13、祖父母は孫思いなんです
デート(?)です。
結果的に言うと、晴れた。
灰色の雲にゴロゴロと雷の音が聞こえてくるので、晴れたというより、雨が止んだというべきだろうが、今は雨が降ってないのだ!
ミリアナさんから、今日は久しぶりに店が開いてることを聞いたので、さっそく町へと繰り出しました。……勇者付きですが。
久しぶりに雨が止んだということで、町の中も忙しなく人が行き来し、どこもかしこも人で溢れていました。
人ごみに紛れないため、私は勇者の背後霊(比喩でも例えでもなく、真実に)になって背中に張り付き、勇者の肩口から町を見ています。
別に触れもしなければ見もできない人に気を使っても仕方がないのですが、なんとなく嫌じゃないか。人が私の身体を通り抜けていくなんて。
私は勇者の両肩に手を置き、身を乗り出して頭上から町を見下ろしました。
「すごい、すごーい!人いっぱい!」
故郷の村を出てから月日は過ぎましたが、これまで大きく人の溢れる町は生まれて初めて見ました!
キョロキョロとあたりを見回していると、勇者にクスリと笑われた。
「な、何がおかしいの?」
「いや……」
勇者が上を向き、覗き込もうとしていた私とばっちり目があう。
固まった私を見た勇者は、目を細め、笑った。
「可愛いな」
目が……離せませんでした。
べ、別に見惚れてたわけじゃないですよ!
ただ、言葉の意味を理解するのに時間がかかり、その間固まって動けなくなっていただけです。
ま、まぁ、その間見つめ合っていた状況だったのですが、この込み合った中立ち止まっている人ほど邪魔なものはありませんから、案の定人にぶつかりました。
その衝撃で我に返った私は、すぐさま限界まで空へ逃げました。
な、な、何を言ってるんだあいつは!っていうか何て顔するんだあいつは!
あの表情とエロボイスと言葉は非常に卑怯だと思います!!
かかかかかかかかわ、かわいいとか、む、村で言われ慣れてるんだからな!(おじいちゃんおばあちゃんに)
空の上でブツブツ言っていると、グンッと体が引かれた。
あ、まずい。これは……。
ものすごい速さで地上へ引っ張られた私は、次の瞬間温かな腕に包まれていた。
顔を上げると、イタズラが成功したような顔。
「なっ……ま、またお前はこんな手で捕まえるなんて、ひ、卑怯だ!」
「レイが逃げるから。それに、人ごみの中で立ち止まれない」
うっ、そ、それは正論……。
何も言えない私に、勇者は抱えるようにして回した手で頬を撫でた。
見ると、真剣な表情とギラリと光る瞳。
先程とは違う勇者に、なぜか顔の熱が集まる。そしてまた、目が離せなくなってしまった。
そして、勇者の顔が近くなる――。
何をしようとしているか分かっていた。何回かされたことはあるし、慣れたもの――――
「……って、んなわけあるかーーーーい!!」
こんな往来でされてたまるか!
以前にも使ったバク転の要領で勇者の拘束から抜け出し、空へと逃げる。今度は限界まで距離を持たせ、なおかつ勇者に捕まらない距離をとった。
「みんな見えないよ」
「そういう問題じゃない!」
むしろ見えていないことで、注目されていることに気付け!はたから見たら今の行動も変な動きをしている変人にしか見えないんだぞ!
じりじり離れる私と、人を避けて近づく勇者との攻防は、再び雨が降り出すまで続いた。




