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ネイル男子、プロを目指す!  作者: クロクマせんぱい
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第5話:地域イベントでの初挑戦

「え、ネイル体験ブース?俺がやるん?」


瑞希が軽く頷く。

「せやで。せっかく練習しとるんやし、人の爪に塗る経験も積んどこ」


話を聞けば、商店街のイベントで地域の高校生が体験ブースを出すことになり、その一環で瑞希がネイルブースを提案したらしい。

菜奈も「面白そうやし、手伝うわ」と乗り気だった。


「いや、俺まだそんなうまないし……」


「うまい下手の問題ちゃうねん。人の爪に触れる経験を積むのが大事なんやろ?」


そう言われると、颯太はぐっと言葉に詰まった。


「……ほな、やってみるか」


こうして、颯太はネイル体験ブースを任されることになった。


商店街のイベント当日、颯太は緊張で指先を何度もこすり合わせた。


「大丈夫やって。気楽にやろ」


瑞希が肩をポンと叩く。隣では菜奈が受付の準備をしていた。


「ほんまに人来るんかな……?」


颯太が不安げに呟いた瞬間——


「男の子がネイルしてくれるん?」


興味津々な様子のおばちゃんたちが、次々とブースに集まり始めた。


「ええやん、やってもらお!」


「最近、爪もなんか荒れてきてなぁ」


予想以上の反応に、颯太は思わず瑞希を見る。彼女は「ほらな?」と得意げな顔をしている。


「ほんなら、おひとりずつ順番にやらせてもらいますね」


菜奈が慣れた手つきで受付を仕切り、颯太は最初の客の手を取った。


「ええっと……どんなデザインがいいですか?」


「任せるわ!なんか可愛いやつで!」


(ざっくりすぎるやろ!)


軽く声をかけながら、丁寧に処理を進める。おばちゃんの手を取っても、不思議と緊張はなかった。

瑞希や菜奈の手を借りたときは妙に意識してしまったのに。


「ふーん、おばちゃんの手は緊張せえへんのや?ほな、瑞希様の手やったらどうなん?」


瑞希がニヤリと笑いながら突っついてくる。「菜奈の手のときは、妙にぎこちなかったのにな」


「そ、そんなんちゃうし!」


思わず声が裏返り、慌てて咳払いする。顔が熱くなるのを感じながら視線を泳がせるが、瑞希のニヤニヤした顔が目に入って余計に焦る。


「ほらほら、図星やろ?」


菜奈がクスクス笑いながら「ちょっとわかる」と小声でつぶやいた。


「ちょっと削りますね」


ファイルで形を整え、表面を滑らかにする。爪の油分を落としてから、ピンクのグラデーションに、小さな白い花を添えたデザインを施すことにした。手元が震えないよう深呼吸し、筆を慎重に動かす。


「……おお、キレイやん!」


施術を終えたおばちゃんが、爪をまじまじと見つめる。


「こんな可愛くなるんやなぁ。ありがと!」


満面の笑顔に、颯太の胸がじんわりと温かくなる。


(ネイルって、こういう喜ばせ方もできるんやな……)


その後も、次々と来るお客さんに対応するうち、最初の緊張はいつの間にか薄れていった。


「おっ、ええ感じやん!」


瑞希が腕を組んで満足そうに頷く。


「思ったより楽しいかも……!」


瑞希はニヤリと笑った。「せやろ?こうやって直接お客さんの反応見れるのが、ネイルの醍醐味やねん。『うわぁ!すごい!』とか、『こんなん初めてやわ!』とか言われると、やってるこっちも嬉しなるやろ?」


「颯太先輩、めっちゃ真剣な顔してたで!」


菜奈がクスクス笑いながら言う。「最初はガチガチやったのに、途中からノリノリやったやん」


「そ、そんなんちゃうって……!」


顔が熱くなるのを感じながら、颯太は視線をそらした。でも、内心では確かに充実感を覚えていた。


初めての実践を終えた颯太は、確かな手応えを感じていた。


イベントが終わる頃、商店街の人たちが「高校生がこんな活動するんは、ええことやな」と話しているのが聞こえた。颯太は、自分の技術が誰かを喜ばせる力になることを改めて実感した。



――次回、『3級試験への挑戦と成長』


「3級試験って、まずはネイルケアからやるんやんな?」

試験の具体的な内容を知り、颯太は新たな壁に直面する――。

「ええか、ネイルはな、奥が深いんやで?」


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