4、私は食べ物じゃありません!
旅は基本的徒歩です。馬を使ってもいいのですが、生憎馬のような敏感な動物は私を怖がるため、移動手段は徒歩に限定されます。
なので、馬で一日の距離を倍近くの時間をかけなければなりません。必然的に野宿です。
日も傾き、そろそろ野宿の準備をしなければなりません。
適当な場所に枯れ木を集め、火をともします。そして、少し離れた所に罠を仕掛けます。これは明日の朝食用の動物を獲るための罠で、夕食は乾燥させた肉などを食べます。
あ、もちろんそれらはすべて勇者のすることですが。
私はその様子を見ているだけです。
道具に触る事もできませんし、私がいれば、動物が逃げてしまいますから。
魔物には効きませんが、私がいれば少なくとも野生動物には襲われません。
暇なのでふよふよ浮いていましたが、どうやらこのあたりには仲間(幽霊)はいないようです。
それなら、野生動物が引っかかる確率は上がるでしょう。
罠を仕掛け終わるころにはあたりはすっかり暗くなりました。
勇者は非常食を食べています。
私はというと……。
「ちょっと、勇者!」
「ん?」
「下ろせ!」
「やだ」
胡坐をかいて座る勇者の膝の上です。
「この格好は何!?」
「メイド服」
「何で!?」
「ご奉仕」
「するか!!」
しかも服を変えられました。
契約で使役されている関係なので、私のイメージを自由に変えることが出来ます。普段は主導権を私に任せてくれるので、村娘の格好なのですが、時々服装を変えられます。
「ちょ、はなし……」
「ん」
勇者は、抱えている右手で食べ続けようとし、手が口元に近づくたびに抱えられている私の顔と勇者の顔が近くなります。
食べている様子がありありと見え、しかも食べたあと舌を出してペロリと舐めるしぐさを間近で見せられて……。
「赤い」
「!ち、ちがっ!赤くない!」
慌てて言い換えすも、勇者は笑って私を見ています。
からかわれたことが分かり、ますます顔に熱が集まってしまった。
「も、もう放してよ!食べ終わったでしょ!」
「まだ食べてない」
「は?もう食べたんじゃ」
「これから」
抗議する間もなく、私は唇を塞がれ、何も言えなくなってしまいました。
このあとは……ご想像にお任せします。
イベントじゃないときはこのくらいの長さですかね。
基本的にイチャイチャしてますから。この二人。