20、これからは遠回りで行くことにする
本編途中ですが、約束の十話めなので、勇者視点でお送りします。
今回は二人の出会い編です!
ちょっと長めですが、どうぞ!
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「ここが……村?」
森の中の小さな村だと言っていたが、村などどこにもない。
あるのは焼けて真っ黒に煤けた地面だけ。
家もない。骨もない。
動物も寄り付かない、死の土地に、ここはなってしまったらしい。
だが、月明かりが黒い土地を照らし、この土地を徐々にだが癒していくだろう。
太陽の光は清浄の力。月の光は癒しの力。
魔力を扱うものはそれら自然の力を借り、操っている。
他にも火や水なんかもあるが、今は別にいいだろう。
それにしても……。
何か手がかりがあると思っていなかったが、本当に何もないな……。
まぁ、この近くに魔王とやらが住んでるかもしれないから、ぶらぶらと歩いて探すか。
『…………――――』
「?」
何か声が聞こえる。
魔物か、それとも生き残りか。……いや、こんな状態で生き残りはないだろう。
なら……。
月に照らされた黒い土地を進むと、青白い光が見えてきた。
あれは――――。
彼女は真っ直ぐ、月を見上げていた。
若い娘だ。オレと同じくらいか、少し下だろう。
王都の流行りのひらひらした服ではなく、一般的な村娘の恰好をしていて、腰まである長い髪は、風がないのになびいていた。
そして彼女の全身は月の光と同じ色に包まれていた。
よく見ると、地面に足がついていない。
彼女は生きていない――――幽霊だ。
ここにいるということはこの村に住んでいた娘だったのだろう。
死んで、幽霊になったか。
だが彼女は今、月の光を浴びて癒されている。
しかも今日は満月。
満月は最高の癒しの力を発し、魔物でも弱い奴なら消滅するくらいの力を持っている。
ただの幽霊が満月の光を浴びたら、必ず昇天する。
彼女は、この世からいなくなる――――。
イ ヤ ダ
思わず駆け出していた。
分からない。何故こんなことをしているのか。
分からない―――――けど…………。
今にも消えてしまいそうな彼女に手を伸ばす――――。
「あんのくそ魔物め。今度こそこの拳でぶっ殺してやる。そしたら(自主規制)して(自主規制)して(自主規制)(自主規制)(自主規制)してやる。この怨み、晴らさでおくべきか……」
と、月に向かってブツブツそう言うのが聞こえた。
「ん?人間?いつの間に……」
彼女の瞳がこちらを向き、目が合う。
その瞬間理解した。
彼女が、魔物に怨みを持った悪霊だということ、そして『イヤダ』と思った、自分の心も――――。
「え、あ、あれ?も、もしかして私が見えてる、なんて……」
「あぁ」
「うわぅっ!!」
彼女は驚いて文字通り飛び上がった。
上からオレを見下ろす彼女は背後に見える月と同じ真ん丸の目をしていた。
「魔物を怨み悪霊になって幾数日。私が見える人物と会ったのは初めてです……」
「そうか」
彼女はオレが勇者だと聞いて色々聞いてきた。
今まで魔物を倒したことがあるか。
どんな魔物だったか。
魔物はどうやって倒したのか……。
ほとんど魔物についてだった。
だがただ一つ、村の外について質問があった。
外は今何色?
と――――。
「……君が望むなら見せよう」
「え?」
「外の色を」
黒以外の様々な色を見せてあげよう。そう、手を差し出したが、彼女はその手を不思議そうに見つめた。
「えー、私は幽霊だからさわれないよ?ほら……」
彼女の手が頬に近づき、そっと触れる。そして彼女が逃げないよう、その上から手をかさねた。
「え……」
彼女は突然のことに動揺して固まってしまった。オレはそれを利用して彼女を抱き寄せる。
「オレなら、外の世界を見せてあげられるよ」
彼女はハッと我に返ったようで、身をよじって腕から逃れる。
「な、な、な」
「一緒に行こう」
「……」
彼女は何か悩んでいるようだった。
よし。最期の詰みだ。
「オレと来たら魔物をバンバン倒せるよ?」
「のった」
彼女は単純だった。
ガシッと握手を交わし、オレはその手を引っ張り再び彼女を腕の中に抱える。
そして、彼女が再び暴れだす前に素早く契約の呪文を唱える。
『満月の下に契約を交わす。その魂、永遠にアルレイド・シルバーの魂と共にあることを』
魔力を口に寄せて、唖然としている彼女の唇を奪う。
繋がった口内からオレの魔力を与え、彼女と魂を結びつける。
「ん、ふ……」
さらに彼女と繋がるために舌を絡ませると、彼女から可愛い声が漏れた。
もっと、もっと聞きたい……。
「ん、あっ……ぅん、んんっ」
もうとっくに魔力の受け渡しは終わっていたが、それでも味わい続けた。
だが、彼女もやっとおかしい事に気付いたのか、胸をドンと叩いた。
もっと味わいたいが、とりあえず今日はこれくらいでいいだろう。
唇を放すと、彼女は慌てて飛び立ったが、その動きはフラフラとしていた。
「な、な、な」
ふむ。初心な反応から、キスは初めてなのだろう。
これは嬉しいことを知った。
オレの他にもこの唇を味わったやつがいるとしたら、地獄まで殺しにいっただろう。
青白い頬を真っ赤にした彼女を見上げ、頬を緩める。
「レイ」
「え?」
「君の名前はレイだ」
これが、オレの人生を変えた恋の始まりだ。
文句あるか。
王道っていっちゃあ、王道。
初対面でベロチューかましました。ここからセクハラが始まるのです。
ガンバ、レイ!
あと、サブタイトルの意味は、そのまんま。
レイとイチャイチャする時間を長く作るため、彼は遠回りで魔王退治にでるのです。(おいおい)




