2話:初めての街と絶対にどこにでもある冒険者ギルド
【名前】 レン(旧姓:深山悟) 【職業】 転生者 / 自称:AIオペレーター
【ステータス】
筋力: 並以下(運動不足の現代人。重い荷物を持つとすぐ腰にくる)
魔力: 平均的(ただしAIとの通信用パケットとして常時消費)
知力: そこそこ(前世の知識。ただしAIに頼りすぎて思考停止しがち)
固有スキル: 【ChatGDT(God Data Text)】
神のデータベースに接続し、あらゆる質問に回答する。
音声入力・脳内タイピング可能。
「3行でまとめて」「小学生でもわかるように教えて」等の制約も受け付ける。
コボルトを「ピタ◯ラスイッチ」で仕留めた俺は、AIが算出した最短ルートを歩き、ようやく初めての街『テラ』の城門に辿り着いた。
「おい、止まれ。見ない顔だな」
門番の兵士が槍を突き出してくる。威圧感がすごい。前世の部長の説教より怖い。
(AI、こいつを怒らせずにスムーズに入街する方法を教えて)
『回答: 敵対心がないことを示すため、両手を広げてゆっくり近づいてください。
先ほど入手した「コボルトの耳」を1枚、ギルドへの納品用とは別に「落とし物」として提示してください。
この世界の門番の給料は低く、副収入を求めています。
「ええ……それって賄賂じゃないか?」
『いいえ、円滑なコミュニケーションのための「リソース配分」です』
AIの言うことは相変わらず合理的。俺は指示通り、ポケットからコボルトの耳を取り出し、門番にだけ見えるように差し出した。
「あの、これ……道中で拾ったんですけど、どうすればいいか分からなくて。良かったら処分をお願いできますか?」
門番の目が、一瞬で「仕事モード」から「ニヤケ顔」に変わった。コボルトの耳は換金すれば酒代くらいにはなる。
「ほう、君は正直者だな。……よし、身元は怪しくなさそうだ。入れ! 冒険者ギルドは中央広場を右だぞ」
「ありがとうございます(AI、お前マジで性格悪いな)」
『お褒めに預かり光栄です』
街に入ると、中世ヨーロッパ風の活気ある光景が広がっていた。だが、俺が目を行かせたのは立ち並ぶ屋台の「価格設定」だ。
「……なぁ、あのリンゴみたいな果物、店によって値段が全然違うんだけど」
『個体名:パッポ。供給過多により、市場価格は下落傾向にあります。しかし、あちらの角の店は「洗浄済み」として付加価値をつけ、2割高く販売していますね。現代のブランディング理論の初歩です』
「へぇ……異世界でもマーケティングは生きてるわけか」
俺はAIの解説をBGM代わりに聞きながら、中央広場へと進む。 目指すは、この手の世界では大体存在する「職安」兼「クエスト窓口」である冒険者ギルドだ。
道中、ボロボロの装備でうなだれている新米冒険者や、怪我をして担ぎ込まれる戦士たちを何人も見かけた。 皆さん、本当に大変そうだ。命を懸けて、汗を流して、泥臭く戦っている。
「……でも、俺にはこれがあるからな」
指先で、自分にしか見えない検索窓をなぞる。 苦労? 努力? そんなのはAIに読み込ませる「データ」の中だけで十分だ。
大きな木造建築の前に着いた。看板には、剣と盾を交差させた紋章。 冒険者ギルド『黄昏の盾亭』。
「よし、まずは登録して、一番楽に稼げる依頼を探すとするか」
重い扉を押し開けると、酒と汗と鉄の臭いが鼻を突いた。ただ、ふと視界の端に、銀髪を振り乱して机に突っ伏している、ひどく落ち込んだ様子の女の子が映った。
(AI、あの子がどうしてあんな状態でいるか予想できるか?) 『装備品の消耗具合から計算すると、強敵との戦闘に破れ命からがらこの地まで戻ってきたといったところではないでしょうか。』
「……異世界も大変なんだな、本当に」
俺は他人事のようにそう呟き、受付へと歩き出した。




