮こまれば、なぜか耳元で『うらめしや~』と聞こえるらしい。
勇者が去った後からこの現象が起こるようになったことから、村人は「勇者の祟りだ!」と叫び、旅人を襲うのをやめ、毎日勇者が去った方角に祈りを捧げているとか。
悪霊の祟りをなめんなよ!
~勇者のものに戻ると~
「……何、その剣」
「聖剣」
「どこで手に入れたの?」
「遺跡の奥にあった」
「……」
どうやら、聖剣イベントだったようです。
あっさり聖剣ゲット!
やったことといえば、村人祟っただけでした。
今回勇者、セクハラする暇がありませんでした。
実は勇者、魔物に夢中のレイにセクハラすると、本当に嫌われかけたことがあったので自重していたり……。