表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネイル男子、プロを目指す!  作者: クロクマせんぱい
8/24

第8話:フットケアとの出会いと新たな視点

「爪も肌と一緒でケアが大事やで?」


瑞希の勧めで訪れた皮膚科で、颯太は高峰柚葉たかみねゆずは先生と出会った。


「試験の練習で爪が傷んできたんやけど……」


慣れない病院の空気に、少し緊張しながら言葉を選ぶ。


診察室でそう話すと、高峰先生は軽く頷き、手際よく颯太の指を観察した。


「なるほど、甘皮が荒れとるな。無理に押し上げすぎたりしてへんか?」


「えっと……力加減とか、まだよう分かってへんくて……」


「せやな、繰り返し負担をかけると、爪の表面が削れたり、割れやすくなったりするんよ。無理せずケアもしながら練習せなあかんで」


そう言いながら、高峰先生は手際よく保湿クリームを馴染ませ、颯太の指先をそっと包み込むようにマッサージを始めた。


(思ったよりも柔らかい……)


指先に伝わる優しい感触と、かすかに香るハーブの匂いに、颯太は無意識に喉を鳴らした。手の温もりがじんわりと伝わり、どこか落ち着くはずなのに、逆に緊張が増していく。


(何やろ……この感じ)


視線を落としながらも、心臓の鼓動が少しずつ速くなるのを感じる。背中がぞわっとするような感覚に、無理やり意識を逸らそうとしたが、指先の感触がやけに残る。


「ネイルって、医療とも関わるんや……」


颯太は驚いた。これまでネイルは美容の一部だと思っていたが、健康とも密接に関わっていることを初めて知る。


高峰先生は続ける。


「例えば、爪の色や状態を見るだけで、貧血や糖尿病の兆候が分かることもあるんよ。巻き爪や変形爪は、痛みの原因になるだけやなく、歩行バランスを崩して転倒のリスクを高めることもある。ネイルケアは、単に見た目を整えるだけやなくて、健康管理の一環としても大事なんやで」


「もし興味があるなら、フットケアの現場を見学してみる?」


高峰先生の提案に、颯太は少し迷ったが、瑞希に背中を押される形で見学に行くことになった。


---


フットケア専門のクリニックを訪れると、そこには巻き爪や変形爪に悩む患者たちがいた。


「フットケアって、単に爪を整えるだけやないんやな……」


目の前で、ネイリストが高齢の患者の巻き爪に矯正プレートを装着している。その手際の良さに、颯太は思わず見入った。


「巻き爪の矯正プレートって、こんな感じで付けるんや……」


「せやで。これで爪のカーブを少しずつ直していくんや。歩くときの痛みも軽減されるで」


施術を受けた高齢者が、ゆっくりと足を床につけて立ち上がった。少し足踏みをして、驚いたように目を見開く。


「ほんまや、歩くのが楽になったわ……!さっきまで痛かったのに」


顔にぱっと明るい笑みが広がり、「ありがとうなあ」と深々と頭を下げる。その様子を見て、颯太の中で何かが変わり始める。


「ネイルって、美容だけやなくて、生活の質も変えられるんや……」


瑞希が少し頬杖をつきながら、興味深そうに颯太の横顔を見てニヤッと笑った。


「福祉ネイルとか、おもろいと思わん?」


「……確かに」


颯太はゆっくりと頷いた。


今まで考えたことのなかったネイルの可能性に、少しずつ心が動かされていくのを感じながら――。




次回、第9話『学校の文化祭準備とネイルブース企画』


「文化祭でネイルブースを出すって、どうやろ?」


颯太たちは学校の文化祭でネイルブースを企画することに。初めての大舞台に向けて、準備に奔走する日々が始まる。果たして、成功への道筋は――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ