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煌びやかな天蓋。
ワインレッドを基調として金の糸で模様が刺繍された煌びやかな布が天頂からぶら下げられている。起き上がろうと手をついてみれば雲のように柔らかなマットに驚かされる。
いつもの量のとは違う柔らかく寝心地の良いベッド。
起き上がると眩しい朝日に顔を照らされた。
頭がスッキリしている。まるでよく寝た日の朝だ。
「ここ、どこ。……アル?」
私の手を握ったまま、ベッドに突っ伏して寝るアル。
寝てると言うより寝落ちした様子。
「私……何してたっけ。ダンスしてて、それから」
「……リン?」
声で起こしてしまったのか目を覚ましたアル。
「リン!」
抱きつかれた。
「大丈夫か。変なところない?痺れたりだるかったりは」
「な、ないよ」
「良かった。……本当に良かった」
思い出した。
私、毒で死にかけたんだった。
ちなみにあれから三日たったらしいことを、アルから教えてもらった。
「頼むからいなくならないでくれ。一人に、しないで……」
「心配かけてごめん。戦いに夢中だったの。……やっぱり剣は手にするべきではないわね」
俯いたアルの頭をそっと撫でながら謝る。
この流れで撫でるのが正解かは分からないけど、アルがどうしても迷子になった子猫みたいに見えてしまったから。
「そうやって俺のために命を賭けてくれるのが嬉しくないわけじゃない。だけど……また、置いていくつもりかよ。一人にしないで」
視線は強くて射抜かれそうなくらい。なのにその声はとても震えていた。
また……。
そうか。今も前世も、私はこの人を不安にさせ寂しくさせたんだ。
あれだけ守ろうとした私がそんなんでどうするのよ。
前世でも私はこうして彼を置いて行ってしまったんだ。彼を守りたいという私自身の理想のために。
彼の気持ちを考えることもなく。
きっと、あの時も私の死を嘆いたのだろう。
「すごく不安だったんだ。お前は気を抜いたらすぐどこかへ行こうとする。俺は側にいて欲しいだけなのに。俺のことが嫌いなのは分かってる。それでも俺はリーンが好きなんだ」
「いやちょっと待って。嫌いって?」
「リーンは俺のことが嫌いなんだろう?婚約話を持ちかけたら戦いを始めるくらいに」
「違うけど」
「はい??」
疑問符浮かべたいのはこちらの方だ。
なぜそんな解釈をされたのだろうか。
「守れるだけの力もないのにアルの側にいるのは不相応だから勝てたら側にいようと思ったのよ!!」
「じゃあ、俺を嫌っていない?」
「嫌う理由なんて微塵もないじゃない。むしろ前世からずっと好きよ憧れてたもの」
そこでアルがきょとんとした顔をしてきた。
こっちが聞きたい。何でだよ。なんでそんな考えになったんだ。
「好き?誰が誰を??」
「私がアルを」
そして見つめ合うこと数十秒。
アルは布団に突っ伏した。耳が赤く見えるのは絶対に気のせいじゃない。
と思ったらすぐ起き上がった。
大丈夫かしら。様子が変だけど、なにか変なものでも食べたのかしら。
「勝負は俺が勝った。一度願いを言ったけど、リーンは気を失って聞いてなかっただろうからもう一度言う。俺と結婚してください」
「あの」
「心配事があるなら聞くから言ってみろ。結婚しないという選択肢はないが」
ないんだ?ないのね!?
戦い前に条件は呑んでるから今さら撤廃はできないけど。
「まず第一に私は弱いわ。またあなたを守れないかもしれない」
「守らなくてもいい」
けれど、それじゃあ意味がない。だって─────
「もう、後悔したくないんです」




