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友達作りをすると息巻いて教室に来たけれど、現実は酷だ。

こんなに人に話しかけるのが難しいなんて……。


私はどうやらコミュニケーション能力に欠けるところがあるみたいで上手く話ができない。なにしろ家族以外の人との関わりがほとんどなかったものだから、初対面の人との会話がどんなものかすら分からないのだ。

もちろん勇気を出して私から突進してみたけど、どうにも続かない。声をかけてそこからどうすればいいのか。

いや、相手が何か返してくるのを待つべきか。

挙動不審な私を見て引かれてしまう。

迷ってたらその子は別の子に話しかけられて、私と話してる時とは変わって楽しそうに話しだして……。

次の子を探そうと右往左往するもなかなか一人の子も少なくなっていく。これでは周りに怪しい人間に思われているだろう。

そんな奇行をしている間にも周りは談笑する人々だらけになる。

つまりグループの原型となるものはできつつある。

これはマズイ。かなり。

最悪、一人になってしまうではないか。

それだけは絶対嫌!!

なのに当たって砕けてしまった。何度も砕けるのは辛い。人間、なんども失敗するとなかなか応えるものらしい。


なんで上手く出来ないのかしら。

ペアとなった人、アルファイドはきっと向こうから話しかけてきたから話せたのだろう。

少しだけイラつく奴だけど……。

仕方なくアルファイドの隣、もとい私の席に座る。

座席表を渡されたとき、いくらペアは側にと校則があれど席まで拘らなくても、と胸の中で不満を漏らしてしまった。

座ると同時に溜息を漏らすと鼻で笑われてしまった。


「何よ、何か文句でもあるの?これでも頑張って声をかけようとしたのよ。笑わなくてもいいじゃない」

「頑張ったって……普通は『本日はお日柄もよく』なんて時候の挨拶は、大人はともかく俺らの年代は使わないだろ」

「えっ……」


そうなのか!?そうなの??

だってならなんて始めればいいの?

とりあえず周りの会話に耳を傾けてみることにする。


『こんにちは、その髪型可愛いねどうやってるの?』

『初めまして。地元はどこ?あ、良いところだよね自然が豊かな場所だ〜』

『お昼誰と食べるか決めた?なら一緒に食べよ』などなど。


なるほどね。

皆さん疑問文から入っていらっしゃる。挨拶も単純なものだけだし、むしろない人も多いわね。そして親しみやすい表情をしている。


「もしかして私、古くさい人間とか年寄りくさいとか思われたの……」

「もしかしなくとも、な。時候の挨拶なんて手紙の時くらいしか使わない」

「手紙」

「そうだ。あとは王城で働いてる官吏とか堅苦しいのとか。どっちにしろ若者のイメージは──」

「堅苦しい……」


静かに手を頭の後ろに回して布を引っ張ってくる。

ローブのフードだ。

黒だから目元を隠してしまえば暗闇で、まるで自分だけの世界のようで落ち着く。

誰の視線も見えないし、私のことも見られない。お兄様ありがとう。これで誰の視線も感じずにいられるわ。

古くさいのね。

恥ずかしい。俗にいうジェネレーションギャップだ。数百年を甘く見ていたのが愚かだったわ。もうすぐ授業だけどこのままでいいかしら。

だけど戸惑ったような声がかけられる。


「あーその、だな。まあ、礼儀正しく見える人もいるんじゃないかな。えー……いると思、いやいる。挨拶は大事だ」

「…………そう、かしら」


そっと目をローブから出してみる。

明らかに慰めようとする言葉だった。嫌な奴なのに変わりはないけど、完全な嫌な奴じゃないのかな。

オロオロしてる……。まるでさっきまでの私のようね。


「挨拶もせず馴れ馴れしくすることは相手に不快感を与えることもある。それなら堅い方が幾らもましだ」

「……」

「授業始まるぞ。人間関係を気にする前にまず勉学に励め。そうすれば自然と友達もできる……かもしれない」


壁に掛けられた時計はそんな時間を指していた。いつの間にか休みが終わる。

用意したのは《魔法実技》と題された教科書。初授業からいきなり外で魔法を使う練習をするらしい。

アルファイドが出したのは《剣技実技》。

流石にこれは別々で授業をするべきだろう。だけどそうせず合同で行う。

絶対に先生は教えにくいだろうに。

ここまでペア制に拘る理由はいかに?

もしやアルキオネ様とリンの戦いが剣と魔法だったから……なんて。あれはもう数百年も前の話。それだけ時が経って影響する訳ない。アルキオネ様を思考の中心に置きすぎた。


にしても、勉学に励めか。

今は余計なことを考えずに学問に取り組むべきだ。簡単なことなのに忘れていた。

青春にうつつをぬかして本来の目的を失うなんて……。

そうだ。友達は『できたらいい』くらいで、一番は強くなりたい想い。

そして「友達ができるかもしれない」と言われて、曖昧な言葉なのに嬉しかった。慰められた。


「ありがとう」

「別に。あと授業までにその野暮ったいフード脱いどけ。暗い」


だんだん分かってきた。

言葉はきついけど悪い人ではないことを。良い人かはまだ謎だけど。

私は素直にフードを取って銀の髪を出した。

ちょっと髪型が崩れたけど、どうでもいい。

授業場所は中庭だっけ。

アルファイドが立って向かうところだったので静かに後ろをついて行った。

その背は頼もしい。


精神年齢は私の方が上なはずなのに。子供になった気分。子供だけど……。何かが微妙に悔しい。身長が私より頭一つ分高いからだ。そう結論づけておこう。

男子ってすごい。私だってよく牛乳飲んでるのに。今度からはチーズも一緒に食べることにしよう。









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