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「当たり前でしょ。いくら二重に魔法を隠す結界張っても見分けられるわよ!」


胸を張って自慢げにいった。それなのにアルの頭の上には疑問符がたくさん並んでいたので補足を付け加える。


「魔法を使えなくても見分けることくらいは出来るわよ」


それが普通でしょ。

でないと戦争で戦うときに相手の出方も読めない。発動する、あるいは発動した魔法を読んで避けるなり躱すなりしないと効率が悪い。

魔法は魔力を流して使うため、流れで使う魔法も区別できる。

当たり前のことだと勘違いしている私は知らない。前世でもアルキオネと自分しか無詠唱の魔法を読み取ることなんて不可能ということを。


「そんなことは置いといて、勉強教えてください」


もういい!勉強が一番!!

学生の本文は勉強よ。

今日は、歴史だったんだ。

ミリー国訪問。ちょうど、アルキオネ様と出会って初めての外国訪問じゃない。

そうなんだ。あの夢にも出てきた戦争はミリー国との戦争だったのね。

恨みもなにもない、もう過去の話。

私の生きた時代が教科書の半分を占めている。どれだけその時代が重要なのよ。

アルは教科書の何倍も詳しく教えてくれる。 リレインユールが出てきてはすこし恥ずかしくなり、アルキオネ様が出てくれば少し嬉しくなる。そんな表情の移り変わりがバレないよう、下を向いて教科書を集中して読んでいように見せる。

そういえば前から謎なことがあったんだ。


「アルはどうしてそんなに歴史に詳しいの?」


前世の記憶がある私はともかく、アルはなんで詳しいのかな。歴史オタクでもなさそうだし。 


「そういうリーンもだろう。お前が得意な理由を先に教えてくれ」

「秘密」

「じゃあおれも秘密だな」


なんだかズルい。それに質問に質問で返すのは礼儀的によくない。

秘密と言われると余計気になる。

なんで得意なんだろ。

なんとか私からは何も語らず教えてもらえる方法はないかな。

悩んでいる間に得意な歴史の教科はさっさと切り上げられ、夕方まであと二つの苦手教科で絞られた。


「では質問だ」


アルの出す問題は私の苦手そうなところばかり突いてくる。

暗記も計算も語学も。


「なんで計算ミスとケアレスミスをここまで繰り返せる?」

「私も繰り返したくはないわよ」


見直しても見直してもミスとは、さも正解だと平然とした顔でそこに居座っているものだ。


「どうして国内語を外国語にするとき古典風になる?」

「これ古典風なの?普通に現代語訳しているのだと思っていたわ。先生は丸くれたのに」


間違いではないから丸なのだろうけど、外国の人には勿論古くさく見えるらしい。前世で習ったときのまま使っただけなんだけどな。数百年で結構変わるのね。

一通り教えてもらい、プリントの穴埋めをし、ノートを写させてもらって、寮の前まで送ってもらった。


「今日はありがとう。色々と」


実習のやらかしに、夢に、勉強に……。我ながら思い返すだけで目まぐるしい。

アルは剣を使えた私に理由を問わなかった。だから、こちらもこれ以上詮索するのは辞めておこう。

気にはなる。

だって、レベル6よ?

出世すること間違いなし、な魔法を使えるのに剣科最下位よ?

気にはなるけど、聞いてしまったら後戻りできなさそうな……。知らないほうが良さそうね。

アルの様子がおかしくなるほどの何かがある訳で、かなり重大なことが絡むのだろう。

そして、こういうのは下手に関わらない方がいいと家族に教わっている。

魔術の名門は面倒ごとに巻き込まれないための人付き合いにも詳しかった。


「俺こそ。あと、一つ聞いておきたいのだが」

「なに?」


アルが私に質問とは珍しいわね。


「俺は剣はそこまで上手くないが、それでも違和感がある。友達に持たせてもらった剣は扱いやすかったのに、俺のはどうしてか使いにくいんだ。何故か分かるか」

「剣見せて」

「これか。はい」


素直に鞘ごと渡してくるけど、剣士がそれでいいのかしら。

受けとると何故か重く感じた。

そっか。鉄の塊だもの重くて当然。実習で持てたのは火事場のバカ力なるものだったのだろう。

そして形をみて予想が確信に変わる。


「これ、右利き用ね。刃が左に曲がってる。アルは左利きだから反対のもの、もしくはまっすぐな両利き用でないと」

「そうなのか」


左利きは珍しい。どうしても右利きと両利き用の取り扱いが多くなってしまう。 

だから初心者、特に左利きの人は買い間違えることも多いのだとか。

友達のは持ちやすかったらしいから、その人は左利き用か両手利用かな。 


「おかげで謎が解けた。夏休みにでも武器屋で買うとするか」


え、それってまだひと月も先じゃない。

剣は相性が悪かったら実力が削られてしまう。

日用品は購買で揃うこの学校で、王都の武器屋に行くのは少し面倒かもしれないけど……。


「あー、えっとね、噂によると王都にパンケーキ屋さんができたんだけど、二人で行くと半額になるんだって」


突拍子もないこの話の元ネタは女子の会話からだ。

いまだに、友達はできていないので聞き耳を立てて手に入れた情報。とても美味しく、少し高い。ペアで行けば半額に!!と大体の内容はそんなのだ。

ついでに、金欠なんだよねーと笑う。


「で、それがどうした」


眉を寄せて訝しげに睨んでくる。


「今度の週末行ってみない?武器屋すぐ隣にあるんだけど、パンケーキのついでに」


ついでを強調する。

見立てではアルは頼ることが苦手そうだから。そんなタイプには自分のついでと言って頼みごとをするのが手っ取り早い。

また合っていない剣を買っても、お金の無駄遣いになるだけだし。

とはいえ、パンケーキ食べたい!お金足りん!!というのも本音でありまして。でも甘いものは食べたいのよ。


「ついて行ってもいい。ついでに、一緒に剣を選んでくれると助かる。リーンは、剣に詳しいだろうから」

「いいの!?やったー!!」


実習で無謀な行動から助けてくれたお礼を兼ねて、最高にアルに合うものを探し出そう!!









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