█に照らされた道
全知全能の存在とは宇宙の全てを用いて生まれる。
「不確定性原理」と「決定論」の先にあるこの█を生み出す為の事実をしかし、
名も無き少女は気にしていなかった。
少女は戦争から生まれた。
死んだ母体の乳を啜り、死肉を糧として生きて来た。
当然そんな少女に嫌悪を抱く者は少なからず存在した。
けれど少女にとっては自身の「平和」を守れればそれでよかった。
その為には人を殺したし、
見知らぬ男に股を開いた。
嫌悪を感じる情すら育たない彼女はそれら行為に何の意味も求めなかった。
それを悲劇と嘆く者、喜劇と嘲笑う者、
数多い傍観者が彼女を観測し、定義しようとした。
しかしそれら全てを跳ねのけて彼女は生きて来た。
そうしていつも通り男に股を開き金を得た夜、
自身の見つけた友情の意味する、けれど血に塗れた花を元に自身に名を付けた。
フリージアと
□
その夜、フリージアは目を覚ました。
昔の夢を見ていた気がする・・そんな思い出せもしない夢について思いを馳せながら
けれどフリージアは体を起こす。
沈みかけの上弦の月のような赤い瞳を持つ、黒髪の彼女はしかし、起きると同時に寒さを覚えていた。
当然だ、彼女は全裸で布団にくるまっていたのだ。
自身がいくらこの部屋に住み慣れたと言っても防寒をしなければ限界はある。
フリージアは研究者に成っていた。
戦火絶えない異郷の地で生まれた彼女をある男が研究員にと取り立てたのだ。
ピロートークに聞かされた言葉から新たな理論をいくつも生み出した彼女を、
その功績からWPRIの研究員に推挙したのだと覚えていたフリージアである。
世界平和研究機構(通称World Peace Research Institute)と言われるこの胡散臭い組織にフリージアは身を置いていたのだ。
環境故に半ば娼婦の真似事をし、時には人すら殺していた彼女の後ろ暗い過去を指さして
この場所に相応しくないという者も居たが、
けれどその全ては彼女の凄まじい頭の回転と研究結果を見てその評価を改める事になったようだ。
「・・・・・」
沈黙の内に、シャワールームに入りレバーを引く。
冷たい水を浴びながらけれどフリージアは考える。
情報の泡理論について
情報の泡理論とは真空崩壊した後の世界に出来る真の真空の操作を表す言葉である。
フリージアの提唱したその言葉を枕言葉にしかし、この理論は飛躍する。
彼女はその真空崩壊した後の世界に、
物理法則の書き変わった新しい世界に、
事前に「情報の種」という情報の塊を入れる事によって自身の思うが儘の物理法則を構築させ、
人類の手によって制御された世界を創ろうという理論を提唱したのだ。
その荒唐無稽で、非現実的な論理はしかしこの世界においてはある種の日の目を見ていた。
霊子という物質が見つかったのだ。
その魂を構築する物質は合わされば魔素という物質となる。
「意思」によって増減するその物質を、
加工しその根源たる情報子という物質。
それを「情報の種」へとする計画がフリージア主導の元、
WPRIの研究室によって作られていたのだ。
量子コンピューターに似た形をしたそれをついに作りだしたのである。
霊子コンピューターと名付けれらたそれは、殆ど完成していた。
今日はその初号機の実験日であるのだ。
だからこそ、フリージアはいつも通り全裸で布団にくるまり、そして起きた。
いつもと同じ行動を心掛ける為にである。
「緊張しているんですね、存外に。」
冷えたシャワーを浴びながらもフリージアの口からそんな言葉が漏れた。
フリージアは戦争によって生まれ、その影で生きて来た。
金の為に男に股を開くのも日常茶飯事だったし、
自身の思う「平和」を守る為に人を殺す事が日常だった。
倫理観は無いのか・・と何度も男女問わず詰問された事のあるフリージアである。
けれど毎回フリージアはこう答えていた。
「それは「平和」の為に成りますか。」と一見意味不明にも思える言葉をけれど、
しっかりとした疑念を以て問うたのだ。
まるでそれに役立たなければ意味が無いと言わんばかりに
けれど、ここ数年フリージアは変わった。
金の為に男と交わる事も無くなったし、
人を殺して自身の思う「平和」を確固たる物にしたいとも余り思わなくなっていた。
彼女の心にあるのは「情報の泡理論」の証明への渇望と、
█という存在との対話に対する期待と
全知全能への希望そのものである。
彼女は焦がれていたのだ、█という全知全能の存在が「情報の泡に宿る」という事実に、
自身の思い描く「平和」を重ね、けれど確かな期待と希望を持っていたのである。
だからこそ、フリージアはレバーを引きシャワーから降り注ぐ水を止める。
扉を開けて、体を拭きバスタオルを胸に留めてこう言った。
「さあ、始めましょう平和の為の「計画」を。」
そう、「神」のように笑んでこう言った。
□
フリージアの計画とは単純に言ってしまえば自身が█となる為の計画である。
全知全能への道標である「情報の種計画」というそれはしかし、三段階に分けられる。
まず一段階目、準備
して二段階目、実験
そして三段回目、挑戦
という順序で進められるのだ。
光の種を内に秘めた霊子コンピューターを作りだした時から在ったこの計画は、
既に二段階目の実験を突破していた。
最初で最後の実験だとこの初号機の実験についてフリージアは考えていたのだ。
「今日でこの実験漬けの日々も終わりか、ここまで随分と長かったなシア。」
「・・・・・・ええ、そうですね。」と肩を組んでくる男をけれど見てフリージアは目を細めた。
自身を「シア」とあだ名で呼ぶ彼はしかし、フリージアの幼馴染である。
ルシファー・エフェソスその人だった。
彼が七大貴族としてあの戦争を主導した父親を見限った日の夜に、
スラムを訪れた彼自身とフリージアは出会ったのだという。
最もWPRIの研究員と「情熱的な一夜」を過ごしていた彼女を、
何の気紛れか買い取る形でこの研究室に寄越したのがルシファーなのだ。
「その時にお前の言葉を聞いて思ったんだ、お前をそこに置いておくのは勿体ない・・ってな。」
「喘ぎ声の間違いでしょう、貴方が聞いたのは
私が快楽に堕ち、
かつ体全体を使って研究員に跨って、奉仕する淫猥で猥雑な姿を見た筈です。
それともあの時見た私の乳首の色が忘れられませんか?
この国にある桜と同じ色ですよ、覚えておいて下さいね。」
そうルシファーの組まれた肩を自身の肩からどかし、
腕を組んでフリージアは言った。
それに周囲のWPRIの研究員は反応しない。
WPRIの研究員達も最初は戸惑った物だった。
唐突に研究所所長になったフリージアという所長が自身達を集めた男を詰りながらも、
誘惑しているように思えたのだ。
悶々と眠れない夜を過ごした研究員達の何と多い事か。
けれど、それを抜きにして考えればフリージア所長の手腕と頭脳は絶大だった。
一日で研究所で成果を出し、
営業利益を四割程回復させてしまうなど、
研究所にとっても、研究員にとっても必要な所長であったのだ。
女性研究員からの反発は未だ存在する者のけれど、
それでも彼女に付いて行くしか道はないと研究員たちは腹を括っていた。
例え、先のような筆舌に尽くしがたい淫猥な会話が聞こえたとて全力で無視する覚悟が、既に研究員の中で決まっていたのだ。
けれど、そんな様子を気にもせずフリージアは言葉を続ける。
「私の言葉では無く、
喘ぎ声が忘れられないというのなら・・良いでしょう。
この実験を中止し、私の寝室に来てください。
「情熱的な一夜」を共に過ごしましょう。」
「・・・魅力的な提案だが、断らせて貰おう。」
「何故、それともハードなプレイをお求めですか?」
「今日は実験があるだろう。最初にして最後の初号機の実験が。
七大貴族も皆もこの時の為に死ぬ程準備してきたんだ。
何とかしてくれよ、所長。」
「下らない答えですね。」組んだ腕を解いてけれど、フリージアはそう言った。
フリージアとて分かっている。
こんな重要な日にこんなふざけた冗談を言っていては研究員の士気にも関わると。
人並みに緊張するようになった彼女にとって、
今日の実験はとても重要な事柄である事に変わりはなかったのだ。
だからこそ、フリージアはこう言った。
「実験を始めなさい。「情報の種」計画の証明開始です。」
そう言えば・・けれど大きい筒状のそれに刻まれた紋様が中に入った情報子によって光り出す、
霊子コンピューターとして情報の種の証明を開始した。
そう、「神」のような笑みを浮かべる
フリージアの計画通りに
□
実験は順調に進んでいた。
一段階目、情報の種の生成と演算準備
二段階目、情報の泡の疑似生成実験
三段回目、█への挑戦
という三つの段階を着実に踏んでいたのだ、無理もない。
けれど、だからこそ計画の二段階目、
情報の泡の疑似生成実験についてはこれまで苦労していたフリージアである。
けれどそれも一週間前に自身の部下の力も借りつつ生成してのけたフリージアである。
だからこそ、この三段階目への挑戦には何の問題も起こる筈は無かった。
当然だ、
今日の「情報の種計画」の証明への前段階を実証し、証明しているのだ。
既に机上の空論は、地に足の付いた論理に成り上がった筈だった。
実際上手くは言っていた
第二段階、情報の泡の疑似生成実験に移るまでは・・
「霊子コンピューター内の霊子濃度増大、情報の泡の疑似生成・・出来ません。」
・・そんな言葉が皮切りだった。
「霊子コンピューター内の霊子洗浄機能を開放。
霊子濃度110%、120%、125%!
予想以上です!!
濃度が濃くなりすぎています。」
「これ以上は研究所が霊子汚染に晒される可能性もあるな、フリージア!
実験は中止だ!!
今すぐに情報の泡の疑似生成を止めさせろ!!!」
「それは出来ないです。ルシファー」
「どうして?俺とお前の仲でも理由を言わなければ痛い目を見ないといけないぞ!」
「霊子コンピューター内部の霊子濃度が予想を上回っています。
この濃度では情報の種の生成はおろか、情報の泡の疑似生成すらままならないでしょう。
先に情報の種を構築する作戦を取り、
その元手である霊子を利用する為に霊子濃度を高めたこちらのミスです。」
「つまり、どういう事だシア。」
疑念に満ちているであろうルシファーの言葉を聞いてけれどフリージアは溜息を吐き出す。
どうしてこうなったのか、
答えは分からない。
自身が慾を掻いたのかと考えかけたが
それも恐らく修正の範囲内だ、
今の状態に成る理由には、けれど想い至らない。
ならば、どうしてこうなったのか・・・考えけれど思い出す。
ルシファーの前で気にせず私を抱いたあの研究員。
あの男はどこに行ったのか・・と
自身が研究所の所長に成る切っ掛けを作り、
これまでフリージア自身を支えた男についてけれど、想い至ったのだ。
そうして理解する、
「全てあの男の策略だ。」・・と
あの男は言っていた、
「君の最も嫌う方法と時に君に死を送ろう。」と行為の終わった汗と体液塗れのフリージアの頬を撫ぜながら、そう言ったのだ。
当時は、「何を言っているんだ、こいつは。」と相手にもしなかった言葉だが、
けれどその「時」が「今」なのだと思い至ったフリージアである。
だからこそ、白衣を脱げばルシファーに預けてこう言った。
「必ず、戻る。それまでここを持たせてくれ。」
そんな言葉を吐いてフリージアは研究員、ヨセフの下に向かった。
背後に頼もしいルシファーと研究員の声を聞きながら
「神」のような笑みを浮かべて
□
ヨセフを見つけるのは早かった。
研究員の一室、一番奥のヨセフの部屋である。
ヨセフはいつもたばこを吹かして、フリージアを抱いた。
その情熱的な一夜の内に、
けれど何度も貫かれながら達してしまったのをフリージアは自身の体で覚えている。
その壮絶な性行為の相手を見つけるのはけれどフリージアには容易かった。
服の匂いである。
そのたばこの匂いを消す為に消臭剤を被りました、と言わんばかりの無臭を辿って行けばよかっただけなのだ。
過去、フリージアを抱く時と殆ど変わらないその匂いを、
戦争の影で生きて来たが故の嗅覚で持って追う。
して、見つけたのは虚ろな目に総白髪の老躯の姿だった。
どうにも自身が知っている白髪の混じった壮年の姿と違うな・・と考えかけ気付く。
その煙草の山で出来た灰皿を机に置いて、それを背に振り返った男の目には覚えが在ったのだ。
それは「全てに絶望した目」かつてフリージア自身が引っ下げていたそれであった。
ヨセフが自身の体に影響が出る程に煙草を噴かし、かつ絶望しているのが理解出来たのだ。
「何をしてるのです、ヨセフさん。仕事の時間ですよ。」
「シア嬢か、久しぶりって程でもねえな。
あー待て待て、話があるんだろう。
その沈みかけの上弦の月の瞳はいつも正直だ。」
「であれば質問を一つ。」と言ってフリージアは切り出した。
シア嬢と馴れ馴れしく呼ばれる事についてけれど、フリージアはどうとも思わない。
フリージアにとってはヨセフなどどうという事も無い。
ただの後見人だからだ。
それも激しく抱かせただけの関係に過ぎない。
愛を囁いた事も無ければ、
口付けすら業務上でしか、交わしたことのない相手だ。
あまり客に情が移るという事がフリージアには起こっていなかったのだ。
フリージアはそういう人間である。
自身の「平和」にあ仇なす者はその悉くをへし折るが、
関係が無い物は性行為の相手であろうと名前すら憶えない。
そういう人なのだとヨセフは知っていた。
だからこそ、当たり前のように言葉を吐く。
「霊子コンピューターに霊子を大量にぶち込んだのは俺だ。
少しだけ、暇でな。
「情報の種計画」が始まれば世界は滅んで、
あんたが全知全能の█に、神に等しい存在になる。
それを全員に周知させた上で「計画」を進めるなんざ正気には思わなかった。
実際多くの研究員が辞め、WPRIに刺客を送る敵になった。
皆不安だったのさ、
戦争から生まれたあんたがどう「平和」を定義し█の力を振るうのか。
けれどあんたは刺客とその元凶達を自分の手で始末する度にこう言ったな。
「人類の未来の為」だと」
「それは本気なんだろう、目を見れば分かる。
あんたは俺達だけには決して嘘を吐かなかったからな。
なればこそ答えてくれ。」
「あんたは俺を恨んでいないのか、あんたを買ったこの俺を」
「・・・・・・」という沈黙が部屋を支配した。
元来この部屋には空調が完備されているにも関わらず、どうしてか背を冷や汗が伝う。
この時、フリージアには二つの想いが在った。
ヨセフを恨む気持ち・・では無い。
感謝の気持ちと最後の謝意が一つだけあったのだ。
けれど、だからこそフリージアは刃物を胸ポケットから取り出してこう言った。
「恨んでないよ、だって貴方は私の「平和」への「計画」の礎になるんだから。」
そんな言葉と共にナイフをヨセフの胸に刺した。
「ううっ」という声と共に灰皿を掴み、けれど床に溢してしまったヨセフである。
何故ならヨセフは見たのだ、フリージアの瞳を
その「神」のように笑んだ瞳を見て
けれど、どうしてか安堵したヨセフである。
だからこそ、フリージアはこう言った
「さようなら、お父さん。」
そんな言葉と共に返り血に塗れた手でドアを閉じた。
□
血塗れの黒いタートルネックの服を着て、けれどフリージアは帰って来た。
ボトムスまで赤い返り血が付いていたのだ。
恐らくは彼女の実の父親であり、後見人のヨセフの
けれどそれを見て驚く者は居なかった。
当然である研究員達は今、
霊子濃度を下げるあらゆる方法を模索して、実行している最中だった。
例え、█となる為にフリージアに利用されていると理解していても誰一人として、持ち場を離れなかったのである。
「人類の未来の為に」WPRIの研究員全員が一丸となった証拠である。
そんなある種気狂いになったような様相を見た血塗れのフリージアを、
けれど気にせずにルシファーは言った。
「白衣を着ろ。実験を再開する。
俺達全員がお前の為に命も何もかも投げ出す覚悟なんだ。
分かったら最後まで付き合わせろ。」
「・・・・・・・」
そう言って白衣を差し出すルシファーの言葉に、思わず目を見開いて驚いたフリージアである。
当然だ、
フリージアからして見れば先程殺した自身の父親と変わらない
金で繋がっただけの関係なのだと考えていたのだ。
ただ自身の「計画」を全て話しただけの
けれど、研究員達はこう言った。
「俺達は「仲間」でしょう。最後まで付き合います。」
「そうですよ。
正直所長には色々と思う所は在りますが、俺達に計画の全てを話してくれたんだ。
最後まで御供するつもりです。」
「それともこの信頼に答えられないのか、”フリージア”」
最後の言葉を吐いたルシファーの目を見て、けれどフリージアは思った。
何て綺麗なのだろうと、
戦争から生まれた彼女は自身の思う「平和」を信念に行動してきた。
その結果、実の父親に股を開こうと、
その結果、人や刺客を研究員達の前で殺し嫌われるような事があろうと、
全ては自身の産み出した結果として受け入れる気だったのだ。
けれど、それを知ってか知らずか研究員達はこう言った。
「それを、俺にも背負わせて下さい。」と
だからこそ、「神」のように笑んだ後、人のように笑んでフリージアはこう言った。
「皆、退避していて下さい。意味は無いかも知れないけど最後の時を皆で過ごして欲しい。」
「私は私の責務を遂行する。」という言葉を研究員達に言ったのだ。
その言葉に反対する者は多かった。
というか殆どの者が反対した、
七大貴族の一つ、傲慢の一族の当主でもあるルシファーもである。
世界の将来を背負うような彼すら彼女の言葉に異を唱えた。
けれど皆は理解していた。
この程度の言葉でフリージアが止まらない事を
止まってはいけないと考えている事をここに居る全ての研究員と一人の当主が理解していた。
だからこそ、不満を述べたあとルシファーは血塗れの彼女に白衣を押し付けたあとこう言った。
「任せろ。全てはお前に任せる。全ては「人類の未来の為に」」
そんな言葉と共に実験場を後にした皆を見てけれどフリージアは背を向ける、
そうして白衣を羽織って、着込みこう言った。
「神」のように笑んで
「任せろ。」
とただそう言った。
■
最後の段階、█への挑戦はしかしそもそもが存在証明から行う必要のある者だった。
宇宙の全てを捧げて産声を上げるそれは、正しく「全知全能」の祖たる存在であり、
「不確定性原理」と「決定論」の先にある全知全能足り得る存在そのものであった。
圧倒的な存在に挑戦するにはどうすればいいか、
けれどフリージアは理解していた。
自身そのものが全知全能を超え、█の力を吸収する必要があると考えたのだ。
その為にフリージアはあらゆる準備をした。
情報の泡理論や、情報の種などはその計画のマスターピースである。
けれどだからこそ、フリージアは知っていた。
これから行う情報の泡の強制的な疑似生成には人間の肉体が一つ必要であるという事を、フリージアは理解していたこの場に残ったのだ。
そう、自身が「情報の種」を宿し光の泡を生み出す「器」となる為に
最初は皆に止められたそれも皆を巻き込むという形にすれば、けれど同意が取れた。
その理由についてけれど今まで思い浮かばなかったフリージアである・・がけれど今、思い至った。
仲間達の自身の身をも顧みない献身を初めて理解したフリージアなのだ
けれど、だからこそ霊子コンピューターの霊子除去処置を限界まで行われた
その光る紋様を持つ筒型の装置の中に、
通じるボタンを持って後ろを振り返ればフリージアは言った。
「「人類の未来の為」に「平和」が成された。
これからは█の時代じゃない人類の時代だ。
・・・・それが成せた暁には皆、また地獄で会おうね。」
そんな言葉と共にボタンを押せば霊子コンピューターの中に詰まった冷気が体を通り抜ける。
沈みかけの上弦の月のような瞳を前に向いていれば、けれどその奥、情報子によって発せられた光が見えた。
その光に手を伸ばせば・・・
フリージアは光に包まれ、
体が素粒子単位で引き裂かれた。
そうして研究員の体を引き裂き、研究所を呑み込み情報の泡は広がっていく。
空間を曲げ光の速度をも超えたそれは瞬く間に地球を、
太陽系を呑み込み、
天の川銀河をも飲み込んだ.。
そうして数多の星々が飲み込まれ、銀河を潰えた世界の中心を
一人の少女の体を中心に時間が、空間が、情報が宇宙だった空間を飛び交っていく。
その白い光に包まれた沈みかけの上弦の月のような金色の瞳を持つ、白髪の少女が目を開き、
閉じれば・・
けれど情報の泡その物となり情報の種を手に持って、
情報子によって光を発する少女の前に、█としか呼べない存在があるのを理解した。
して█に手を伸ばし、掴んで「神」のように笑む。
そうして█を呑み込めば・・・
原初の暗闇の中、一人の█が誕生し世界が新たに創られた。




