2、魔物に殺されました
どうも。私はレイと申します。
あ、これは勇者に名づけてもらいました。
と言いますのも、私悪霊なので、魔力のある勇者に使役されてしまったのです。
そもそも私がなぜ悪霊になったかといいますと、まぁ悪霊なので、この世に強い怨みを持って死んでしまったからですね。
えぇ。私、死んでいるんです。
私は森の中の小さな村の娘でした。花の十五歳で、結婚相手を誰にしようかとか考えていた年頃ですよ。
そしたらある日、村に魔物が襲ってきたのです。幽霊になってから教えてもらったのですが、近年魔物の被害がなかったそうです。しかし、お城にいる聖女なるお方が魔王が目覚めると予言したのですが、お城は信じられなくて魔王復活を国民に教えなかったそうです。
そしたら、私の村が襲われました。そう、私の村は犠牲第一号なのです。
その後大いに慌てたお城が急いで国民に魔王復活を知らせたそうな。同時に、勇者選別も行った。
そうして選ばれた勇者は魔王を倒せと理不尽にも一人で旅立たせ、勇者は最初の犠牲になった私の村に来ました。
私の村はとてもひどい状態でした。
家はすべて焼かれ、死体も残らず魔物のお腹に入りました。
私はと言えば、魔物に殺されたときかなりむかつきました。
だってもうすぐ収穫だったんですよ?
私が丹精込めて育てた食べ物たちがすべて魔物に燃やされたんですよ?
私の夫候補の方々も容赦なく殺されて、茫然としましたよ。
その光景を見ていたら思わず怒りが湧いてきて、近くの魔物をぶっ飛ばしましたよ。右手は折れたし、たいした攻撃にはなりませんでしたが。
悔しいじゃないですか。ただで死ぬのは。
だから、即席火薬作って魔物にお見舞いしてやりましたよ?
捨て身だったので足がなくなってしまいましたが。
狼の姿した魔物が私を喰らおうとしたので、動く左腕を伸ばして舌を引きちぎってやりましたよ?
左腕は喰いちぎられましたが。
もうほとんど意識は残っていませんでしたが、近くに黒ずくめの人が立った気がしたので伸ばした腕に噛みついてやりましたとも。
それが最後の意識でしたが。
それでも魔物に対する怨みつらみは収まりませんでしたよ。
最後の瞬間、「この怨み晴らさでおくべきか」と思ったのを最後に意識がなくなりました。
そして気づいたら、焼けた村をさまよっていました。
体はどうなったかわかりません。意識が戻った時魔物も死体もありませんでしかたら。
意識が戻った私は魔物に仕返しをしようと思ったのですが、所詮は幽霊でした。
拳が魔物の身体をすり抜けるし、人には見えないらしく襲われそうな人に注意をすることもできませんでした。
ただ、動物など勘のいい生き物には私のことが感覚で分かるらしいです。近づくと逃げていきます。
人間にも試してみましたが、ただ脅かすだけではだめでした。ただ、殺されたときの怨みをぶつぶつ言っていると何か感じるらしく、顔を青くして逃げていました。
まぁ、そんな感じでできることとできないことを確かめつつ、魔物の怨みを唱えふらふら空中をさまよっていたら、ある日、村を調査に来た勇者と会いました。
驚いたことに、勇者には私が見えるらしいのです!
あとから聞いた話ですが、魔力が強い人にはうっすらと見えるらしです。触れはしませんが。
……しかし、勇者は私に触れていますよね?
なぜでしょう??
ヒロインはレイと申します。
人間、死ぬ気になるととんでもないことができたりするものでしょうね。
体験したことはありませんが。