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第8話:家庭菜園が世界の理を分解し始めた

いつもお読みいただきありがとうございます!

第8話では、フェイトの家庭菜園がついに「神話」の領域へ到達しました。

本人は「ただの趣味」のつもりですが、聖女エルシアの胃痛は加速するばかり……。

そして、平和な離宮に突如として現れた「深淵」という名の汚れ。

フェイトによる、スケールが違いすぎる大掃除が幕を開けます!

元パーティを「転送(お片付け)」して数日が経過した。

 俺のダンジョン生活は、驚くほど快適だ。

 特に、リビングから一望できる中庭――俺が【概念分解】で岩壁をぶち抜き、天井を「透明な結界」に変えた自給自足エリアは、今や見事な緑に包まれていた。


「……フェイト様。重ねてお聞きしますが、あそこに実っている黄金のリンゴのようなものは、何でしょうか?」


 エルシアが、震える指先で一本の木を指差した。

 その木は、俺が「枯れ枝」と「高密度魔力」を合成して植えたものだ。


「ああ、あれか。元はただの『毒リンゴ』だったんだが、毒の概念を抜いて『不老不死』と『全属性耐性』の概念を代わりに組み込んでみたんだ。おやつにちょうどいいと思ってな」


「神の食べ物をおやつにしないでください……っ! 一口食べただけで、寿命が千年延びるほどの神気を感じるのですが……」


 彼女はもう、ツッコミを入れること自体が自分の精神修行だと思い始めているらしい。

 俺は実った黄金リンゴを一つもぎ、自分の服の袖でキュッキュと磨いてエルシアに差し出した。


「ほら、食ってみろ。皮ごといくとシャキシャキして美味いぞ」


「あ、ありがとうございます……。いただきます……。……っ!? 美味しい……なんてレベルじゃありません。細胞一つ一つが、新しい生命で書き換えられていくような……」


「それはよかった。さて、今日はこの『余った肥料』を処分しないとな」


 俺が指差したのは、家庭菜園の隅にあるバケツ一杯の粉末だ。

 これは、ダンジョンの最深部で拾った「伝説の魔獣の骨」や「古代の呪物」を片っ端から分解し、栄養素だけを抽出して精製したものだ。


「これ、一粒でも地上に持ち出せば、不毛の地が瞬時に肥沃な森に変わる『奇跡の粉』ですよ……。それをどうされるのですか?」


「いや、使いきれなくて余ったからさ。裏庭の池にでも撒こうかと思って」


「ダメです! そんなことをしたら、池に住んでいるただのミジンコが『水神』に進化してしまいます!」


 エルシアの必死の制止に、俺は首を傾げる。

 俺にとっては、いらなくなったものを分解して再利用しているだけなのだが、彼女からすれば、俺が動くたびに「世界のバランス」が崩壊していくように見えるらしい。


「わかった。じゃあ、この肥料を固めて『家の壁』の強化に使おう。それなら文句ないだろ?」


「……もう、驚きません。家の壁が神話級の硬度になっても、それがフェイト様の日常なのですね」


 俺がバケツを手に取ったその時。

 ダンジョンの地脈が大きく震えた。


「な、何事ですか!? 地震!?」


「いや……これは『掃除』をサボっていた場所から、異物ゴミが湧いて出たみたいだな」


 視線をやると、リビングの床を突き破り、どす黒い霧を纏った巨大な「触手」が這い出してきた。

 それは、ダンジョンの管理者ですら制御できないという、数万年に一度現れる厄災――【深淵の浸食】だった。


 本来なら国が滅びるレベルの危機。

 だが、俺の家の中に「黒ずみ」のような汚れが現れたことが、俺の逆鱗に触れた。


「……エルシア、すまない。せっかくのティータイムだが、ちょっと『大掃除』をしてくる」


 俺は手に持っていたバケツを置き、漆黒のコートを翻した。

 

「家の床を汚すゴミは、根こそぎ消えてもらう」


 俺の右手が、不気味に蠢く【深淵】の触手に触れる。

 その瞬間、世界を飲み込もうとしていた絶望の概念が、ただの「素材」へと解体されていく音が響き渡った。

第8話をお読みいただきありがとうございました。

リンゴを磨く感覚で世界樹の実を差し出すフェイトと、もはや感覚が麻痺しつつある聖女様。

しかし、そんな穏やかな時間を邪魔する「深淵」が現れました。

果たして、世界を滅ぼす災厄は、フェイトの手によってどんな「素材」にされてしまうのか……。


「こんな家庭菜園が欲しい!」「聖女様の苦労が報われてほしい!」と思った方は、ぜひ評価やブックマークをよろしくお願いします!

次回、フェイトの【概念分解】が真の深淵を暴きます!

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