【第二章】オークヘイヴンの謎
「もう少し速く動けない?」
馬の鬣に手を滑らせながら、私は言った。馬は軽くいななき、黙ったままのエレンドとの距離を詰めた。視線を赤土の道へ向けると、木々の間で細くなった道の両側から枝が空を覆い、不規則な光の欠片が差し込んでいた。
「……ねえ、いつまで私を無視するつもり?」
エレンドはゆっくりと顔を向け、口の端に笑みを浮かべると、また前を向いた。
「無視してるわけじゃねえ。ただ……静けさを楽しんでるだけだ」
「へえ、静けさが好きなのね。赤の外套にしては、変わった趣味だわ」
笑い声が返ってきた。
「誰よりもザラ殿がよくご存じのはずだ。戦う者ほど、平和を大事にするもんだろ」
「それは確かね」
並んで進んだ。馬蹄が泥を踏む音だけが、しばらく二人の間を満たしていた。この辺りでは静寂は贅沢品だった。無駄話で使い潰すようなものじゃないと、昔から知っている。ただ、沈黙を盾にする者を信用する気にもなれない。
「南大陸は、一族同士の泥沼みたいな争いが絶えなくても、まだましなほうだわ。わからないのは、なんで帝国親衛隊がわざわざこんな地まで来たのかってこと」
視線は、幹に絡みつく着生植物の群れをなぞっていた。
「黄の外套を一人寄越すだけじゃ足りなかったの? 庶子の乱のせいで、帝都港は不安定なんじゃないの?」
「あの戦いは、もう二ヶ月前に終わった」
「二ヶ月前?……ということは、新しい皇帝が立ったってこと?」
「ああ。それ以来、帝国は安定してる。まあ、エリサーの連中がまた戦争を起こすまでの話だがな。この辺りには、まだ届いてないのか?」
私は首を振った。
「人狼を追って北東まで遠征できるくらいには、安定してるってわけね」
皮肉を一音一音に滲ませながら、私は言った。
「貴族がやる仕事とは思えないけど」
「俺は貴族じゃねえ」
「でも、赤の外套でしょ」
私は全身に視線を走らせた。
「立ち居振る舞いも口調も、全身で貴族だって言ってるわ」
エレンドは片手で手綱を持ち直し、視線は前に向けたままだった。
「俺の来し方は……少し込み入ってるんだ、ザラ殿」
「タリオン卿の生き様だって込み入ってたわ。本物の玉座継承者だと知るまで、流れ者として生きてたんだから。あなたの話がそれより複雑だとは、あまり思えない」
「タリオン卿と、直接会ったことがあるのか?」
「ええ。まだ騎士になる夢を見ていたガキの頃からね。……まさか、すべての騎士の憧れになるなんて思ってもみなかった。アラリックでさえ、あの話をするたびに目を輝かせていたのに」
「タリオン卿は……平和が来たと知ったら、喜んでくれるだろうか」
「戦と同じで、平和も永遠には続かない。それを一番よく知っていたのが彼だった」
短く間を置いた。
「……それより、まだ答えてもらってないけど。本来の任務は帝都港で皇帝を守ることじゃないの?」
「新しい皇帝が、お付きの者を連れて北へ向かわれたんだ」
「北へ?」
私は眉を寄せた。
「……覚えている限り、皇家が大森林を避けてきたのは、少なくとも九十年になるはずだけど」
「記憶力がいいな、ザラ殿。……野暮を承知で聞くが、いくつなんだ?」
「政権が変わるくらいで驚かない程度にはね。……それより、新しい皇帝は大森林で何を望んでるの?」
エレンドは下唇を軽く噛み、顎が一瞬、目に見えてこわばった。
「……詳しいことは俺にもわからねえ。ただ、炎の玉座に就いたばかりでわざわざ向かうんだ。それなりの理由があるってことだろ」
「皇帝があそこへ行く理由は、二つしかないわ」
私は手綱を引き、道を塞ぐ木の根を避けながら言った。
「北大陸を奪還するための遠征か、未生者がこの大陸に戻ってきたか、どちらかよ」
エレンドは黙って道を見ていた。私は口の端からかすかに息を漏らした。ほとんど笑いと区別のつかない音だった。
「わかった、エレンド。あなたが忠実な騎士だってことは、もう十分わかったわ。上の人間が宮廷の秘密を守らせてるんでしょう。いいわ、クビが飛ぶのを手伝うつもりはないから」
「信頼の話じゃないんだ、ザラ殿。俺自身、起きていることの詳細を知らないんだ」
向き直り、道から目を離さないまま彼を見た。おそらく本当のことだろう。少なくとも、彼自身が信じている範囲では。
「皇帝が不在なら、赤の外套を帝都港に残しておくほうが理にかなってるんじゃない?」
私は眉を上げながら、歩調を保った。
「皇家が留守にするたび、あの都は混乱に陥る。そういうのを、一度や二度じゃなく見てきたわ」
「帝都港は安全だ、ザラ殿」
エレンドは顎で前方を示した。私はそちらへ視線を向ける。
午後の霧の向こうに、オークヘイヴンがゆっくりと姿を現していた。まるで街が少しずつ自らを明かしていくかのように。
最初に見えてきたのは平屋の家々だった。石畳の道に沿って並ぶ家は、土壁造りか、湿気で黒ずんだ木造かのどちらかだった。雨戸はすべて閉ざされている。どの家も例外なく。まだ夕方前だというのに、それは見過ごせない奇妙さだった。
進むにつれて、二階建ての建物が現れた。一階が店、二階が住居だとわかる造りだ。だが不思議なのは、どの窓にも人の気配がないことだった。ここまでの家も、どこも同じだった。
人々が最近の人狼の襲撃に怯えているのかもしれない。あるいは、まだ気づいていない別の何かがあるのかもしれない。
さらに先、街の入口からでも見える位置に、教会の塔が最も高くそびえ、広場中央の噴水のほうへ向いていた。
そのとき、時計台の鐘が五つ鳴り響いた。音は路地を駆け抜け、太陽が家々の向こうへ沈んでいく中、私たちはその音を背にして進み続けた。
「真剣な話をするわよ、エレンド」
馬上で彼の方へ身を乗り出し、声を低くした。
「もし、何か隠しているせいで私たちが死ぬことになったら……地獄の果てまで追いかけて、もう一度殺してやる」
「俺のために地獄まで来てくれるなら……殺すだけってのも、もったいねえだろ。あなたほどの美人がよ、ザラ殿」
笑いが漏れないよう、唇を引き結んだ。
そのとき、シリーがどこからともなく現れ、私の肩にとまった。ゆっくりと両腕を伸ばしながら、目をこすっている。
「今回は、ずいぶん時間がかかったわね」
「道が荒れてたし、前に通ったときからずいぶん変わってたの。あの道に生えてる木、二、三百本は確実に増えてたわ。全然記憶にない」
私は彼女の方を見た。
「ちゃんと眠れた?」
「最高だったわ」
シリーはあくびをした。
「この町、昔よりずっと『賑やか』ね」
シリーの皮肉に、思わず鼻で短く笑った。
「オーロラ祭が待ち遠しくてたまらないみたいね」
同じ調子で皮肉を返した。
「マナの乱れは感じる?」
シリーは目を細め、わずかに首を傾げてからうなずいた。
「そこまで強くは……でも、明らかにここはおかしい。出どころがまだわからないだけで」
私は馬の歩みを速めた。
広場に着くと、噴水の周りを難民たちが列をなして占めているのが見えた。老人や子ども、女たち。慌ただしく動き回る小さな集団が、彼らの世話をしていた。
混乱の中心で、一人の金髪の女が目を引いた。深い青のドレスが、湯気の立つ大鍋の前で動くたびに揺れている。木のスプーンを握り、中身をかき混ぜているが、その仕草はどこか作業に馴染んでいなかった。明らかに、給仕される側に慣れた人間が給仕しているような佇まいだった。
頭の片隅に、小さく書き留めておいた。
「難民か?」
「あなたたちにとっての戦は南で終わったのかもしれない、エレンド。でも彼らにとっては、この北東でまだ続いているのよ」
金髪の女は隣の者に何かを伝え、エプロンで手を拭くと、こちらへ歩いてきた。左足が地面を探るように着き、右足がそれを補うように支えている。その不揃いな足取りをしばらく目で追い、記憶に刻む。彼女は足を引きずっていた。
同じ瞬間、かすかなマナの揺らぎを感じた。ごくわずかだったが、こめかみに鋭い痛みが走るには十分で、私は眉をひそめ、同じように顔をしかめているシリーと視線を交わした。
「オークヘイヴンへようこそ。オーロラ女神の加護が、あなたがたを導きますように」
見知らぬ女が足を止め、私たちの前に立った。
「オーロラ女神の加護が、あなたをお守りしますように」
エレンドは胸に手を当て、そう答えた。
女の青い瞳が私へ向けられた。一瞬、その視線が肩へと逸れ、そこにいるシリーに気づいたかのようにわずかに間を置き、それからまた先へ進んだ。やがてエレンドへと移る。
「赤の外套様、何かご用でしょうか。朝廷からのお客様を、予告なしにお迎えすることは、めったにございませんので」
スカートの端をつまみ、礼をしながら言った。
「正式な任務でここに来た。これが調査の許可状だ。数名の冒険者と魔術師の失踪についてのものだ」
エレンドは鞍に固定した袋から書類を取り出し、封筒を女に手渡した。
女は封筒を開け、中に目を通した。二度まばたきをしてから、静かにうなずいた。
「そういうことでしたか……。わたくしはアリス・アバスと申します。お見かけした時から、なぜわざわざこのような辺境までお越しになったのかと、不思議に思っておりました」
馬から降り、手綱を引いて隣に留めた。
「ダンテ・アバス殿の……娘さん?」
声に懐かしさが滲んでいた。
「祖父にあたります」
私は鼻から短く息を吐いた。
「あの子、いつも私の従士にしてくれってせがんでたのよ。どうやら引き取ってくれる人が見つかったみたいね」
アリスはしばらく観察するようにこちらを見て、その目に何かがよぎった。認識と安堵が入り混じったような色だった。頭の中で、かすかな警戒が灯る。
「あなたが……ザラ様なのですね。祖父からよく、あなたのお話を聞いておりました」
温かな微笑みを浮かべながら言った。
私は視線を街の方へ逸らし、しばらく黙ったままでいた。
「……あの人は、今どうしてる?」
「……十年前に亡くなりました。戦が始まった頃に」
「……ご冥福を。いい人だったわ」
目を閉じ、少しの間そのままでいた。
十年。彼女にとっては、悲しみが傷跡に変わるのに十分な時間。私にとっては、ついこのあいだと変わらない。ひとつ深く息を吸い、街へと目を向けた。建物に家紋や所属を示す印がないかを探しながら。
「どちらの側についていたの?……差し支えなければ、お父上も戦場に?」
「シクス・エリサー様の側についておりました。……残念ながら、父は祖父とともに」
「じゃあ、今のオークヘイヴンの代官はあなた?」
「はい、ザラ様」
「アリス、調査に協力してもらえる? エレンドが表に立つから、私は後方に回るけど。アバスの名に恥じない形で力を貸してくれるなら、助かるわ」
そう言って、エレンドの方を指した。ちょうど彼は馬から降りたところだった。
「でしたら、この期間中、わたくしの屋敷にお泊まりになりませんか?」
アリスが一礼した。
「今回は遠慮しておくわ、アリス。宿のほうがいい。こういう調査は動きやすさが大事だから、面倒な手続きなしで出入りできるほうが助かるの。わかるでしょ?」
シリーが肩の上で小さく息を吐いた。
「それでも、心遣いには感謝するわ」
そう付け加えた。
「お望みのままに、ザラ様」
「アリス殿、最近の失踪について教えていただけますか。冒険者以外にも、ほかに事例はありましたか?」
エレンドが隣に立ち、問いかけた。
アリスは深く息を吸い、うなずいた。
「父と祖父が戦地に赴いてから、この地域では多くの方が亡くなっています。鱗病で命を落とした方もいれば、魔獣の襲撃や別の病が原因の方もおります」
私たちは宿へ向かって歩き出した。アリスの案内に従って進む。エレンドは私の歩調に合わせて歩幅を狭め、足元を気にするように眉をひそめていたが、私は気に留めなかった。ほかに優先すべきことがあった。
通り抜ける路地に漂う匂いが気になっていた。油に似ているが、油ではない。シリーと視線が合う。彼女もすでに顔をしかめていた。
「その中に、人狼の襲撃は?」
声の調子を崩さずに尋ねた。
アリスは角を曲がる際、目印を示すように小さく手を動かした。そのときも左足をわずかにかばっていた。
「……娘が、その……被害者の一人でした。一年ほど前のことです」
私は足を止めた。
路地の空気に違和感があった。目の奥から押し上げてくるような圧。マナの感知を広げようとしたが、引っかかったのは密度の異常だった。まるで厚い布で覆われているかのように、あらゆる感覚が跳ね返される。
アリスの鼓動すら捉えられなかった。あれほどはっきり見えているのに、気配がほとんど感じられない。エレンドの方へ目を向ける。彼からはすべてが伝わってきた。心拍の正確なリズムまで。
「ザラ様、お加減でも……?」
アリスが振り返り、不安そうな目でこちらを見ていた。
「大丈夫。……娘さんは、おいくつだったの?」
私はまた歩き出した。
「十七でした。サカボッテ卿の四男様と婚約し、旅立つ前に……」
アリスはエプロンのポケットから一枚の写真を取り出し、こちらへ差し出した。明るい髪に、母と同じ目をした若い娘が、飾り気のない笑顔を浮かべている。しばらく見つめ、何も言わずに返した。
「人狼だったと、確かなの?」
「はい。護衛の一行に残されていた爪痕と現場の様子が、それを示していました。目撃者はいません。残された痕跡だけが証拠です」
彼女の下顎に力が入るのが見えた。
「また起き始めたのは、いつ頃?」
「二週間ほど前です」
エレンドと視線を交わした。一年間ひとつも報告がなく、今になって再び。この流れに単純な説明はなかったし、どれも簡単に片づくものではない。
私は聴覚を広げた。街は人であふれているはずだった。あちこちに気配はある。それなのに、ほとんど何も聞こえない。子どもの遊ぶ声さえも。
「この一年間、人狼の報告は他になかったの?」
「……なかったんです。二週間前、兵士たちが東の集落へ向かい、村が無人になっているのを見つけるまでは」
「そこには何人いたの?」
「五世帯で、それぞれ六、七人ほどでした」
「つまり、三十五人前後が死んだということ?」
「いえ、行方不明です」
「行方不明?」
「はい。遺体が見つかっていないため、殺されたのかどうかも確認できていないのです」
宿の前で足が止まった。街角に建つ二階建ての建物で、木の両開きの扉が歩道いっぱいに広がっている。
「それで、どうして人狼だと言い切れるの? ただの狼や、ほかの魔獣じゃないと判断した根拠はあるの?」
私は眉をひそめた。
「前の夜に遠吠えを聞いたからです。不安に思い、近くの集落それぞれに兵士を送りました。戻ってきた兵士が、東の村が無人になっていたと報告してきたのです。家々がどうしてあれほど廃屋のように見えたのか、うまく説明はできませんが……」
アリスが扉を開け、中へ入った。私はその後に続いた。
狭い廊下を抜け、食堂の入口の前で足を止める。ホールはがらんとしていた。頭上では古びた天井扇がゆっくりと回り、単調な音を立てながら空気をかき回しているだけで、暑さはほとんど変わらない。
額ににじんだ汗を手で拭った。人を迎える準備はできているように見えるのに、誰もいない。声も、足音も、床板のきしむ音も。あるのは、私たちの気配だけだった。
シリーが肩から離れ、頭上をゆっくりと旋回し始めた。低く押し殺したような音を漏らす。うなりとも口笛ともつかない音。それで十分だった。苛立っている。
「その遠吠えは、どんな感じでしたか?」
「狼の遠吠えに似ていましたが……もっと甲高い。ずっと甲高くて。骨の髄まで響くような、心臓まで震えるような音でした」
シリーを見る。同じように不機嫌な顔をしている。私は視線をアリスへ戻した。
「本当に、甲高かったのね?」
「はい、ザラ様。間違いなく、甲高い音でした」
「アリス、最近どこか怪我した?」
彼女の足元へ視線を落としながら尋ねた。
「ただの捻挫です」
アリスの体がわずかに引いた。
「階段でつまずいて、足を捻っただけで……大したことはありません」
「本当に? 女神の加護で治せるけど」
「お気遣いなく、ザラ様。このようなことで、そのような尊い力をお使いいただくわけにはまいりません。痛みに弱く、大げさに見えてしまうだけですので」
顔をそらし、ドレスの裾を両手で整えた。
私は唇を引き結んだ。女神の加護を断る者など、まずいない。よほどの理由がない限りは。受け入れることのほうが、傷よりもつらい場合でもない限り。シリーに目をやると、彼女はいっそう苛立っている様子だった。
「本気で言ってるの? 見た目はどうあれ、私はオーロラ女神の上位神官よ」
アリスはまっすぐに目を合わせてきた。その瞳にあったのは罪悪感ではない。だが、それに近い何かだった。
「必要ありません。お気持ちだけ頂戴します、ザラ様」
一歩下がり、服の乱れを整えるように手を動かした。
「では、わたくしはこれで失礼いたします。何かご用があれば、真夜中頃までは中央広場におります。神官のもとへ遺骸が運ばれていますので、調べる必要があればご利用ください」
足早に立ち去り、扉が開いて、すぐに閉まった。
「嘘をついてるようには見えなかったけど」
肩に戻ったシリーが言った。
「でも、本当のことを言ってるようにも見えなかった」
「じゃあ、何が本当で何が嘘なんだ。何か気づいたことはあるか、シリー殿?」
「……わからなかった。ただ、アリスの周りの空気が、完全に正直とは言い切れない感じがして。言ってたことの多くは本当だと思う。でも、ほかのことは……正直かどうか判断がつかなかった」
「足を引きずってる理由は、間違いなく嘘ね。でも遠吠えの話は本当だった」
宿の窓の外を眺めながら言った。
「だから、どちらかよ。よほどの嘘つきか、それとも嘘でも自分で信じてるか。恐怖のせいで、実際に起きたことの記憶が歪んでる可能性もある。はっきりしてるのは、女神の加護を断ったこと。それだけで、この街で何が起きてるのか、だいぶ見えてくる」
私はシリーの方を見た。
「シル。役所に行って、二つ確認してきてほしい。一つ目は、この地域に娘が七人いて、八番目が男の子だった家族がいるかどうか。二つ目は、その家族がこの土地の出身かどうかよ」
シリーは少し考えてから、うなずいた。
「すぐ戻る。でも、報酬に肉を二キロもらうわ」
「何を見つけてくるかによるわね」
シリーは微笑み、壁をすり抜けるようにして消えた。エレンドが近づき、隣に立つ。
「なぜ、そのことを調べるんだ、ザラ殿?」
「これが本当に若い人狼なのか、それともスティクスなのかを確かめたいの。アリスが言っていた遠吠えの甲高さが気になってる。人狼の遠吠えは、もっと低くて重い、荒々しいものよ。あれほど甲高いなら、北のマナに汚染された生き物ということになる。つまり、人狼よりもスティクスの可能性が高い」
「つまり、俺たちは悪魔の手先を相手にしているってことか?」
私はうなずき、顔をしかめた。
「この任務、思っていたよりずっと厄介みたいね、エレンド」




