第17話:3Dネイルチップの試作と実験
颯太と瑞希は、福祉ネイルの新たな可能性を探るため、3Dプリンタを活用した義爪の試作に挑戦することにした。
「まずは足の爪をスキャンして、ぴったり合うチップを設計しよう」
瑞希がスキャナーを準備し、颯太の足の爪を測定する。スキャナーが光を照射しながら、爪のカーブや厚みを細かくデータ化していく。
「すげぇ……これ、ほんまに細かいとこまで測れるんやな」
「せやろ?これなら、市販のネイルチップやと合わへん人にも、ピッタリのものが作れるかもしれんで」
データを基に、瑞希が設計ソフトで微調整を行い、最初の試作品を3Dプリンタで出力した。しばらくして、小さな半透明のネイルチップが完成する。
「早速つけてみるで……」
颯太は爪にそっとチップを乗せるが——
「……ちょっとサイズが合わんな。浮いてもうてる」
「やっぱり一発でピッタリとはいかんか。ちょっと根元のカーブと厚みを調整してみるわ」
瑞希はデータを再調整し、再びプリントを開始。こうして何度も試行錯誤を繰り返し、ようやく爪にぴったりフィットするチップが完成した。
「これなら、普通のネイルチップよりも装着感がええな」
「でも、やっぱりデザインや仕上げはネイリストの技術が重要やな」
瑞希の言葉に、颯太は大きく頷いた。
「せやな。チップの形は3Dプリンタで作れるけど、最終的な仕上げは人の手や」
試作品の完成を受けて、二人はさらに専門的な意見を聞くため、高峰先生のクリニックを訪れることにした。
「ほう、なかなかおもろいもん作っとるやん」
高峰先生は試作品を手に取り、しげしげと観察する。
「これ、本格的にやればすごい技術になるで。巻き爪や変形爪のケアにも応用できるし、例えば足の爪を削らずに形を整えたり、関節の変形で通常のネイルが難しい人にも使える可能性があるな」
「ほんまですか!?」
「せやけど、医療用として使うには、素材の安全性や耐久性も考えなあかんな」
高峰先生の言葉に、颯太の目が輝く。
「ネイルって、こんな形で人の役に立てるんやな……」
「その通りや。もし本気でやるなら、どんな素材が適しているのか、もっと研究してみるとええで」
その言葉を受け、颯太は改めて福祉ネイリストの仕事について深く調べることを決意する。
次回、『藤崎紗良、ネイルを受ける決意をする』。
紗良が初めて、自分の手にネイルを施すことを受け入れる——。