5、べ、別にあんたのためじゃないんだからね!
いつの間にかお気に入り100件。
1000ユニーク越えてたり、なろうのランキングにも入ってました。
び、びっくりしました!!
でも読んでくださった皆様、評価してくださった皆様。心より御礼申し上げます!!
これからもよろしくお願いします!
数日歩くと、小さな村につきました。
勇者が名乗ると、村の子どもが村長へ知らせに走り、私たち(正確には勇者だけ。私は見えないので)を村長の家へ連れて行きました。
家に着くと、腰が曲がった白髭のおじいさんが出迎えてくれました。
「おぉ、ようこそいらっしゃいました。勇者様」
村長は勇者の手を両手で握ると、勇者を家の中へ促した。
その時の私はというと、ふよふよと勇者から離れて空からその光景を見ていました。
上から見ていたので気づきました。
家の中から出てくるのはほとんど女性か子どもばかり。さて、男たちはどこへ行ったのでしょう。
その答えは、熱い歓迎の後に話があるのでしょうね。
「勇者様、折り入ってご相談したいことが……」
はい、来ました。
さっきまで大きな町に比べると質素ながら、貧困の町にしては豪華な食事をふるまわれていた勇者。あらかた食べ終わり、村長の手から酒を振る舞われていた時に切り出された。
私?私はまた勇者の膝に座らされていましたとも。メイド服で。
……えぇ、もう慣れました。それに、流石の勇者も見えない私にセクハラするのは、はたから見れば怪しげに手を動かしているようにしか見えないのを分かっているため、さっきから何もしてきません!
見えないって素晴らしい!
にしても、あざとい村長だこと。
明らかに困窮している村を見せられ、その後精一杯の豪華な食事を振る舞われたら、その相談したいことを断りずらいだろうに。
「どうか、私等をお助け願えないでしょうか」
そして断ったらこの村は壊滅しますとでも脅すんだろう。今この場に出したものが我々のすべてですとか言って。
なぜこんなに予測ができるかって?
今までにも同じような村がいくつもあったんですよ!
そのたびに「勇者様」「勇者様」って。自分達は頑張りました。でも命はかけたくありません。だから自分達のために何とかしてよ。勇者なんだから――――。
「ざっけんなこのクソじじい!厄介事は全部勇者に押し付けんな!少しは自分達でやれ!」
私の声は勇者以外には届かないが、忘れてはいけない。私は悪霊。攻撃できない代わりに威嚇スキルが高いのです!
「な、なんだか寒気が……」
あたりの明かりも心なしか暗くなっていく。それと共に冷気が発生する。
日々セクハラ勇者をあの手この手で威嚇してきた私の成長を見よ!
だが、これからという時に、腕をグイッと引っ張られた。この世に私(幽霊)に触ることが出来るのは、今のところ一人しかいない。
「ちょ、勇者!」
「嬉しいけど、抑えて」
私だけに聞こえるよう耳打ちされた言葉に、私は顔に熱が集まる感じがした。
要するに、「俺のために怒ってくれることは嬉しいが、ここは抑えてハニー」ということだろう!
「なっ、ばっ、ふざけっ……」
「いかがなされましたか、勇者様」
「いや。なんでもない。続けてくれ」
勇者は私の口を押え、村長の話を促した。
私がバシバシと腕を叩くと、ようやく力を緩めてくれた。
その間にも、村長の話は続く。
「実は、村の先にある森の中に、大昔からある遺跡があるのです」
あー、よくある話だ。そこに盗賊でも住み着いたんでしょう――。
「そこにどうやら魔物が住みだしたらしく、時々この村を襲ってくるのです」
「よし!行くぞ勇者!出陣じゃーっ!!」
勇者の溜息が聞こえたが無視。それよりも魔物だ。許すまじ魔物め。必ずこの手で滅ぼしてくれよう。
「村の若者が退治しいに行ったきり帰ってこないのじゃ。女子どもだけではこの先暮らしていけない。どうか、魔物を退治してください!」
その場にいる村人全員が地面に額をつけて勇者に懇願する。
勇者は、空中でどのようにして魔物を倒すかぶつぶつと呟いている私を見て溜息をつき、魔物退治を了承したのだった。
「あ、ありがとうございます!さぁ、今日はもう遅いです。どうか今日はお休みください」
勇者は頷き、村長の妻に部屋へと案内されていった。
それにふよふよとついて行きながら、私は明日が楽しみでしかたがなかった。
魔物め、積年の恨み、晴らしてくれる!
~おまけ~
「ちょ、なんで私が同じベッドで寝なきゃなんないのよ!」
「ん~」
「あっ……こ、こら!胸に顔を擦り付けるな!私は寝る必要はないんだぞ!」
「ZZZZ」
「寝るなーーーーーーっ!!」
遺跡の魔物退治はつづきます。