深淵という名の「粗大ゴミ」
お読みいただきありがとうございます!
第9話は、ついに世界の敵「深淵」を粗大ゴミとして処分するフェイト。
ついでに念願の(?)ゴミ出しルートまで開拓してしまいます。
無自覚な神の御業に、エルシアのツッコミもキレを増していきます!
リビングの床から突き出してきた、おどろおどろしい黒い触手。
それは、周囲の魔力や物質を無差別に食らい、虚無へと変える災厄の概念【深淵の浸食】だ。
普通の英雄が立ち向かえば、剣は折れ、魔法は飲み込まれ、最後には存在そのものが消滅するだろう。
だが、フェイトの反応は至ってシンプルだった。
「……おいおい、新築の床に穴を開けるなんて、どんな行儀の悪いゴミだよ」
フェイトは眉をひそめると、逃げ惑うこともせず、その禍々しい触手を真正面から「掴んだ」。
「ひっ……フェイト様、離れてください! それに触れては存在を消されて――」
エルシアの悲鳴が上がる。
しかし、消え始めたのはフェイトではなく、触手のほうだった。
「【概念分解】――並列処理。ついでに『不潔』と『侵食』の特性も分離しろ」
バキバキバキッ! と、空間そのものが砕けるような音が響く。
フェイトの指先が触れた箇所から、漆黒の霧が真っ白な光の粒子へと強制的に還元されていく。
深淵という「無」の概念ですら、フェイトの権能の前では、ただの「構成要素の一つ」に過ぎなかった。
『対象:【深淵の浸食】を分解しました』
『入手アイテム:【虚無の結晶】×1、【次元の破片】×5、【最高級の腐植土】×10』
「へぇ、見た目の割に良い土が取れるじゃないか」
フェイトは何事もなかったかのように、手の中に残った真っ黒だが栄養に満ち溢れた土を、先ほどの肥料バケツに放り込んだ。
床の穴も、ついでに【再構築】で元通りにする。
「……ふう。これで良し」
「……良し、ではありません! フェイト様、今のは『深淵』ですよ!? かつて七人の賢者が命を懸けて封印したという、世界のバグのような存在だったんですよ!?」
「バグ? ああ、だからあんなに形が崩れてたのか。次はもっと綺麗に分解してやるから安心しろ」
エルシアはもう、膝から崩れ落ちるしかなかった。
彼女が仕えていた教会の教典には、「深淵に抗える者は神のみである」と記されていたが、目の前の男はそれを「おやつ時の小掃除」程度に片付けてしまったのだ。
「あ、そうだエルシア。深淵を分解した時に『次元の破片』っていうのが手に入ったんだけど、これを使えば『ここから地上へ繋がるゴミ出しルート』が作れそうなんだ」
「ゴミ出し、ルート……?」
「ああ。いちいちダンジョンを登るのは面倒だろ? これを使って、不要なものを一瞬で外に捨てる専用の門を作ろうと思ってな」
それはつまり、人類未踏のダンジョン最深部と地上を繋ぐ「双方向転送門」という、世界の物流を根底から覆す禁忌の技術だった。
「フェイト様……。お願いですから、その門の『出口』だけは慎重に選んでくださいね? 間違っても王都のど真ん中にゴミを捨てないでくださいよ……?」
「わかってるって。……そうだ、あいつらの拠点のゴミ捨て場にでも繋いでおくか。向こうもゴミには慣れてるだろ」
フェイトは悪戯っぽく笑いながら、次元の破片を捏ね始めた。
その頃、ダンジョン入口。
命からがら転送されたヴォルグたちは、ギルドの裏手にあるゴミ集積所に突っ伏していた。
「クソ……フェイトの野郎……! 絶対に後悔させてやる……っ!」
ヴォルグが呪詛を吐いたその時。
頭上の空間が歪み、見たこともない「禍々しくも神々しいガラクタ」が、雨のように彼らの上に降り注ぎ始めた。
第9話をお読みいただきありがとうございました!
「深淵」を肥料に変えてしまうフェイトの規格外っぷり、いかがでしたか?
そしてラスト、ヴォルグたちに降り注ぐ「プレゼント」。
次回、このゴミ(お宝)が地上で大騒動を引き起こします!
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