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【最終章】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!  作者: カナタカエデ
第三章

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十一話 回顧録 -婚約者-

「なっ、お待ちください! 私は隣国の代表として来ているのですよ!」


アレクサンダー王子の顔には、明らかな失望の色が浮かんでいた。

けれど、それよりも気になったのは隣にいるフィリップだ。

彼は一度もこちらを見ることなく、ただ冷たい眼差しをストーン伯爵へと向けていた。


「ふむ。すまないな、アレクサンダー王子。娘は結婚すれば夫に仕える身となる。その夫を選ぶくらいは、自分でさせてやりたいのだ。

だが安心してくれ。この国には、美しく聡明な貴族令嬢がたくさんいる」


父の言葉を聞き、慌ててアレクサンダー王子へと微笑みかける。


「申し訳ございません。

王子のお気持ちはとても嬉しいのですが、私は……この国とともにありたいと思っております。

それが叶うのであれば……王子を選んでおりましたわ」


絶望したような眼差しで見つめられ、胸が締めつけられた。

この三人の中で、純粋に自分を想ってくれていたのは、きっとこの人だけだったのだろう。


「娘の正式な婚約者は、国の英雄――ヴァルク・ストーン伯爵とする!」


国王の拝命を受け、ようやくストーン伯爵へと視線を向ける。

だが彼は一度もこちらを見ることなく、静かに立ち上がった。

この一連の出来事すべてに興味がない――そんな空気が、全身から滲み出ているようだった。


「では、パーティの続きを始めよう」


人々の視線は、王女の婚約者となったヴァルク・ストーン伯爵へと集まる。

嫉妬、羨望、好奇――。

けれど彼のもとへ歩み寄り、祝いの言葉をかける者は誰一人としていなかった。


今にも立ち去ってしまいそうな背中を見つめていると、父が心配そうに声をかけてきた。


「ストーン伯爵と踊らないのか?」


「……そうですね。彼は、今すぐにでもここを去りたいと願っていそうですから」


「ふむ、そのとおりかもしれん。だが、アメリアの夫となるのなら、これくらいは務めてもらわねばな。

それにしても……まさかお前が彼を選ぶとは思わなかった。興味がないものだとばかり」


「……お父様は、私が彼を選んだことを、どう思われますか?」


「……さすがは、私の娘だと思ったな」


「え?」


「あの三人の中で、最も信頼でき、私の右腕となれるのはあやつしかおらん。

ならば、お前の夫となっても、間違いはないだろう」


(お父様は……この選択を、誰よりも喜んでいらっしゃるのね……)


「それは……良かったですわ。

お父様にそう言っていただけたのですもの。せっかくですから、ストーン伯爵とお話ししてまいります」


それ以上、父の顔を見ていられなかった。

同じように祝えたなら、どれほどよかっただろう。


ストーン伯爵のあとを追い、会場を出てしまう前になんとか追いつく。


「少し、お話しできませんか?」


彼は一瞥すると、短くため息を吐いた。

それだけで背筋が凍る。

アメリア・ド・ロキアに愛想を振りまかない男など、これまで一人もいなかったのだから。


この男は、微笑みもしなければ、機嫌を取ろうと下手に出ることもない。

彼と対峙すること自体が、これまでの“当たり前”から大きく逸脱していた。


「……そうですね。私も、あなたに話しておきたいことがあります」


「では、私の宮へ参りましょう。ここは少し、騒がしすぎますわ」


周囲の視線が、痛いほど突き刺さる。

ヴァルク・ストーン伯爵が王女に恋慕していないことは、誰の目にも明らかだった。

そんな相手を選んだという事実が、今夜からどんな噂を生むのか――想像するまでもない。


ここにいたくない。その思いが、自然と足を前へ進ませた。

幸い、彼は何も言わずについてきた。

目に浮かんだ涙も、きっと気づかれてはいないだろう。


宮殿へ戻り、客室として用意された部屋で、伯爵と向かい合う。

正面から見るストーン伯爵は、浅黒い肌に猛獣のような灰色の瞳、

そして自分の倍はあろうかという、大きな体躯をしていた。


(……まるで異国人ね)


彼が出自を明かしていないことを思い出し、おそらくそうなのだろうと納得する。

血筋を重んじるロキア王国で、父はこの男の何を、そこまで信じているのだろうか。


「それで……話とは?」


低く響く重厚な声。

フィリップとは、まるで違う――。

そう思って小さく首を振る。フィリップのことは考えてはいけない。彼は、裏切ったのだから。


「あ、あの……私が突然あなたを選んだので、驚かれたのではないかと……。

伯爵はお忙しい方ですし、以前から候補者のお一人ではありましたが、

私に会いに来られたことはありませんでしたでしょう?

ですから……これから少しずつ、お互いを知っていけたらと……」


「……その心配は無用だ」


「どうしてです? あ、もしかして伯爵は、私のことをよくご存じなのかしら?」


(こんな顔をして……もしかして、私のことが好き?

……まあ…その可能性があっても、おかしくはないわね)


ヴァルク・ストーン伯爵と正面から視線が合っても、彼は逸らさなかった。

そして、何の躊躇いも遠慮もなく、その言葉を吐き捨てる。


「…単刀直入に申し上げる。




ーーーこの婚約はあなたから断ってくれ。」


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