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学園生活にも慣れてきたある日の授業、久しぶりに屋外での授業となった。


夏が近づいてきて暑いにも関わらず、メル先生はなんだか元気そう。何よりだ。

そしてとびきりの笑顔で生徒達に、いや、私達のペアに爆弾を落とした。


「お久しぶりです皆さん。これまで授業や私の実技の時間に多くのことを学んできましたよね。もちろん頭に入っていますよね?頭に入っていなければ勉強する意味がありませんからね。そういうことで、それを含めての実技テストをやろうと思います」


ニコッ。悪魔の微笑みだ。

って……。

他のみんなは友達やペアと慌ててヒソヒソと会話したりしてざわついている。これはまごうことなき抜き打ちテストなるものだ。

学校に入学して一度もされたことなかったから、もうお伽話レベルにしかないと……。


「内容は簡単です。先生が立っている後ろに森があります。この森、実は学園の管轄外で魔物がほんのちょっぴりいます」 


なるほど。どうりでこの場所には結界がないわけね。

これまでも学園一部に結界のない敷地があるのは知っていた。綻びだと思っていたのだが、違ったようだ。実習のためにあえて魔物が出没する敷地らしい。

魔物か。この時代では、まだ見たことないわね。

かつては敵兵と同じくらいの数をやっつけてたなぁ……なんて。過去の栄光よそれは。

今は弱々の学園で最下位魔女だもの。

油断ダメ絶対、だ。


「その魔物をやっつけて貰います。成績の付け方も単純明快!!」


どこからともなく浮遊する黒板を取り出す。

黒板には成績の付け方の説明が記されている。


「魔物の特徴の一つで、死ぬ時に魔石を残すのだけれど、強いほど色が濃くなるのです。皆さんは魔石を私のところまで持ってきて下さい」


先生は酷い。

なんじゃそれー!!!って叫びたかったのに我慢したのを褒めてもらいたい。

身の危険を感じる課題とは?

こちとら弱々最下位魔女なのよ?

例えば魔法で対処しきれなくても剣を持っていないし、本来頼りにするはずのペアも同じく最下位。

最下位同士が何をやったところで高成績は望めないし、命の保証もあやふや。

最下位でなくとも学生の身分。ほらみんな青ざめてるじゃない。

しかも結界はない!!

だけど魔物の知識がみんなより多いのは有利かも。うんうん。


「色は基本青だとして、水色だと低評価、濃い青だと高評価になります」


例として、またしてもどこからともなく寒色の石を取り出し浮遊させる。

澄んだ湖のように限りなく薄いものから冬の青空のように深いものまで様々だ。


「いくつ取ってきてもらってもいいですよ。数が多いほど良い訓練になりますし、魔法なり剣なりの技術も上達するでしょうから。多く取ることは、間接的に他のペアの成績を下げることにも繋げられます」


ふふっ、と笑う先生の笑顔に黒いものを感じたような気がした。


「でも、だからと言って成績の為に身の丈に合わないものと戦ってはなりません。命を落とすことはあってはならないし、もちろん怪我をすれば減点しますからね。それだけは気をつけなさい。制限時間は太陽が天頂に昇るまでとします」


どうやら命を落とす可能性もあるらしい。

そしてまたも姿をくらますメル先生。

景色に溶けるようにいなくなるから、メルト先生なんてあだ名も付いている。

そして立ち尽くす私達。

高評価を狙わなければならないが、怪我をすれば減点。


確か一番弱い魔物はコボルトかしら?

この森にいるかは分からないが習った限りではコボルトのはず。そもそもこの国にコボルト以下の弱さの魔物はいない。いたとしてもレアだろうし、ひょっとすると今の私はそのコボルトよりも弱い。

ちなみにコボルトとは木の枝を持って襲ってくる(というか叩いてくる)小型の魔物。

魔石の色は透明に近い薄ーい水色。ほとんどガラスのよう。

それを狙うのが妥当でしょうね。

だけど魔物なんて何が出てくるかなんて未知数。


「リーン行くか。基本はコボルト、スライム狙いで」

「ええ、同じ考えよ。最弱な私たちが無理して強いものを狩るのは得策ではないわ。でも、避けてても強い魔物が出てきたら……」

「安全第一、とりあえず逃げる」

「そうね。分かったわ」


正直強敵が出てきても、現代のこの場所に出るものは対処できる。これは驕りではない。だが、まあ面倒事は避けたいので無力な学生として逃げるのが適切だろう。

ペアの彼は剣を腰に刺し、私はいつでも魔力を放てるように神経を研ぎ澄ませる。

そして、尻込みしてる他のどのペアよりも真っ先に守りに入るのだった。




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