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【最終章】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!  作者: カナタカエデ
第三章

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四話 悪夢のはじまり

うっすらと目を開けてみると、そこはまったく覚えのない場所だった。


体が重い……いや、痛い……!


「ねえ、アメリア……起きて……」


真っ暗な闇の中で呼ぶその声は、もう二度と聞きたくないと願った男のものだった。

確かめようにも、体は自分のものではないかのように動かなかった。


――お、お願い……もう、殺して……


勝手に口が動き、そう答える。


カリナとして死んだ時とは比べものにならないほどの、飢えと、渇きと、痛みを感じていた。


「だめだよ。ほら、少し水をあげよう」


唇を濡らす程度の水滴が、ぽとりと落ちてくる。


――もう嫌……もうお願い……

私が何をしたの。

あなたを選ばなければよかった。

ただ、幸せになりたかっただけなのに。


その声は、自分のものとは思えないほど、か細く掠れていた。


ぼやけた視界の中で、ようやくその男の姿を捉える。


アレクサンダー・ユーラシア。

死んだはずのその男が、笑った瞬間、

恐怖と憎悪に心が飲み込まれた。


――お願い……助けて……カリナ……。


自分から発されたその言葉に、背筋が震える。

これは……夢じゃない。

アメリア王女の記憶だ。


***


「いやぁぁああああ!」


叫び声とともに起き上がると、声が出て、体が動いたことにほっとした。

同時に、胃の奥底から湧き上がってくるものを抑えるため、慌てて口を塞ぐ。


――吐く……!


込み上げるものを必死に堪え、呼び鈴を鳴らそうと手を伸ばした、その時。

その音を聞くよりも早く、ローラが部屋へと飛び込んできた。


「アメリアさま! どうされました」


アメリアの姿を確認すると、ローラは慌てて洗面器を取りに行き、ものの数秒で戻ってきてくれた。


吐き気が治まるまで、ローラはずっと背中をさすってくれていた。

その温かさを感じながらも、頭の中は先ほどの夢に支配されていた。


あれは、紛れもなく――

アメリア王女の前世の記憶だろう。


でも……どうして……?


「ありがとう、ローラ。もう大丈夫よ」

「朝になったら医者を呼びますから、それまで休んでいてください」


ローラは新しい洗面器と布巾を持ってくると枕元に置き、

「いつでも近くにおります」と言って呼び鈴を握らせ、

横たわるアメリアにシーツをかけた。


相変わらず完璧な彼女に感謝しつつも、

とてもじゃないが、もう一度眠る気は起きなかった。


シーツの中に潜り込み、先ほどの夢を思い出す。


明らかにあれは記憶の断片だった。

そして確かに感じた身体の痛み、渇き、苦しみ……

おそらくアメリア王女の最期に近い瞬間だろう。

もう死んだはずの男に、再び沸々と怒りが込み上げてくる。


(あの男……本気で一回殴っておけばよかったわ)


それよりも、なぜアメリア王女の記憶を夢に見たのだろう。

これまで一度もこんなことはなかった。

カリナとして生きた前世の記憶を持って転生したが、アメリア王女自身が経験したことは、何ひとつ記憶として持ってはいなかったはずだ。


もしかして……ついにアメリア王女に、この身体を返す日が近いのかもしれない。


そう思うと、ヴァルクがいないのが不安で仕方なかった。

彼に会えないまま……もし終わりが来たら、どうしよう。


胸焼けのような気持ち悪さが取れないまま、不安な時間だけが、ただ過ぎていった。

そして、この日からこの悪夢に苦しめられることになる。








「はあ……」


「大丈夫ですか、アメリア様……

顔色がかなり悪いですが」


毎夜見る悪夢のせいで、まともに睡眠をとることもできず、あの夢で感じる身体の痛みを思い出しては、食欲も湧かない。

吐き気に襲われる日々は、確実にアメリアの心身を蝕んでいった。


「大丈夫……と言いたいけど、あまり良くないわね」


「いい加減、医者を呼ばせていただけませんか?

もう半月も、この調子ですよ」


悪夢のせいなだけなのに、わざわざ医者を呼ぶ必要はないと思っていたが、たしかに身体にも悪影響が出ているようだ。


「そうね……お願いするわ」


結局、その日の午後には、城医による診察を受けることになった。


「アメリア様、月のものはいつ来られましたか?」


「月……ええっと、そうね。

ノルディアを出立する……二、三週間前だったかしら?

……だから、もう二か月くらい前になるわね」


「なるほど。半月前から吐き気もあるとおっしゃっていましたね……」


「ええ、そうね」


「胸の張りはいかがですか? 痛むなどはありますか?」


「胸……どうかしら。

そういえば、少し張っている気もするわ」


「……断定はできませんが、ご懐妊の可能性が高いですね」


「えええっ」


アメリアより先に声をあげたのは、隣で見守っていたローラだった。


「ご、ごご懐妊?! 間違いございませんか?」


「まだ時期が早いので、断定はできません。

しかし、月のものがないことやお身体の不調は、妊娠の傾向と非常によく似ています。

妊娠の初期は流産の可能性も高い。

できる限り、安静に過ごすのがよいでしょう。

薬はお身体によくありませんので、何も出しませんが、定期的に様子を見に参ります」


こ……子ども……

ヴァルクと、私の……?


まだ何の実感も湧かないお腹に、そっと手を当てた。


もしかして、この子が生まれることが、

王国の破滅を防ぐことなの……。


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