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アルを探すため城を歩いている。


迷子にならないか、部外者の自分が入ってはならない場所ではないか、そんなことは心配いらない。

それくらい区別がつけられる。もともとここに住んでいたのだもの。


すごく懐かしい風景。

そりゃあ何百年も前のことだから所々違ってるけど基礎となる造りは同じ。建物も雰囲気も。

違うのはここにいる人だけ。

もう、あの頃を知っているのは私だけなのだ。そう思うとそこはかとない寂寥感があるけど、大昔のことだからどうしようもない。


「アルいないわね」


待ち合わせ場所くらい決めておくべきだった。


「でもそもそも私は彼を探すべきなのかしら。目的は果たしたし」


ダンスも踊り、王妃様にも謁見した。

パーティーも見たしやることもないじゃないか。

だとしたら帰ってもいいのか?

彼は王子だし、私は探していい立場にない。むしろ迷惑になるかもしれない。

しかし彼に誘われてこの場にいる身。無断で帰るわけにもいかないので、やはり探さなくては。


「あらかた探したけどな」


これ以上探すところなんて……。


けれど何故かふと懐かしい記憶を思い出した。

普通にあんなところにいるわけがない。

だけど、もしかしたら。

いやいや、あれは彼との記憶だ。アルは関係ない。


だけど、けれど、それでも。

王城なんて滅多に来れないし、どうせなら最後に見学させてもらってもいいかなって。

今ならアルを探してたと言えば、彷徨っていても護衛の兵に捕まることはなさそうだし。

一度決めたら行動するのは早いに越したことない。

こっそり裏庭に入り込んだ。


「確かこの辺にあるはずだけど……あった!」


前世で見つけた抜け道が数百年前と変わらずそこにはあった。。


草に隠れていて分かりにくいが、レンガの壁が壊れて外に出ることができるようになっているのだ。

まさか今まで修理されていないとは。

防犯面が気になるが私にとっては好都合だ。

ありがたく使わせてもらうとそこは森だった。

王家の管理する土地の一部で庭みたいなものだ。

その中にあるはずの目的地に向けて走り出した。


不法侵入だとか頭の片隅にはあるけど、それよりも。

無心で走って、走って、走って。

うっそうと繁った木が突如開け、そこにはあった。当時と全く変わらない野原が。

夜だが月明かりに照らされて鮮明に見えている。

所々に花の散るうす緑の広い野原。

森の中の不自然に開けた野原。原因は私にないことはないのだが……。

その中央に一本だけ生える巨木。

そこからは走らずに歩いて近づく。


『まだ全然剣が上手くなれないの。でもきっとあなたの役に立つようになるわ!』


聞こえてきたのはずっと昔の自分の声。

ここはよく、リンがアルキオネ様と話した場所。城では敬語でしか話せなかったけど、ここでは庶民の話し方を許されたし本音で語り合い、相談もした。


『剣を教えてくれる師匠がひどいの。もう教えることない、って』

『アルキオネ様。初めて自分の剣を買ったの。先生のアドバイス通りに双剣の片割れを使うことにしたわ。その方が軽いから』

『昨日の夕食ね、苦手なアーロスのサラダだったの』


大事なことから日常の些細なことまで。くだらないことも多かったのにアルキオネ様は丁寧に聞いてくれたっけ。


『アルキオネ様、私は十分強くなったわ。お願いします、私をあなたの剣として側に置いてください』

『では俺もリンの剣になろう。俺は魔法で戦うよ。絶対お前を傷つけさせはしない。どんな時も一緒だ、むしろ俺が側にいてほしい』


これは主従関係を改めて結んだとき。

剣の修行を終えて側近として側に置いてと頼んだときの。

木が近づいてくる。


『私、アルキオネ様に伝えたいことがあるわ。この戦争が終わったら聞いてくれる?叶いっこない願いだけど……』


でも、夢を追いかけるのは自由だとあなたが教えてくれたから。


『俺もだよ。俺にも願いがある。叶いっこないなんて最初から決めつけてはいけない。必ず二人とも生きて再びここに帰ろう。リンを死なせないと約束する。お前があの時俺に生きてと言ってくれたおかげで、俺は今ここにいる。だから、お前を死なせはしない。そして無事帰られたら、お互いに願いを言おう』


『二人とも生きて帰りましょう』


『約束な。戦争が終わったら必ずまたこの木の下で逢おう』


『ええ、約束ね。絶対にまた逢いましょう』


それは戦場に向かう前日のこと。

いつもの大木の下でのことだった。

そのとき大木から降っていた葉が紅く染まっていて、まるで血のようだと不吉に感じたのをよく覚えている。

そしてそれ以降会話の追憶は止まる。


そう、この場所でした会話はこれが最後だった。










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