19、何でも真似してはいけません!
助けますと言った手前、トントを追いかけるべきなのだが、勇者は穴を通れないことに気付いた。
「出てきてもらうのが一番だが……」
まぁ、十中八九出てこないだろうね。
「どこか大人の入れるところは?」
勇者が子ども達に尋ねると、子ども達はお互いに顔を見合わせて首を横に振った。
「それじゃぁ、どうしようもないんだけど……」
「……いっそ壊すか」
不吉な勇者の呟きは、幸い誰にも聞かれなかった。
うーん、どこかに入り口はないものか……。
中に入った時のことを思い出してみるものの――――。
「あっ、池。そういえば中に池があった!」
「池?」
勇者の言葉を聞きとったのか、子ども達はハッとした様子で顔を見合わせた。
「勇者様!岩の中には池があるんだ!」
「たぶん、川につながってるんだと思う」
「結構大きな穴だったから、もしかしたら大人が入れるかも!」
子ども達はそういうが、川から岩の中までどれくらい距離があるかわからない。一応勇者は人間なので、酸素がなければ溺れてしまう。
しかし、今はこれ以外の方法なないだろう。それこそ、岩を破壊しない限りは。
「川の穴はどこだ」
「こっち!」
「こっちにあるよ!」
子ども達は喜んで案内してくれた。岩から少し離れているらしく、暫く歩くとのこと。
「……勇者」
「……何?」
「っ、いいがけんは・な・せ!」
「やだ」
子どもか、こいつは!
引き戻されてからずっと放されない。
子ども達がいるっていうのに……。
「勇者様。さっきから何してるの?」
ほら聞かれた!
現在、勇者は右腕を私の腰に回し、左手を膝に巻きつけている状態。そして私は誰にも見えないので、ずっとそのまま固まっているとものすごく不自然なのだ。
なのに勇者はしれっと、さも自分が正しいかのように言い放つ。
「必要なことだ」
「ふーん。……そっか!」
ちょっと、何納得してるんだ、この子どもは!
恐らく、勇者は力を溜めてるんだ、とでも思ったのだろう!
その証拠に、同じような格好をする子どもがちらほら見える。
騙されてる!君たち騙されてるから!これはただセクハラされてるだけだから!
『コォォ~~ッ』とか言い出した子もいるし!
薄暗い月の夜。
緊張感のあるような無いような……そんな奇妙な光景が岩場で繰り広げられていた。
「何やってんの、彼ら」
「お前が言うな!!」




