第11話:2級試験に向けた最終調整と接客練習
文化祭の熱気が冷めやらぬまま、颯太たちは次なる目標——2級試験に向けた本格的な準備を始めていた。
「本番を想定して、接客も練習しよか」
瑞希がそう提案すると、菜奈が笑顔で手を挙げた。「じゃあ、私がお客さん役やります!」
彼女は椅子を引きながら、少しおどけた表情で「ちゃんと優しくしてや?」と冗談めかして言う。
瑞希も「ほな、颯太先生の腕前を見せてもらおか」と茶化しながらニヤリと笑う。
「お願いします……」
颯太は少し緊張しながら、テーブルに向かい合って座る。
実際の試験ではモデルの手を借りて施術しながら、適切な接客を行う必要がある。
「それでは、お客様。どのデザインにいたしましょうか?」
ぎこちない敬語を口にした瞬間、瑞希が吹き出した。
「なんかロボットみたいやな」
「えっ……そ、そうか?」
「めっちゃ固いで!もっとリラックスして話さな、お客さんも緊張するやん」
菜奈もクスクス笑いながら、「接客って大事やけど、颯太くんがやるとなんかおもろいな」と肩をすくめる。
「いや、真剣にやってんねんけど……」
「ほな、もう一回や!」
瑞希が仕切り直し、何度も接客練習を繰り返すことになった。
「お、お客様。こちらのデザインでよろしいでしょうか……?」
「またカタい!」
瑞希に肩をポンと叩かれ、ビクッと肩をすくめてしまう颯太。頬が熱くなり、手のひらにじんわりと汗が滲む。
(敬語って、こんなに難しいんか……!?それに、なんか急に距離が近ない!?)
余計に動揺して、頭が真っ白になりそうだった。
何度もやり直しながら、少しずつ自然な対応を身につけていく。
そして、実技の模擬試験も繰り返し行い、最終調整に入る。
颯太は施術の流れを確認しながら、道具を並べ、モデル役の菜奈の手を取った。そのまま作業に入ろうとした瞬間——。
「ちょ、颯太!施術前の手指消毒忘れてるやん!」
瑞希の指摘に、颯太はハッとして手を止めた。
「やばっ……清潔操作減点や……!」
「本番でこれやったら落ちるで?」
「気をつける……!」
細かいミスを一つずつ修正しながら、試験への準備を進めていった。
「試験まであと少しやな……」
颯太は深呼吸し、気を引き締めた。
「やるしかない!」
次回、第12話『2級試験本番と新たな目標』
ついに迎えた2級試験当日。
緊張感漂う試験会場で、颯太はこれまでの練習の成果を発揮できるのか?
「絶対合格する……!」