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「前世は確かに嫌いだったよ。悪くない人を殺す人のこと。自分勝手な戦いのせいで、あの時代は多くの人が命を落としたから」


なにしろそれで親を亡くしているから。

大陸を消したなら、そこに暮らしていた人ももちろん殺したことになる。


「だけど、不謹慎だけどね、なんか嬉しいんだよ。私が死んだのが心に残ってて。アルキオネ様がそれで死んだのだけは悲しいけど。歪んでるし、狂ってるよね。一回死んだから思考が変わったのかな」

「リン」

「それにリンの記憶があったとしても、今はリーンだからね」

「リーン、許してくれるか」

「許すもなにも。私の中での正義はいつだってアルキオネ様よ。あなたが黒を白と言うのなら私も白と言うくらいに。私のために怒ってくれて、悲しんでくれてありがとう」


あえてごめんと言うのはもうやめた。


「この勝負」

「今回はアルキオネ様の勝ちね」

「ああ」


やっと腕を緩めて起こしてくれる。

服も髪もびしょ濡れだ……。

アルも同じで、長い前髪が顔に掛かってしまっている。

そっと髪をのけると紅の瞳が濡れていた。


「アルキオネ様、泣いてるの?」

「泣いてないよ。男が泣くはずない」


ハンカチをあげようとしたけど、これもまたびしょびしょ。指で拭う。

男であることは泣かない理由にならないし、泣いてもいいと思う。


「本当の本当にリーンはリンなんだね。夢じゃなく」

「えぇ、そうよ。信じるための証拠がないけれど」

「そんなの名前の件だけで十分だし、俺と対等に戦えるのはお前しかいない」

「対等って今回は負けたけどね。今回どころかいつも」

「それを覚えていて『勝ったら側に置いて』なんて酷いな」


どうせ勝てるわけないから負けていいような条件にした。


「それに名前のことも……ってそうよ、名前!!なんで改名なんてしたの」


「さっき言った通りだ。リンが短い短い文句言うから」

「あんなの……」


幼い頃に言った言葉を冗談のつもりで言い続けただけなのに。それなのにずっと気にしてたなんて。

でも、おかげで前世の証明ができたわけか。


「また逢えて嬉しいわ。アルキオネ様」

「俺もだ。リン」


しばらく笑って見つめ合っていたがアルキオネ様はハッとしたように私を見渡して腕を掴んだ。


「リン、全身傷だらけじゃないか。すまない傷つけたね」

「そんなのアルキオネ様も同じじゃない。戦いに遠慮は不要だし、こんなのかすり傷…………じゃなさそう」


あまりに険しい表情をするので、あれ?と思って身体を確認すると……。

わあ、肩パックリだわ。

骨見えてるし、血が止まってない。えぐい。エグすぎるだろ。

毒で麻痺させたから忘れてたけど結構な怪我ではないか。 


「毒消しは俺じゃ無理だけど【レベル10 ヒール】」


怪我は酷いけど中程度だよね。

レベル10とか普通の人が使うには危険なのに、なんてものをかけてくれるんだ。

怪我は一瞬で完治したけど、古傷とか諸々も治ってそう。

心なしか、暗闇で本を読んで落ちた視力まで戻った気もする。

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