第4話:聖女様、ゴミ拾いの深淵を知る
お読みいただきありがとうございます!
第4話では、フェイトの拠点での日常(?)が描かれました。
聖女様からすれば国宝級のお宝も、フェイトにとっては「ちょっと汚れたゴミ」でしかない……そんな認識のズレを楽しんでいただければ幸いです。
そして、フェイトを追い出した元パーティ側にも、不穏な影が差し始めます。
石造りのコテージ――いや、フェイトが【再構築】した『魔導石の離宮』のリビングにて。
聖女エルシアは、差し出された琥珀色の液体が入ったコップを手に、震えていた。
「あ、あの……フェイト様? この飲み物は一体……?」
「ん? ああ、そこら辺に生えてた『毒消し草』と『魔力の枯れ枝』を分解して、苦味の概念だけを取り除いたお茶だ。疲労回復に効くぞ」
「毒消し草を、分解……。そんな、伝説の錬金術師でも数日はかかる工程を……」
エルシアがおそるおそる口に含むと、その瞬間、彼女の瞳が大きく見開かれた。
枯渇していたはずの魔力が一気に膨れ上がり、体中の傷が光となって消えていく。
「なっ……!? 全回復どころか、最大魔力量が底上げされています! これ一杯で城が買えますよ!?」
「大げさだな。ゴミ捨て場にいくらでも落ちてる素材だろ」
フェイトは呆れたように笑いながら、部屋の隅にある「大きな箱」を指差した。
「それよりエルシア、約束通り手伝ってもらうぞ。その箱に入ってる『ゴミ』を、種類ごとに分けてくれ。右の棚が『金属系』、左の棚が『有機物系』だ」
「はいっ! 聖女の名に懸けて、完璧にこなしてみせます!」
エルシアは意気揚々と箱を開けた。……そして、硬直した。
「……フェイト様。お聞きしてもよろしいでしょうか」
「なんだ?」
「なぜ、この箱の中に、隣国の国宝である『精霊王の涙』や、失われたはずの『古代神龍の逆鱗』が、無造作に放り込まれているのですか……?」
「ああ、それか。さっき地下八十五層まで散歩した時に、瓦礫の下に埋まってたんだ。泥だらけで汚かったから、【分解】して汚れの概念だけ消しておいたぞ」
エルシアは目眩を覚えた。
世界中の英雄が命を懸けて探し求める至宝が、この男の手にかかれば「泥だらけのガラクタ」と同義なのだ。
「……わかりました。これらは……『ただの石ころ』ですね。そう自分に言い聞かせます」
「話が早くて助かる。あ、あとこれ。エルシア用の『仕事着』だ。さっきの服は防御力が心もとなかったからな」
フェイトが差し出したのは、先ほどの天界の糸に『龍晶石』を分解して混ぜ込んだ、白銀の法衣だった。
「これ、袖を通すだけで結界魔法が自動発動しているのですが……」
「防汚機能もつけといたから、どれだけ汚しても大丈夫だぞ」
エルシアは悟った。
この男は、自分が何をしているのか全く理解していない。
世界を分解し、再構築する――それはもはや神の領域だ。
(……この人を、絶対に逃してはいけない。世界がこの人の価値に気づく前に、私が一番の理解者にならなければ……!)
聖女としての使命感はどこへやら、彼女の心には「最強の居候」としての決意が固まっていた。
その頃、ダンジョンの上層階。
フェイトを追い出したSランクパーティ『栄光の盾』は、かつてない窮地に立たされていた。
「おい、どういうことだリンダ! なぜ防御魔法が発動しない!?」
「うるさいわね! 杖の魔力伝導率が急に落ちたのよ! まるで、誰かがメンテナンスし忘れたみたいに!」
彼らはまだ気づいていない。
自分たちが「ゴミ」と呼んで捨てた男が、実はパーティ全体の装備とコンディションを、スキルの微調整だけで支えていたという事実に。
【後書き】
第4話をお読みいただきありがとうございました!
ついに聖女エルシアがフェイトの「異常さ」を確信し、居候としての覚悟を決めました。
一方、やりたい放題のフェイトの裏で、元パーティの装備はガタガタに……。
「ざまぁ展開が待ち遠しい!」
「聖女様のリアクションが面白い!」
など、感想をいただけると嬉しいです。
評価やブックマークも、ぜひよろしくお願いいたします!




