ここ何処ですか!?
私は片岡美優28歳。大学卒業後、秘書としてとある企業で働き始め6年目。
友達は結婚して子供を生んだ子もいる。そうなると必然的に親からは「あんたはいつ結婚するの?」「孫はいつ抱っこ出来ることやら」などとお小言攻撃が始まった。
一度「相手がいない」などと失言で反論したら、親戚中を巻き込んだ見合い攻撃に変更された。
攻撃回避のため、実家には長期休暇以外近寄らなくなったのは致し方ないことだと思います。
そんなある日の朝。
秘書として担当している重役の部屋から秘書室に向かっていた。
私としてことが秘書室長に提出するスケジュール表のコピーを持って間違えて持ってきてしまった。
重役が出勤する30分前。その間にやっておかなければならないことが山ほどあるのに。
5分前に通った会社の廊下を、早歩きで戻る。
あの廊下の角を曲がると秘書室だ。
角を曲がる瞬間、雷が光ったように廊下が光り、踏み出した先に地面がなくなった浮遊感に包まれた。
光にビックリして目をつむったが、それらも一瞬の事だったようで、目をつむっていても光が遠退いたのを感じて恐る恐る薄っすらと目をあける。
「えっ!?」
視界いっぱいに広がった景色に驚いた。
さっきまで歩いていた薄暗い無機質な会社の廊下ではなく、壁には大きく窓が設けられ外の明かりをふんだんに取り入れられ、床には歩くたびに足がとられそうなほどフカフカな絨毯が見渡す限りに敷き詰められていた。廊下のところどころには花が飾られ、より一層華やかさを放っている。おまけに窓の外には鬱蒼とした木々が生い茂っている。
…会社じゃない!?
どこを見渡しても殺風景な見慣れた会社の廊下ではない。
さっきまで廊下にいたよね!?白昼夢??頭でも打った?
頭を確かめるが痛い所もタンコブもできていない。
手にはさっきまで持っていたスケジュール表のコピーを持ったままだ。
その場でウロウロ。周りをキョロキョロ。
はっきり言ってかなりの不審者っぷりだろうが、今の私はそれどころではない。
現状の把握が出来なくてパニックだ。
「とっとりあえず、スケジュール表届けないと。」
私の現状を知った人間なら「それどころじゃないだろ!」と突っ込みを入れられるだろう。
が、私もパニック状態だ。冷静に判断できないらしい。
とりあえず、前方の廊下に見える曲がり角を曲がれば秘書室に着くはず。と根拠のない思いに駆られ、歩き出した。数歩も歩かないうちに曲がり角の方から複数の絨毯が擦れる衣擦れのような音と足音のような音が聞こえてきた。
(助かった!誰かいる!)
誰かいるなら現状を説明してくれるはず。急いで角を曲がると絶句した。
そこにいたのは腰に剣を携え、騎士のような格好をした男性が数人。
メイドのような格好をした女性が2人。
その中央にはウェーブのかかった長い金髪を揺らし、レースや装飾があしらわれた淡いピンクのドレスを着た少女。
(仮装大会!?)
そこで考えることをやめた思考回路は遮断され、処理能力の超えた私の意識はフェードアウトした。