第9話:学校の文化祭準備とネイルブース企画
「文化祭でネイルブースを出すって、どうやろ?」
放課後の教室で、瑞希がふと提案した。
「ネイル?文化祭で?」
颯太は驚きながらも、そのアイデアを頭の中で思い描いてみる。文化祭といえば、模擬店やステージ発表が定番だが、ネイルブースとなると少し異色かもしれない。
「めっちゃおもろいやん!けど……お客さん来るんかな?」
菜奈が興味津々に顔を輝かせる一方、颯太は少し不安を覚えた。
「大丈夫やって!最近はネイルに興味ある男子もおるし、女子には絶対ウケるやろ?」
瑞希は自信満々に言うが、颯太にはまだピンとこない。ネイルに興味がある男子も増えているとは言え、文化祭でどれだけの人が来てくれるのか……。
(そもそも、文化祭でネイルってアリなんか?俺らだけ浮いたりせえへんやろか……)
瑞希の言葉に反論するわけではないが、漠然とした不安が頭をよぎる。
「そんなん言うても、みんな来てくれるんかな……?」
ぼんやりとそう呟きながら、颯太は少し考え込んだ。
「やるとしたら、何をするん?」
「学校では本格的なネイル施術はできへんから、ネイルチップやネイルシールを使うことにしようと思ってる」
瑞希が説明すると、菜奈も頷いた。「それなら手軽にできるし、デザインもたくさん作れるしな!」
「それなら、爪磨きとか甘皮ケアも入れたらええんちゃう?」
「ええやん!あとはデザインを簡単にできるシールとか、ワンポイントアートもあったら可愛いかも!」
菜奈の意見も加わり、少しずつ具体的なイメージが固まっていく。
「でも、やるからにはちゃんと練習せなな?前の地域イベントみたいに、お客さんをスムーズに回せるように受付を工夫するとか、準備も大事やな」
「せやな、せっかくやるなら成功させたいしな!」
颯太は少し考え込んだ。「でも、2級の勉強もあるし、文化祭にどこまで時間を割けるか……」
そんな様子を見て、瑞希が肩を叩く。「そのへんはみんなで協力するんやし、心配しすぎやって!」
菜奈も「颯太先輩の技術も見てもらういい機会ですよ!」と励ます。
「俺の技術か……」
颯太はふと自分の手元を見つめた。まだまだ未熟な部分もあるが、こうして人に見てもらえる場があるのは、確かに貴重なのかもしれない。少しずつ、不安よりもやってみたい気持ちが強くなってきた。
こうして、颯太たちは文化祭に向けてネイルブースの準備を本格的に始めることになった。
放課後の教室で、ネイルチップのデザイン案を出し合い、実際に試作を繰り返す。
瑞希が接客のシミュレーションを提案し、受付や会計の流れを菜奈がまとめた。菜奈は文化祭当日、自分のクラスの展示の責任者として忙しくなるにもかかわらず、できる範囲で協力してくれた。
颯太は筆を握り、何度もチップにデザインを描きながら、「もっと細かいラインをきれいに引くにはどうしたらええんやろ……」と独り言を漏らす。瑞希は受付での想定問答を菜奈と練習しながら、「お客さんが並んでもスムーズに案内できるようにせなな!」と真剣な表情で確認していた。放課後の教室には、ネイルチップを磨く音や、時折笑い声が響いていた。
次回、第10話『文化祭本番!予想外のトラブル発生』
文化祭当日、予想以上の来場者でネイルブースは大忙し!
「時間が足りへん…!」と焦る颯太