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148位▶[日間]異世界転生/転移(恋愛)- 連載中
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そう誓っていたらいつの間にか中庭に着いてしまっていた。
集まった人たちは、やっぱりある程度グループ化している。だけど、それはさっきほど私をもやもやとさせない。
ペアがいるからか基本的に偶数でまとまってるなとか、ペアって同性同士の方が若干多いんだとか、割と人間の観察は楽しい。
「そういえばアルファイド、あなたは友達を作ろうとはしないの?休み時間、誰にも話しかけないで終わりそうだけど」
「俺から作ろうとはしない。ここに友達作りのためには来ていない。ただ、強くなりたいから」
「誰かを守りたいの?」
特別な意図はない。
自然に口をついて出ただけ。
「自分にとっての大切な人を。守りきれないのは知ってるけど、せめて手の届く範囲にいるなら守りたい。大切な人を守るだけで忙しいから、わざわざ時間を使って友達を作ろうとはしない」
「そっか」
聞いておきながら多くは返せない。人にはたくさんの思考があって生きているからそれに水をさしてはならない。
それなのに彼のことについて聞くのは愚問だろう。でも、聞いてみたかった。
それは彼のことが知りたいからかも、リンあらためリレインユールのファンだからかもしれない。
なんとなく辺りを見渡すと、今日の授業で使うものなのか的が等間隔に列をなして並んでいる。
弱くだけど魔法がかかっている。
強化系の魔法だわ。しかも綻びのない綺麗な。
この数の対象に同時に魔法をかけるのは、割と難しい。しかも均等に強化されていることから、術をかけた人はそれなりの魔法使い。
実は魔法は下手でもそういうのは見極めることができてしまったりする。なにせ戦場では魔力や相手の視線から次の手を予想するのが生き残る上で必要だった。
今世ではあまり役に立たないけど、身体に染み付いた癖は生まれ変わって身体が変わっても残るようだ。
ちなみに校舎やグラウンドにはかなり強力な魔法がかけられてる。これはもう結界だな。
ちょっとやそっとの魔法がぶつかっても壊れないだろうし、竜巻が起こっても無傷でいられるだろう。
「はーい、集合して。今から実技の授業を始めますよ」
優しそうな女性の先生。
緩やかなスカートの裾が風にそよいで、髪はふんわり肩にかかるくらい。
会話に夢中になっていた人もそうでない人も 皆、掛け声で集まってくる。
ざっと魔法科クラスと剣科クラスで八十人。
先生を取り囲むような半円を描く形状に並んだ。
先生は笑って指示を続ける。
「こんにちは。私はメル、あなた達の魔法実技を受け持つことになりました。この授業では私の出す課題にペア、あるいは個人で取り組んでもらうことになります。辛い課題も中にはありますが……でも問題ないわ。眠くならないし、座学よりはみんなにとって楽しいはずだから」
話しながら一枚ずつ紙を配る。
レポート用紙です、授業後に提出を。と説明をして。
「さて、話はもういいわ。これは実技の時間なのだもの。おおいに魔法なり剣なりを使って身体で覚える授業よ。成績のなかでも配点が大きいから頑張って」
この授業は野外で行う。より強い魔物の魔石を奪うという簡単なルールがあるだけ。魔石とは魔物を倒したとき出る戦利品で、魔物が強いほど大きく、色が濃くなるなる性質がある。しかし、大怪我をしたりペアと帰ってこなかった場合は減点対象となる。
これはかなり結果が実技に左右されるだろう。
「初めての授業なのでそんなに難しい課題ではありません。そこに的があるでしょう」
みんな一様に並んだ窓を眺める。
ええ、ありますとも。弱くだけど強化された的が。
「これを壊していただきます」
強化魔法を見抜けないようで、ポカーンとしている者が多い。
普通の人の目には耐久性の低いもろい木の的としか映らないだろうし。
なんだそんなことかと口に出す、なんて分かりやすい反応のもいる。
「ある一定量のダメージを受けたら壊れるようにしておきました。個人でかかる時間はバラバラだろうけど頑張って」
と残してメル先生はどこかに去って行く。さしずめ教員室かそのあたりに。
レポートにはかかった時間を書く欄があった。だからだろう。先生が消えてすぐに的に向き合う人だらけ。
私もまたそう。
ペアのアルファイドの横で火魔法の詠唱をする。
だけど……。
「嘘」
弱い、と思っていた思い込んでいた魔法は揺らぎすらしなかった。