表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【最終章】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!  作者: カナタカエデ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/6

三話 それぞれの選択

春の兆しが見え始めた頃、アメリアたちはノルディアを出発し、王都へと向かった。


到着するとすぐに、待ちに待ったダリオンとマリアの娘に会うことができた。


もう寝返りができそうだという赤子は、小さい体のわりによく動き、見ているこちらをハラハラさせるほどだった。

手足をばたばたと動かし、体をひねってみたり、あーあーと大きな声を出してみたりと、忙しなく遊んでいる。


「なんて可愛いの。ずっと見ていられるわ」


アメリアの言葉に、ダリオンは思わず呟いた。


「そんなに子供が好きだったんだな」


「え、ええ……だって、可愛いもの。お兄様だって、毎日可愛くて仕方ないでしょう」


「それはもちろん!」


「ダリオンは毎日、乳母からでミナを奪っていくのよ。

なにもかもほったらかしだって、先日ついに国王陛下からもお叱りを受けてしまって……」


「お兄様……」


アメリアの冷たい視線から逃げるように、ダリオンは赤子を抱き上げた。


「よおしよし、眠そうだな。パパが寝かしつけてあげよう」


「もう、困った人……」


そう溜息をつきながらも、ダリオンを見つめるマリアの瞳は、明らかに以前とは違っていた。

彼女の心もまた、確かに変化しているようだった。


ダリオンが赤子を連れて部屋を後にすると、マリアは一呼吸おいて、アメリアに向き直った。


「実は……私たちは、モリス公爵領へ行くことが決まりました」


「えっ……! 公爵領って……」


「実はあなたたちの結婚式の少し前に、フィリップが、しばらく外国で勉強し直したいと申し出たの。

今は父が公爵代行を務めています。

それで国王陛下に嘆願して、ダリオンがその任を負うことになったわ」


「……フィリップが……?」


「彼は……ダリオンには、もうロキアに帰ってくるつもりはないと言ったそうよ。

それで、テティもモリス領の修道院に入ることが決まったわ」


テティ――

マリアの侍女だった彼女が犯した罪は、王女の誘拐の首謀者であることをはじめ、貴族殺害、他国の王子の暗殺と、あまりにも重いものだった。

死刑が言い渡されたとき、アメリアはこの残酷な結末も致し方ないと思っていた。


けれど、彼女の友人であるマリアだけは、最後まで諦めなかった。

彼女を生涯監視する使命を負い、第二王子妃という地位も捨てる覚悟だった。

そして、夫であるダリオンもまた妻とともに生きる道を選び、王位継承権を返上したのだ。

そのため、ふたりの処遇については、王宮内でさまざまな意見が割れていた。


「結婚式の時に話そうとしていたのは、そのことだったのね」


「ええ。アメリアには、すごく迷惑をかけたし……

それに、私が極刑を避けるために動いていた時、協力してくれたでしょう。

いずれ、きちんと話さないといけないと思っていたの」


「あなたは、それで大丈夫なの?

公爵領には……あのお母様がいらっしゃるでしょう」


「お母様は、もう誰かと話すこともできない状態なの」


「え……」


「ご自身で薬を服毒した可能性も高いですが……

どうしてそうなったのかは、まだ分かっていません」


「父は、母とモリス公爵の介護、それに公爵領の管理まで抱えていて……

とても一人では手が回らない状態なんです。


私たちは公爵領の安定を目指して、いずれは……

モリス公爵の息子さんに継いでいただけるよう、教育に力を貸すつもりです」


「そう……。フィリップは……どういうつもりだったのかしら」


「たぶん、彼はダリオンに公爵領を譲るつもりで、海外に行くと言ったのだと思います。


私のせいで、ダリオンまで王室を出ようとしていたから……

彼は……ダリオンのことだけは、本当に大切に思っているんです」


「……そうなの?

こんなことをしでかしておいて?」


「だって、彼がダリオンを傷つけたことは、一度もないもの……

彼は何にも興味がない人だけど、ダリオンだけは特別だった」


「フィリップにとっては、母もテティも、私も……

アメリア、あなたでさえも、ただの駒」


「彼が本当に、何よりも大切なのは……

ダリオンだけなのよ」


その言葉が、なぜかすとんと胸に落ちた。

確かに、そうなのだろう。


フィリップは、アメリアがヴァルクが伯爵になってから冷たくなったと言ったが、アメリア自身への執着は見られなかった。

けれど、ダリオンに対しては違う。


テティのことも含め、彼の無慈悲な行いを糾弾されても、ダリオンはフィリップを決して咎めることはなかった。

何があっても友には変わらないと、言い切ったのだ。


ダリオンの真っ直ぐな性格だけは、捻れたフィリップの心にも、確かに届いていたのだろう。

彼にとって、もっとも大きな罰は、ダリオンに二度と会えなくなることなのかもしれない。


「なんだか……いろんなことが変わっていくわね」


そう呟くと、マリアは微笑んだ。


「そうですね。でも……きっと良い方向に向かう気がします」


そこにはもう、母親に怯え、夫の愛を疑っていた彼女はいなかった。


美しく、愛されているという自信と、

母親としての強さを手に入れた人。


世界が変わり始めていると実感するには、十分な笑みだった。


***


自室に戻ると、国王と謁見していたヴァルクも戻っていた。

彼はすでに騎士服へと着替え、出立の準備を終えていた。


「もう行ってしまわれるのですか?」


「ああ、これから立つ。

姪には会えたか?」


「ええ。あなたとも一緒に会いたかったのに」


「ミナ姫には会ったよ。

ダリオン殿が謁見中に連れてきて陛下に叱られていた」


嬉しそうに笑うと、

「でも、孫を溺愛しているのがよく分かったよ」

と付け加えた。


「寂しくなるわ」


「手紙を書くよ。最近は、ずいぶん上達しただろう?」


ヴァルクの言葉に、アメリアは大きく頷いた。

手紙のことで喧嘩して以来、ヴァルクは一言であっても必ず手紙をくれるようになった。


結婚してからも、領地を離れる時は、必ず一度は手紙を送り、

領地にいる間はアメリアから文の書き方を学び、

いつの間にか、アメリアを驚かせるほど達筆になっていた。


「私も書くわ。気をつけて行ってきてね」


ヴァルクはアメリアの頬に口付けると、部屋を後にした。


アメリアは窓辺に立ち、

氷狼騎士団の隊列が小さくなり、やがて見えなくなるまで、静かに見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ