第4話:菜奈との出会いと試験準備
昼休み、颯太は校舎の隅でネイルチップのデザインを考えていた。
「何してんの?」
不意にかけられた声に振り向くと、そこには1年生の菜奈が立っていた。黒髪にカジュアルなパーカー姿。クラスの9割が男子という環境で育ったせいか、どこかサバサバした雰囲気を持っている。
「ん?いや、ちょっとデザインの試作を……」
「ネイル?」
菜奈は興味深そうに覗き込む。
「自分で描いたん?」
「まあな」
菜奈は少し考え込むようにして、ちらっと颯太の手元を見た。
「モデル、いるんちゃうん?」
「え?」
「練習するんやろ?誰かの手でやらなあかんやん」
颯太は思わず目を見開いた。確かにネイルの練習にはモデルが必要や。でも、それを自分から言い出す子がおるとは思わんかった。菜奈をじっと見つめると、彼女は当たり前みたいな顔をしていた。
「モデル?ええけど、条件つけてもええ?」
「条件?」
「私の好きなデザインにしてほしい」
「どんなやつ?」
菜奈はスマホを取り出し、ライブイベントのポスターを見せた。ストリート系の落書き風デザインが特徴的なビジュアルだった。
「こういうの、カッコええと思うねん」
「なるほどな……おもろいやん」
颯太は腕を組んで考える。そういえば、先週の放課後、瑞希に言われたことを思い出した。
『やるんやったら、資格取っといたほうがええで?3級とかやったら独学でもいけるし』
その時は「まだ早いやろ」と笑って流したけど、今ならやってみてもええかもしれん。試験の練習と並行して、菜奈のリクエストに応えられるか。難易度は高そうだが、挑戦してみる価値はありそうや。
「よし、やってみるわ」
菜奈は満足そうに頷いた。
颯太は深く息を吐いた。
「やるって決めたなら、ちゃんとやらなな……!」
菜奈のリクエストに応えつつ、試験に向けて本気で取り組む。そう決めた瞬間、少しだけワクワクする気持ちが湧いてきた。
次回、『地域イベントでの初挑戦』
「男の子がネイルしてくれるん?」
商店街のイベントで、颯太たちはネイル体験ブースを出すことに。
初めての実践の場、颯太の技術は通用するのか?