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14、危機一髪!!








 再び雨が降り出してしまった。


 お店はすべて片づけられ、人々は慌てて家へと帰っていった。


 「あ~、全然見てないのに……」


 勇者と睨み合っていたせいでお店を見る暇もなかった。残念だが、雨が止まなければ賑わいのある市場はなかなか見れなさそうだ。


 「も~っ、何でこんな雨が降るの!?ミリアナさんの話では以前はそんなに降らない地域だったらしいのに!」


 天に向かって叫んでもしょうがないが、叫ばずにはいられない。


 霊は意思の塊。欲望には限りなく忠実なのだ。



 私は雨に濡れないが、勇者は濡れる。だから、宿に戻らなければならない。


 「はぁ……宿に戻ろう」


 「そうだね」


 返事をした勇者はどことなく嬉しそうだった。



 ……ハッ!そうだ。宿に戻ってはまた身の危険が……。



 私が気付いたのが分かったのか、勇者はニヤリと笑った。


 慌てて飛び去ろうとするものの一瞬遅く、がっしりと腕を掴まれてしまった。


 「くっ、は、離せ!」


 「やだ」


 勇者は一気に腕を引き寄せ、私を抱き込む。



 抵抗する私と離さない勇者。



 本日第二ラウンドの金が鳴り響いた。




 私は再びバク転の要領で抜け出そうと――。


 「させない」



 見切られた!



 飛び出していかないよう、頭の後ろを押さえられた。


 「くっ」


 こ、この体勢はやばい。

 左手は腰にがっちり絡みつき、右手は頭の後ろを押さえられている。

 そして必然的に、目の前には勇者の顔。



 や、やばい!



 「は、離せ!」


 「大丈夫。誰もいない」


 「だからそういう問題じゃ――あっ」


 しゃべるなというように、勇者が唇に噛みついてきた。

 硬い歯の感触に身体が固まり、その一瞬の隙をついて口の中に舌が入ってくる。


 「ちょっ、あ……んむ、んんっ」


 どんどん体の力が抜けてくる。


 薄目を開けて後悔した。


 私は雨にあたらないが、勇者には降り注ぎ、いつも無造作に伸ばされた赤毛の髪が肌に張り付いて…………。


 一言で言おう。



 エロい。



 しかも、熱の籠った緑色の瞳が閉じる事なく私を見つめていて、は目を閉じることができなくなってしまった。



 本当にやばい。



 今往来には誰もいない。



 私と勇者だけ。



 このままでは流される。



 誰か…………。






 ドンッ


 パシャ



 「?」


 「!?今!」


 勇者の手が緩んだ隙をつき、手を振りほどいて空へ逃れる。

 勇者は名残惜しそうに私を見上げた。そして、自分にぶつかってきた奴を睨みつける。

 おいおい、勇者が市民を睨みつけるとか……。まぁいいか。



 っていうか危なかった!


 雰囲気に流されかけた……。



 「ひっ!」


 ずいぶんと幼い悲鳴がした。近づいて見ると、四・五歳くらいの男の子が雨に濡れた地面に尻もちをつき、睨む勇者に怯えていた。


 「ちょっと勇者!流石に子どもを睨むのは大人げないでしょ」


 男の子の前に立ちはだかって言うと、勇者は睨むのをやめてくれた。

 勇者の睨みから解放された男の子は、脱兎のごとく逃げ去って行った。


 「あれ?」


 何故か、その後ろ姿に違和感を覚えた。

 いや、違和感というより、これは……。


 「勇者……。確認してほしいんだけど」


 「ん?」


 「財布、ある?」


 勇者は一瞬沈黙したあと、体をあちこち触り――――。


 「ない」


 「平然と言うな!」


 そして勇者のくせに財布盗られるな!



 「あんのガキ!とっ捕まえてやる!」













降りしきる雨――誰もいない町――二人っきりの男女――――


ロマンチック……かな?

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