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そして互いの行動が決まったので、悲鳴の方へ走り出した。


「やっぱりオークだったわね」


三体のオークと同じ制服を着る女子二人。

そして陰から様子を見る一組のペア(私たち)。

きっと、オーク一匹だと思い込んで近寄ったら近くの茂みにまだいました、的なやつだ。


二対三は不利だろう。

この場合はまず逃げろと教科書にもあったが、どうやら二人は足がすくんでしまったらしく、一歩も動こうとしない。

この場合はまずオークの気を別のことに向けないといけない。この睨み合った状態で逃げ出そうとすれば、間違いなく追いかけて襲ってくるから。


「ねえアルファイド、私があの木を倒すから。倒したら、あの子達に逃げるよう叫んで。あなたの声の方がよく通るから」

「分かった」


あの木と指したのはまあまあ近くにある木。

遠くの木を倒せば、驚いて逃げるオークと鉢合わせするかもしれない。だから近くを倒すのだ。風魔法を発動させた。

ところがだ。傷は深くついたが倒れるまではいかなかった。おかしいなぁ??

教科書にはあれくらいの木は一撃で倒せる、と書いてあったのに。仕方なくもう一発撃ち込む。

ん?おかしい……。もう一発!!

そしてようやく切れた木はオークめがけて一直線!!

一匹がその下敷きになる。

残り二体はおどろきとまどっている。

二人の生徒も……。


「お前ら逃げろ!」


アルファイドの声に我にかえり立ち上がって、何処かへと走っていった。

よし、私たちも逃げよう!!と立ち上がったまでは覚えている。


「危ないっ!!」


その声を聞いた後、どういう訳か地面に寝転がっていた。

木陰だから地面がひんやりする、じゃなくて!!

目を開けたらあったのだ。アルファイドの顔が、ドアップで。

びっくりするよね?森で悲鳴を聞くよりも。


「ア、アルファイド!?ど、どどういうことよ。なんで私にのしかかって、挙句押し倒され下敷きにされてるの!??」

「すまない」


すぐに退いてくれたので許そう。誰にだって間違いはある。私は心が空よりも広いのだ。うんうん。

退く時に頭の下から手を引き抜かれて、初めて頭を守ってくれていたことを知った。咄嗟の判断力は高いらしい。

だからこそどうして押し倒した??


「リーン、お前ちょっとは気をつけろ色んな意味で」

「はい?」


それはあなたの方では?


「これ見ろよ。お前の放った魔法、弱いなって観察してたら、なんでだったと思う?」


そこには何故か二本目の倒れた木。その木が固いはずの地面にめり込んでいることで、かなりの衝撃が加えられたことが推測される。

はて、一本しか倒していないはずだが何故に倒れてきたのか。首からを傾け思案する。


「えっ……もしかしてさっきまで私のいた場所?あそこにいたら木でぺっしゃんこになってたわね。アルファイドは助けてくれたの?なんでさっきの魔法は弱かったの??」

「質問は一つずつしろ。ああそうだ。お前がいた場所だ。あのままだと下敷きになっていた。オークのようにな」


彼が目をやったのはさっきやっつけたオーク。

木の下にあるのは首が変な方向にひしゃげて、口から血を流し、息絶えている。死に顔は苦しそうな表情をしている。誰よ、あんな酷いことしたの。かわいそうに。

すみません、私ですね。

にしてもなかなかにグロテスクな光景だ。


「身は守れって言ったよな?」

「あ、はい」


ごめんなさい。だって狙ってない木が倒れるなんて思わないじゃない。自然って怖いわねー。


「あと、魔法が弱い理由な。魔法はどう打った?」

「???木に向けて打ったけど」

「そこからか……。木に垂直になるよう打ったか?」

「いいえ?だって、当たればなんとかなるのでしょう」


家でもそう教えてもらったもの。とにかく魔法をぶつけろって。そしたらなんとかなるって。


「ならない。なる人もいるにはいるが、ある程度の熟練者だ。例えば鏡とライトを想像してみろ。暗闇で自分に向けて真っ直ぐにライトを向けたらどうだ?」

「眩しい」


ごく普通のことだ。直線に光が反射するからストレートに自分に当たる。


「なら角度をちょっとでもずらせばどうなる?」

「えっと、眩しくなくなるわ。代わりに別の向きに反射して……あっ」


そういうことか。鏡に反射した光が、屈折するように木にあたった魔法も曲がったのか……。

真っ直ぐ当てれば魔法の衝撃は全て威力に変換されるため別の場所に反射することはないのだと、詳しく解説までしてくれた。

「アルファイド、あなたって剣士なのに魔法に詳しいのね。魔法が屈折するだなんて考えたこともなかったわ。もしかして魔法が使えたりして」


冗談だ。

剣士を目指す彼が魔法使いである訳がない。

もしそうであれば、剣士に魔法の知識が負けたことになってしまう。

だけど、彼は肯定をしない代わりに否定もしなかった。何事もなかったように振る舞い始めたのだから。


「さっきの説明を踏まえて、そこの木に魔法を使ってみろ」


オークを倒したのより大きめの木を指されて少し戸惑ってしまう。


「え、ええ。わかったわ。垂直に当てればいいのよね」


木に向かいあって集中する。

垂直で、垂直に、垂直よ……。


「【レベル3 ウィンドカッター】」


見えない風の魔力は私の手から飛び出し木に当たる。

そしてそれは貫通した。

前回は斧を打ちつけたようなガサついた切れ跡だった。だけど今回はどうだ。まるで紙をカッターで切ったような……。木が弱くなったよう。


「すごい魔法のカッターみたいだわ」

「当たり前だ。それにみたいじゃなくて魔法だ。呪文でもカッターって唱えてるしな」

「そ、そっか」


当たり前なのかしらないが、混乱している私にとっての当たり前ではない。


「本当に剣士なの?」

「さぁね。それよりも今はすることがある」


すること?なんだろうか。


「逃げることだ。走れ!」

「はいっ!?」


命令されたら走ってしまうのは本能的なものだから仕方ない。上官の命令は絶対だ。アルファイドは上官じゃないけどね!

今日、急ぐこと多すぎませんか。

それと、どうして走らなくてはならないのでしょうかでしょう。

オークと出会うわ、木が倒れてくるはついてない日だわ。

走る自分の影。

それを見ていたら伸びてきた。

いいえ、違うわ。

足を止めずに振り向くと大きな影が、三つの首と赤い鱗を持つ魔物がいた。


「三つ首ドラゴン……」



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