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「えーっと、フロントはどこだろう?ここかな?ここ?うん、ここだわ!!」
カウンターにいる寮母さん……にしてはイメージよりも若い人が仕事のために立って……はおらず突っ伏して寝ていた。熟睡通り越して爆睡している。
よだれを垂らしているのは見なかったことにしておいてあげよう。
ツッコミどころ多いけど、きっと疲れているのだろう。
でも、部屋の鍵貰わないとなー。
起こすの悪いなー。
「すみません。あのーすみません。リーン•スレイブですが……」
揺すってみるが中々起きない。
もっかい揺すって……あっ起きた。
「ふにゃ?はっ、もしかして新入生だったりしますです?」
「……はい。リーン•スレイブと申します」
「ごめんです。眠かったもので。いやーいつの間に?改めまして、初めまして!私はこの寮で寮母を勤めております。皆様、眠り姫とか眠り番とか居眠り寮母と読んでますのでお好きにどうぞです。リーン•スレイブさんですね。えっと、これだ!!イデっっ」
こっちを振り向いたと同時に机に頭をぶつけてしまう。この人、大丈夫か?
家具の配置が悪いのか?
んー、それに呼び名がどれもな……。もう、悪口としか言いようがないのでは!?
まだマシそうな眠り姫もおそらく皮肉で付けられたものだろうし……。
「頭打ちましたよね。大丈夫ですか?」
「問題なしです。実は今日二十四回目でして、少なめですので」
回数を数えてる辺りは真面目そう。
「いつももっと多いんですよ。なにごとも慣れです。痛いと言いましたけど、口癖なだけであまり痛くもありません。はいっ、こちら鍵です。ラッキーなことに一人部屋ですよ。無くさないで下さいね。無くされるとどうしてか生徒でなくわたしが疑われるんです。理不尽すぎます」
なんとなく疑う方の理由は分かるが……。
一人部屋は運が良い。好きに散らかせ……じゃなくて過ごせる。
「鍵、ありがとうございます」
「いえいえ〜。在学中、ごゆっくりおくつろぎ下さいです」
手を振って見送ってくれるのはいいが……あっまたぶつけた。今度は手か……。
名前、聞き忘れたけど今度聞いてみよ。
「えっと……五階。最上階じゃないの!階段は疲れるけど、外部からの防犯はよし。あと建物も歴史ありそうでよし。怖いのが出そうな雰囲気だけど……」
わぁ、下の階から良い匂いがするわ。
そういえば食堂があるんだったわね。
後で行ってみようかしら。
学校に寮生活に食堂。わくわく、わくわく。
部屋も素敵。アンティーク調だ。
ベッドもふっかふっか〜。気持ちいい〜。
そしてそのままベッドを堪能するうちに寝落ちしてしまうのだった。