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「ありがとう」

「じゃあ、勝ったから願いを言わせてもらう」


私は観念して目を閉じた。

これでお別れだ。

私は負けた。彼に彼を守るだけの強さがないと証明をしたようなものだ。

私は強くなれなかった。

こんなのを側に置いておく理由がないもの。


「俺と結婚して。どうか、どうか側にいてくれ。もう二度と離れるな」

「へ?け、結婚!??婚約は」


そもそも別れ話かと思ったのに。


「これ以上我慢できない。我慢してお前を他に取られるのは嫌だ」

「アルキオネ様?」


彼はそんなに私を好いていたっけ。

前世では……。


「前世と比べるのはやめろ。あの時は余裕を持った人間と思われたかった。なのにお前は先に逝くし」

「ごめん」

「だから我慢はやめた。多少強引でもリーンの心を奪ってやるから。あと俺をアルキオネと呼ぶな。アルだ。前世とはいえ奴に嫉妬するだろ」

「アル。でも、あなただって他に好きな人ができるかも」


周りを信じれなかったから始めて信じることのできた私を好きになった。それこそ刷り込みのように。

他に私より好きな子ができたらそっちに靡くかもしれない。

なんてったってアルは王子。

いくらでも相手に相応しい子がいる。


「できてたら前世で自爆なんてしないよ。お前しかいない、お前しか愛せない」


あれれ。どうしてかな。

すごくすごく大事な話してるのに頭がボーっとする。

アルの声がぼんやりするし、視界も二重だし。


「リーン、返事を聞かせてくれ。俺と……リーン、おい!!」


どうやら倒れたらしい。

アルの腕の中に逆戻りだ。

なんだか前世の死の瞬間に似ている。


「リーン、毒魔法使った時なにを思い浮かべた」


毒魔法は詠唱に種類を言うのを必要とされていない。戦いに必死で痛みさえ止められたらそれでいいと、かなり強力なものを使った。

こういう急いでるときに出てくるのは、大抵習った中でも強いものだ。

確か……、


「エスシャルムの毒」

「なんてものを!!」


針の先に付いた僅かな量でも死に至るとされる猛毒。しかも動き回ったから、毒の回りは当然早い。


「おい、誰か解毒できる者」


ここは王宮じゃない。救いなんて来ないよ。そう言おうとして口すら動かなかった。身体中の力が抜けて、少しも動かせそうにない。

指先と唇が震えている。


「僕、治せるっす」


キート、さん?


「フィータネ。お願いだ、彼女をリーンを助けて!!」


あれ名前が違う。

朦朧とした私の傍にしゃがみ込む気配がする。


「まったく、何も変わってないっすね。あなたは昔から自分を犠牲にしてしまう」


ボソリと呟かれた独り言。

昔?この人と会ったことあったっけな。

視界は完全に真っ暗で何も見えなくなっている。

会ってないよね、でも懐かしい気がするのはどうしてかな。

どこかで会った気がしなくもない

それは昨日今日の話ではなくずっと昔に。

解毒のためのものだろう。

流れてくる暖かい魔力を感じながら意識を手放す。

アルが呼ぶ声が遠くで響く。

ごめんなさい。

いつも心配かけてごめんなさい。




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